ブルダン生前葬映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』感想文

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《推定睡眠時間:0分》

随分ジジィに都合の良い話だなと思ってしまったわけですがこれはもうブルース・ダーンありきのスタア映画で一にも二にもブルース・ダーン、物語的にはこのブルース・ダーン演じるインテリ演劇評論家が初恋の人だった恋人未満友達以上の元女優がアルツハイマーに罹ってしまって施設に入居…の報を知ってテメェもアルツハイマーを装い施設に入居、昔の君は舞台の上でこんな風に輝いていたし俺も君をこんなに好きだったんだよを思い出してもらおうとするわけですが、その過程を通して輝きを取り戻すのはむしろ相手役の女優カロリーヌ・シオルよりもブルース・ダーンなのであった。

まーブルース・ダーンといえば最近では『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』が名演でしたからね。そこで認知症の老人役だったブルダンが今度はアルツハイマーを騙るわけですから楽屋オチというか、俳優の持つイメージから映画を作っていったようなところがあり、どうブルダンを見せるか、ブルダンで何を見せるか、みたいなのが映画の主眼になっていて他は二の次だったんじゃないだろうか。だとしても映画として欲がなさ過ぎる気がするのでもう少し濃い味でも…と思わなくもないのだが(老人向けの栄養バランス食なのだろうか)

なんかですね、主人公の成長と変化がドラマなんだーみたいな(わかったような)ことがよく言われるじゃないですか。これそういうのないんですよね。ブルダンは金があってプライドが高くて我の強い面倒くせぇジジィで、この人が嘘ついて施設入ってアルツハイマーのフロアに入居してるジジィババァとかその世話をする介護士と接したりするわけです。そしたらそこにドラマの一つや二つ生まれそうなもんじゃないですか。

なんか、嘘ついて入居したんだし罪悪感が芽生えるとか、実は周りのみんなはボケてるように見えてブルダンの嘘に気付いてたとか、ブルダン初恋の人とブルダンはちょっとずつ仲良くなってくものの結局初恋の人はかなりアルツハイマー進行してるから全部忘れちゃうとか。そういうの無い。ブルダンは友達とスペイン旅行行くよーって家族に嘘ついて施設に入居するんですけどホントに旅行行ってる感じの施設体験記なんですよね。大した発見も驚きもなくてあー楽しかったなみたいな。ブルダンの家族のドラマもこのツッコミの浅さなら抜いちゃって良かったんじゃないのみたいな感じしますしね(たとえば『グラン・トリノ』みたいに)

それでも面白く観られるのはブルダンの芝居が面白いからなんですよ結局。本当扱いずらい感じなんですけど憎めないところもあってですね、初恋の女優にすっかり自分が忘れられてると知って浮かべる笑顔なんか素晴らしい。そこです。そこだけ。まそこだけとは言いませんけれども初恋の女優がかつての自分を取り戻す感動の場面もグーッと盛り上げるんじゃなくて一歩引いたところから冷静に…という演出で、結局これも、初恋の女優のフィルターを通してどんどん世界から遠ざかっていくブルダン老人の静かな哀しみの表現と見た方がしっくりくる。

生前葬のような映画だな。軽妙洒脱なブルース・ダーン生前葬。そう見れば良い映画だったと思う。タイトルの出し方も洒落てましたし。

※あと女優担当のアジア系ショートヘア女介護士、超好きな感じだったのでそいつをもっと撮れよ!と逆にイラついてしまった。背景にチラチラ映り込むばかりで全然カメラがこいつを撮るぞの色気出さん。出せ。

【ママー!これ買ってー!】


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これは傑作。

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