映画非感想『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

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はいはいわかってますわかってます、わかってますよ。俺はそんなにノレないけどみんなは超大好きなやつでしょ『ブックスマート』。知っているんだこっちは。別に嫌いじゃないですよ俺だって。嫌いじゃないけど、嫌いじゃないけど、嫌いじゃ無いけど…生理的に無理なわけでもないけれど! 超ハマる人との温度差に切なくなる。そう切なくなる映画なんだ! 俺はね!

どこが切ないって切ないところがまったくないところだよな。お話的には『スーパーバッド 童貞ウォーズ』みたいなやつで、まぁ主演ふたりの片方がビーニー・フェルドスタインっていう、この人はなんでも『スーパーバッド』に出てたジョナ・ヒルの妹だそうで…似てますよね。最初ジョナ・ヒルの妹って聞いて逆に冗談でそう言われてるんだろうと思っちゃった、ファミリーネーム被ってないから。いやまぁそれはいいんだ、それはいい。

で『スーパーバッド』は三人の非モテ系男子高校生がなんとかして高校パーティに潜り込んでノリで童貞喪失しちゃおうぜみたいなお話じゃないですか。そのために必要なのはなんだ! 酒だ! つって酒を入手するために奔走するっていう。最近やった『グッドボーイズ』も探すモノこそ酒じゃないですけど(酒も飲んどったけどな)物語の基本構造はだいたい同じで小学生版『スーパーバッド』の趣だったのでなんか流行ってんかもしんないすけど…それもいいんだ。それもいい。

とにかく! ジョナ・ヒルの妹も出てますし! 『ブックスマート』は女子高生版『スーパーバッド』という感じで、この仲良しガリ勉女子高生二人組も失った青春を卒業間際になって一気に取り戻すべく卒業パーティ潜入を目論んで夜のLAをあっち行ったりこっち行ったりするわけです。でその一夜のバカバカ大冒険の中で今まで知らなかった同級生の意外な一面を見たり出会いがあったりとかする。そういうやつ。

でも『スーパーバッド』と大きく違うところもあるんです。別の映画だから違って当たり前だよね! いやそれは分かってるんだけどさ、俺の中でその違いがでかかったいうところがあって…めちゃくちゃ前向き。明るい。自己肯定と他者の尊重の塊。そこなんだよな。そこがでかいんだよ。別にこれ『スーパーバッド』じゃないんだから好きなことやりゃいいんですけど俺の『スーパーバッド』好きポイントは表面的なバカさの下に隠れた暗さだったからね。

『スーパーバッド』だけじゃないんですよ。アメリカの学園コメディってどんなにバカやっててもやっぱ暗いものを抱えてたと思うんですよ本質的に。疎外感とか、孤独感とか、暴力性とか、劣情とか、スクールカーストとかイジメとか…学校はそういうものの温床だっていう感覚は根強くあったと思うんです。

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でそういうのが全部ないのが『ブックスマート』。主人公の二人は周りを見下すガリ勉設定なので、とくにルース・ベイダー・ギンズバーグに憧れて法律家を目指しているビーニー・フェルドスタインは俺はお前らロクに勉強しねぇバカどもと違ってイェール大学行くんだぜイエーって最初の方はなってるんですが、実は遊んでばかりのバカどもと見下していた連中もみんなインテリ大学への進学が決まっていたことを知って自己像にヒビ入る。

ここで! ここで悩んだり自己嫌悪に陥ったりしないのが『ブックスマート』なんだよねぇ。だってこっちはアップアップしながらとにかく必死に超勉強してやっとイェール大学入れたのに他の連中も…ってことはビーニー・フェルドスタイン別に特段頭脳明晰じゃなかったしむしろ勉強オンリー生活でやっと追いつけたくらい出来の頭脳だったってことじゃないですか。アイデンティティの崩壊ですよ俺だったら。アメリカン学園コメディに出てくる男子生徒だってだいたいそうですよ。めっちゃ落ち込む。絶対めっちゃ落ち込んで…その負の感情が物語を劇的な方向に引っ張っていったりする。

だけどそんな必要もないんです。三年間死ぬ気で勉強してやっとみんなに追いつける程度の頭脳の持ち主だからと言って誰かから馬鹿にされたりとかしないですしね。バカやったりもするけれど生徒たち、みんなやさしい良い子なんですよ。親も理解ある親。先生も親身になってくれる。そんなゼロプレッシャー環境で冴えない人間だからとあえて自分を追い込むこともない。ただ少しだけ心を開いて楽しそうにやってるみんなの輪に入っていけばいいだけだ。

ああ…明るいなぁ! なんて明るくて希望に満ちているのだろう! この高校最後の夜には別れの暗さもなければ、そこが自分の人生の一番良いときなのだというような諦観もない。明日からは今よりももっと良い新しい人生が始まって、別れといっても今生の別れなんてこともない、お互いにそれぞれの人生を楽しく頑張って歩んでいればいつかまた再会できるさ、だから後ろなんか向かないで胸を張って笑いながら生きていこうよ…とそんな感じである。そんな感じでバカをやる。

刺さる人には刺さるんだろうな。それも相当多くの人に刺さるんだろう。俺はそれぐらい知っているんだよ。だから切ないんだ。この良い子たちなら高校時代の俺が突然パーティに完全初対面状態で顔を出しても快く受け入れてくれるだろうが…そんな奴らこそ俺みたいな窓際にすらいなかった奴は憎むのだ。まぁ憎むとまでは言わないけれどもだね…わかるだろうかこの気持ちが! この気持ちがあああああ!

わかるって言われたら逆にムカつくからわからないんでいいんだ。わかられたくないんだ。仲良くされたくないんだ。俺はみんなに俺の敵でいて欲しいのだ! と、そのような拗らせ暗黒感情をですね、たとえば『スーパーバッド』のような映画はすくい上げてくれたわけです。だから『ブックスマート』は、まぁ、ようするに、単に俺の映画じゃなかったってことだね。俺の映画だと感じられる人は大いに楽しめると思いますはい。

※あと見てて思ったんですがこの良い子だらけの高校は『スパイダーマン:ホームカミング』からスパイダーマンを抜いたみたいな感じだったので、こういうの今風なんじゃないすかね。やれやれ困ったな、これからのアメリカ映画内学校がみんなこんな良い子だらけになったら俺はどこの席に座ったらいいというのですか。観なけりゃいいのかい。そうだよな、学園映画は基本的には子供たちのためにあるのであってオッサンのためにあるわけじゃないからな…しんどいな。ビデオで映画ドラえもんでも観よう。

【ママー!これ買ってー!】


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『ナポレオン・ダイナマイト』とか『スーパーバッド』とか学校がまだしんどい場所だったゼロ年代学園コメディが懐かしいよ。

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