こんなもんだろ映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』感想文

《推定睡眠時間:20分》

少し前に東京オリンピック2020の開会式案として電通だかの人が出したクッソ寒いやつ(渡辺直美の「オリンピッグ」云々)が週刊誌にリークされてえらい叩かれたことがありましたけど、俺はそれに対して「言うて本気でそんなのやるつもりないだろw」とか思ってたんですが、ことによっては本気でやったかもしれないし、なおかつ、良く言えばおおらかで悪く言えば付和雷同型で日和見主義かつ反知性主義のバカである日本の大衆にはそれぐらいの完全内輪ノリでレベルの低すぎるお笑い開会式が結構ウケたかもしれないなとかこの映画を見て思ったりしました。

頭脳明晰アホの子女子が進路面談で「総理大臣!」と書いて読んだ教師は呆れ顔、頭脳明晰アホの子女子に「総理?」と問いかけると頭脳明晰アホの子女子は額縁に入った「令和」を掲げ、隣で話を聞いていた父親らしき人物が顔を上げるとなんと菅義偉にそっくり! …とか。天才貧乏生徒会長の父親・高嶋政宏がパンツ一丁でカメラを担いで現れ「ナイスですね~」…とか。カラオケ店で間違えて別の個室に入るとそこになぜか林家ペーパーがいて…とか。男子と女子の制服をスワップして体育祭の応援をやる応援団…とか。『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』、そんなクッソ寒いギャグの連続です。

前作はここまで寒くはなかったはずだ…こんなとんねるず世代っぽいつまんねぇテレビ屋の発想で埋め尽くされてはいなかったはずである…まだキラキラ映画の範疇にあって胸キュンを感じながら観ることができたように思うが、こっちはもう(俺にとって)最悪な時の英勉映画とか福田雄一映画のテイストで多少時機を逸した感もあるがその笑えないギャグの数々にはいちいちうっせぇわと言いたくなってしまう。

つーか結構前作でやったネタを使い回してるからな。そりゃ前作で佐藤二朗が出てきた時にはそこで佐藤二朗かいっていう意外性がありましたし俺も笑いましたよ。でもそれと同じキャラをただ単に再登板させてもまたやってるのかぁとしかならないだろ。部屋の中から平野紫耀くんプラス女子のなにやら猥褻な声が聞こえてきてあの二人こんなところで…! と思いきや別のことをやっていたっていう勘違いネタも前作では物語上の伏線として機能していたこともあり面白かったですけどこっちでそれをまたお約束的にやられても天丼効果もなにもないだろ、別にそれを毎回やるシリーズってわけじゃないんだから、っていうかシリーズになってないんだからそもそも、1と2しかないわけだから。

要するにシナリオが甘いんだよな今回は。だって恋愛頭脳戦とか言いますけど頭脳戦(と呼べるかどうかはともかくとして…)やってねぇんだもん。それを前作でかなりやっちゃってある程度そこは決着ついちゃってるから今回生徒会メンバーの陰キャのエピソードに結構尺を割いたりするわけですけどそんなのタイトル詐欺だろ平野紫耀と 橋本環奈の頭脳戦をやりなさいよ頭脳戦を。繰り返すがそれを頭脳戦と呼べるかどうかはともかくとして!

なんかね、生徒会メンバー個々のエピソードにスポットを当てつつ前作のオモシロポイントをもっかい持ってきて間を埋める感じの作りなんですけど、どうせ客は前作をもう観てるからトリッキーな頭脳戦はいいよね、それよか完結編を謳うなら人気キャラクターのドラマとか関係性とかを客は観たがるだろうからそっちやりましょうよっていう、そういう安易な発想を感じる。正しいんでしょうねぇ商売として! 正しいだけに腹が立つよ。くっそー、前作はキラキラ映画の新機軸で面白かったのになー! でも天才である俺以外の愚昧な日本の大衆どもは映画に新機軸なんか求めないからなー! そりゃあ広告屋も渡辺直美のオリンピッグを提案しますよ。どうせ大衆は新しいものとかセンスあるものなんか求めないってわかっとるんだよ奴らは。絶えろ。

とはいえ平野紫耀くんの天才バカっぷりは相変わらずハマっていて面白いし橋本環奈も相変わらず超可愛いので悔しい。しかし、しかしそれならやはりこの二人の頭脳戦が俺は観たかったのだが…なんかタイトルロールなのに今回は橋本環奈の陰もちょっと薄かったしな、前作はガシガシと能動的に平野紫耀くんを追い詰めていくのが面白かったのに今回は普通に告白されるのを待つだけの人みたいになっちゃって。その代わりキラキラ映画的には『ライアー×ライアー』での熱血歴史部部長の怪演も記憶に新しい板橋駿谷がこちらでも応援部の部長として異常な存在感を放っており…いやそれは代わりじゃねぇな! 面白いけど橋本環奈の代わりではねぇ!

えーとあと佐野勇斗くんですか? あの陰キャの人。これもねぇ、どうなんですかねぇ、原作がそうなんだろうけどワケあってリア充っぽい人たちを敵視する佐野勇斗を案じた平野紫耀がこいつを板橋駿谷率いる応援部に放り込んだらアッサリと過去のワケを乗り越え仲間の温かさと青春の輝きを知る…みたいな、なんだよその人間を主体性のない昆虫扱いするテレビ屋的発想はよー、そういうのが嫌なんだよそんなの「オリンピックが始まれば国民は盛り上がる」っていう政府の偉い方々の現実からズレまくった希望的観測と同じようなもんじゃないかさー、人間をなんだと思っとるのかねー、最初は否定的でもいざオリンピックが始まったらわーって盛り上がって別に好きなわけでもないけど少しでもセックスできそうな女もしくは男が目の前にいたらわーってくっついてみんながわーって盛り上がってたら自分の考えとか個性なんか捨てて一緒にわーって盛り上がるとでも思っとるのかねー、うーん、正しい! 超残念ながらたぶんそれはめっちゃ平均的な日本国民! クソが!

いや、僕はべつにオリンピックは反対ではありませんしセックスはしたい時にするのがいちばんだと思っておりますしお祭り騒ぎはいつだって楽しいものですし、それはいいのですが、それはいいのですが、そうではなくて、しょせんお前らそんなもんだろ的な安易な作りが映画としてどうかと思うという話なんだよ。もっとキャラクターの掘り下げだってできるだろやろうと思えば。こんな映画にキャラクターの掘り下げを求めてもしょうがないといえばしょうがないが、主人公二人の恋愛頭脳戦をお話の主軸にした前作は漫画的な形ではあっても頭脳戦を通してキャラクターの掘り下げをやってたわけですからね。

それが今回ないわけだからどうなのよという話。お話の軸もゆるければ各キャラクターの扱いも雑。でもこれで客はみんな喜ぶんだろうからいいんじゃないの。完結してよかったですねはいさようなら!

【ママー!これ買ってー!】


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一作目は面白いんですよ一作目は。

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