全力でPG映画『サイコ・ゴアマン』感想文

《推定睡眠時間:0分》

サイコでしかもゴアマンと来たらどう考えてもグチャドロ地獄絵図が繰り広げられる愉快な映画だろうとしか想像できないわけですが観てびっくりPG-12指定のレッテルに恥じない家族みんなで楽しめる朗らか特撮ファミリーコメディ、グチャドロの地獄絵図を期待していたこっちとしてはいささか騙された感もないではないがR指定ではなくPG指定であることを大きく打ち出した宣伝を展開しているからにはまぁ勝手にグチャドロ地獄絵図を妄想したこっちが悪い。いや絶対それを狙ってただろと思うけどな!

さて毎日いろんな宇宙人が降ってくるアメリカですがこの映画の宇宙最凶宇宙人サイコ・ゴアマンは降ったといっても遠い昔であまりに最凶であったために宇宙評議会の鉄槌を食らい宇宙魔法により棺桶に封印されて地球に島流しにされていたのでした。その封印をたまたま解いてしまったのはヤンチャ盛りの元気少女ミミちゃん8さい。独自に考案した奇天烈ドッジボールで負かした兄を約束通り生き埋めにしようと家の庭に穴を掘らせていたところ例の棺桶があったのです。

蘇った宇宙最凶宇宙人は早速近くの廃墟にたむろしていた強盗三人組をゴア殺害。さぞミミちゃんも怖い思いをしていることだろう…と思いきや自分以外の全人類を羽虫ぐらいな感じにしか思っていないヤンチャなミミちゃんなので宇宙最凶宇宙人ごときに怯んだりはしない。宇宙最凶宇宙人にとってはまったく運が悪いことにミミちゃんは宇宙最凶宇宙人を思いのままに従わせることのできるスーパーパワー石を棺桶から引っこ抜いてパクっていたのでこうなっては宇宙最凶宇宙人も手出しはできない。

「貴様ぶっ殺すぞ」
「ねぇこいつに名前つけようよ! なにがいいかな! サイコマンは?」
「おい貴様ぶっ殺すぞ」
「ねぇお兄ちゃんも考えてよ!」
「いいからさっさとその石を渡せさもなくば貴様ぶっ殺すぞ」
「う~んじゃあ…ゴアマン?」
「おい貴様ら」
「それだ! サイコ・ゴアマン! 宇宙人よ、お前は今日からサイコ・ゴアマンだ! よーし走れサイコ・ゴアマン! なんか面白いことしろサイコ・ゴアマン! わっはっは! わーっはっはっは!」
「…どっちがサイコやねん」

とまぁこんなような感じで不承不承×10ぐらいの不承を抱えたままミミちゃんの下僕アクショントイと化したサイコ・ゴアマンは時折腹いせに通行人の子供などを魔貫光殺砲で粉砕したりしつつミミちゃんの着せ替え人形となりミミちゃんのsiriとなりミミちゃんのボール遊びの相手になるのでした。ミミちゃんの周囲の人間に甚大な被害が及んでいる以外は平和な毎日。サイコ・ゴアマンの復活を知った宇宙評議会がゴアマン抹殺のために動き出したことを、ゴアマンもミミちゃんもミミちゃんのせいでビッグ脳みそに魔改造されたミミちゃんフレンドも、まだ知らない…。

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それにしても本当に朗らかな映画で確かに人はまぁまぁ死ぬが暗さがまったくないのがすばらしい、それもこれもミミちゃんの身勝手極まる元気っ子キャラのおかげです。かつて子供ホラーの元祖的一本『悪い種子』が公開された際にはこれでは観客の溜飲が下がらないだろとかいうふざけた理由でサイコパス女児ちゃんのお尻をニコニコしながらぺんぺんする(ふりをする)虐待カーテンコールが追加されたものですが時代はすっかり変わりました。もはやミミちゃんのお尻をペンペンする虐待大人などおりません。

『サイコ・ゴアマン』のミミちゃんは『悪い種子』のサイコパス女児より遙かに取り返しのつかないことをしているわけですがまぁでもいいじゃないか! 実際に近所にこんなクソガキがいたらこれ以上被害を拡大しないために俺がこの手で始末するかもしくは南極大陸の極点まで逃亡して凍死するかの究極の二択を迫られることは間違いがありませんがこれはあくまで映画です、ミミちゃんのニコニコワクワク身勝手っぷりにお兄ちゃんも両親もサイコ・ゴアマンもそれにもちろん観客だってタジタジ! ここまで身勝手だと逆にこんなに自由に生きてもいいんだと元気をもらえます(いや本当に)

ふざけて言っているのではなくこの映画は本当にファミリーコメディなので不謹慎ギャグとかブラックユーモアとか脱力ジョークを交えつつもミミちゃんの家族の問題…なんもしないパパに対するママの不満とか身勝手な妹に嫌気が差しているが気が弱いので正面からは文句を言えない兄の鬱屈などをちゃんと物語に織り込んでハートウォーミングな感じに解決するから立派です。やっぱり最後は愛だよね。愛が勝つ! ということで愛の解釈がハイパーダイナミックかつ壊滅的に間違ってしまっているがともあれ家族愛あふれるラストはなんだか感動的です。まさかこんな映画で感動させられるなんて! ある意味『崖の上のポニョ』みたいだと思ったね。

ミミちゃんの傍若無人デイズを彩るのはサイコ・ゴアマンをはじめとした数々の特撮怪人たち。この怪人たちがまた絶妙にキュートかつヘッポコですばらしい。とくに映画館でこいつモチーフのお菓子も売ってるビッグ脳みそくんと凶悪宇宙人枠で登場する人食いドラム缶ね。あいつあんなナリしてるのに何もしないんだよ人食いドラム缶、着ぐるみの重さとバランスの悪さにふらつきながらボコスカ蹴ったりとかしてるだけで。やや一本調子のきらいはあるがこういう計算された脱力ギャグも大いに見物、観ている間ずっとニコニコしていられる幸せな映画でしたね、サイコ…いや、サイコー・ゴアマン!

【ママー!これ買ってー!】


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『サイコ・ゴアマン』でなんとなく思い出した映画。色んな怪奇モンスターが出てきて高校でバスケをするしょうもない映画というぐらいしか記憶にないがバカで面白かった。

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