『映画ひつじのショーン UFOフィーバー!』感想文

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いま『虚空門 GATE』っていうタイトルが既にちょっとキているUFO(?)ドキュメンタリー映画がミニシアターを中心にロードショーしてるんですけど俺の中では『ひつじのショーン UFOフィーバー!』と『虚空門GATE』、なにかこうUFOに対する想いの深さとアウトサイダーアート的な表現(者)で繋がったので名画座二本立て上映を夢想してしまう。繋がらないよって思うかもしれませんが繋がるんです。ひつじのショーンとKOKUMON…ショーンとK…ほら間にショーン・Kを置けば…ほら! UFOを追い求めるとはこのように電波的直感と即興ダジャレを信じることなのだ。なんのことだかわからなければそれでいい。

ところで『UFOフィーバー!』のどこがアウトサイダーアートなんだといえばショーンたちを飼っている牧場主が辺鄙な地元に到来した奇跡のUFOフィーバーに乗じてかつて『探偵ナイトスクープ』で桂小枝探偵が担当していたいわゆる「パラダイス」的なDIYテーマパークを牧羊犬と羊たちに作らせるからだった。
興行は水物。後でどんな文句を言われようが稼げるうちに稼いだもん勝ちだ。憧れの最新式コンバインを手に入れるために牧場主は手段を選ばない。

羊たちには厳しいが飼い主には従順な牧羊犬がたった一匹で宣伝活動をしてくれたのでこんなパラダイスなテーマパークでもまんまと騙されたお客がそれなりに来てしまう。中に入った客たち、愕然。そこはあまりにもパラダイスであった。なんか宇宙人(木製)にボール投げて倒すゲームとかがある。あと学芸会みたいな書き割りの組まれた舞台でUFOショーとか見れます。でもこれみんな牧羊犬の監督の下で羊が作ってるから羊にしてはすごいと思うな。

牧場主にこんなアウトサイダーなパラダイスを作らせたUFOフィーバーとは! UFOが飛ぶ以前に話が飛びすぎて読んでいる人は混乱しているだろうと思うが気にせず説明すると、ショーンたちの住む牧場近くに謎のUFOが着陸、ポテトを食いながら犬の散歩をしていたオッサンがそれを目撃してメディアに話したので娯楽に乏しい町はにわかに活気づく、第三種接近遭遇系の映画によく出てくる防護服を着た謎集団とメン・イン・ブラック的な女もやってくる、これ即ちUFOフィーバー。

もちろん宇宙人もやってきてショーンと一緒に騒動を巻き起こす。宇宙人とくればETでしょっていうんでその未知なる奇行に振り回されて辟易しながらも、ショーンはおうちに帰りたいキッズ宇宙人のために一肌脱ぐのであった。肌を脱ぐのが羊のお仕事。

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ぼく『ひつじのショーン』観るの初めてなんですけどこんなにおもしろかったんですなぁ。さすがの英国的諧謔というところでUFOネタ、UFO映画ネタ、UFOとか関係ないSF映画ネタがいっぱい。極秘UFO研究基地の口笛声紋ドアロックは『X-ファイル』のテーマ曲、宇宙大冒険を貧乏日常生活レベルに引きずり下ろす『銀河ヒッチハイクガイド』的ユーモア、麦畑にミステリーサークルを見出してしまった牧場主が牧場パラダイス化計画を閃くと『ツァラトゥストラはかく語りき』がBGMにイン、閃いている間に黒焦げになってしまったトーストがトースターから飛び出すとそれはまるで『2001年 宇宙の旅』のモノリス! 『ロボコップ』のオーバーキル警備ロボED-209みたいなやつまでついでとばかりに出してしまう遊び心がただただ楽しい。

メン・イン・ブラックみたいな敵役の宇宙人絶対つかまえるウーマンはクレイアニメの制作期間を考えれば偶然なのかもしれないが、『メン・イン・ブラック インターナショナル』のテッサ・トンプソンとキャラ設定がモロ被りしてしまった。すばらしいのは『メン・イン・ブラック インターナショナル』が二時間ぐらいかけていた宇宙人絶対つかまえるウーマンの孤独と情熱をこちらはほんの二三の台詞のないシーンで描き切っているところ。パロディまみれの映画ではあってもそのパロディは決して単なる賑やかしではないのだ。そこにはUFO映画とかUFO関連映画の本質が確かにあるんである。泣いたよ宇宙人絶対つかまえるウーマンのくだり。

最初は気味の悪かった宇宙人も映画が進むと段々かわいく見えてくる。人を舐め腐った面構えの悪童ショーンも見ているうちに愛着が沸いてくる。不気味なはずの防護服人間までなんだかお茶目。それは防護服のまま缶ジュースを飲もうとして飲めなかったり防護服のまま料理を作ったり防護服のまま0から動かない宇宙人捕獲カウンターを眺めてガッカリしたりとふざけた振る舞いをしているからだが、可愛さと可愛げのなさの中間を狙ったブリティッシュなキャラ造形は味わい深いし、生き生きとしていてたいへんよかった。変に客に媚びた造形だといくら表面的に可愛かったとしても生き物の愛らしさは出てこない。ちょっと気持ち悪かったりムカついたりするほうが生きたキャラとして愛せるのだ。

『ミスタービーン』系統の現代サイレント喜劇の作りも、そうすることで却ってダイレクトに感情の機微を伝える効果があったりするのかもしれない。牧羊犬のな、あのしかめ面の牧羊犬の…泣かせるんだ牧羊犬が! 牧場主のな、あの鬼畜で呑気な牧場主の…笑わせるんだ牧場主が! 宇宙人絶対つかまえるウーマンが! 羊たちが! 騙されてパラダイスにやってきた憐れな客たちが! 落としたポテトでも平気で拾い食いしてしまう下流っぷりに落涙必至の宇宙人の第一発見者が! わけわからん注文を受けてため息をつくピザ屋のバイトが! そしてショーンが!

サイレント喜劇といっても単純な映画というわけではない。物語は単純だけれどもそこに言外に織り込まれた数多のキャラクターの悲喜こもごものドラマが台詞で語るよりも豊かな色彩を映画に与えているのだ。ようするにバカバカしくも詩情あふれるドタバタ映画なんである。
押せるボタンは押しておけ乗れるUFOには乗っておけな英国パンク精神でブリテン片田舎から宇宙まで飛び出す大冒険、その末の落語的オチ。センスの良い選曲もスピーディな展開も見事な笑えて泣ける超・とても・最高な・UFO映画でした!

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『ひつじのショーン』みたいに羊は普通は喋らないから沈黙したからなんなんだっていう気もしますよね。そういう意味じゃないのは知ってます。

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