存外ゆかいな映画『クリーチャーズ/宇宙から来た食人族』感想文

《推定睡眠時間:15分》

ポスターの真ん中にかわいい宇宙生物が載ってたので邦サブタイトルにある食人族というのはこのかわいいやつでこいつが実はバクバクと人体を食い破っていく映画なのだろうと思いきやこのかわいいやつは本当にかわいいだけのやつで人体を食い破るっていうかたまにエネルギー補給でなんか生き物食う程度の食いっぷりを見せるのはこのかわいいやつを追って地球にやってきたこれはこれでサイズ的にハンドパペットサイズなのでかわいいが凶悪は凶悪な別の宇宙生物なのでしたというこの意外性。そのパターンもあるんだ! かわいい宇宙生物に裏の顔がないパターンて・・・まぁあるか、ホラー以外では。

でもホラーでは珍しいのでどうしてこんな映画ができたんだろうと思いながら(別に悪い意味ではない)スタッフロールを眺めていたらあちらこちらに顔を出すJopia姓。この映画の監督はTony Jopiaさんという人なのであぁなるほどねー、つまり家族総出でスタッフやったりキャストやったりして撮っているご当地映画ならぬご家族映画。jopiaさん一家の家族構成は知らないがまぁ一般的に考えればそこそこ若い子供とかもいるであろうし、それならこのファミリームービー志向も納得である。アメリカン深夜映画界の帝王シダリス夫妻のように息子と一緒におっぱいガンアクション映画を撮る怪人もいるがそれは例外というもので、子供とかと一緒に撮る映画なら普通あんまりモラルに反するような内容にはしたくないだろう。

ということで宇宙生物は出るしゾンビは出るし血もちゃんと出る映画ながら妙に道徳的な『クリーチャーズ』である。人種差別をする学生たちはちゃんと天罰を食らってというか悪い方の宇宙生物に食らわれてゾンビになるし人種差別をしなかった良い学生たちは生き残る。かわいい宇宙生物はかわいいので海外放送開始に合わせてそのヘソ出しルックが児童ポルノに当たるのではないかという懸念からトゲピーを常に抱いてヘソを隠すようになったと言われているアニメ版『ポケットモンスター』のカスミのように登場人物がずっと抱いてます。抱かれてむきゅむきゅ~くふ~? とか『すごいよマサルさん』のメソを思わせるかわいい声を出してかわいい!

ご家族映画ということでみなまで言わずともわかると思うが基本的に安い映画で、安いモンスター映画とかゾンビ映画に超よくありすぎるように山の中と山の中のどっかの家と山の中のバーみたいなところしか出てこないロケ地節約っぷり。ゾンビも同じ人が何度も蘇って襲ってくるので涙ぐましさを感じないでもないが、ただし、そのゾンビ使い回しシステムにもちゃんとした設定上の理由があるように、安いのは明らかだが安くてつまらない映画にはなっておらず、むしろこのお値段でこんなに! ・・・とまでは言わずともお値段以上のおもしろさがある。

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手作り感満載の宇宙人デザイン&パペット操演は80年代映画的な懐かしさがあって愉快だし、人体破壊も残酷というよりは笑える方向で一捻りあって楽しめる、山の中と山の中の家と山の中のバーしか出てこないと言えばいかにも退屈そうに思われるかもしれないが、これが意外とメリハリが効いていて案外ダレ場は少ない。ダレそうになると何度も蘇るゾンビが襲ってくるので技ありだ(ない)

それにこれはキャラクターがよかったな。引率の先生(学生たちをバスでどっかに連れてった帰りに宇宙生物とゾンビに襲われたという設定)もなかなか人間味のあるキャラクターで好感が持てるが強烈な印象を観る者に与えるのはやはり上下白のストームトルーパーみたいな衣装でキメた日本人女性留学生の人。この人カタナでバッサバッサとゾンビと宇宙生物をぶった斬っていきます。なぜ! まぁ、それにはちゃんとしているかどうかはわからないが理由があるんだ。

少し良く書きすぎたかもしれない。実際、映画館で観ている間は途中まで「なんだかタルい映画だな~」とか思っていた。しかしそこで思い出したのは配給エクストリームの文字。エクストリーム! エクストリームといえばご存じTOCANA映画配給部門のことだが、もうね、TOCANA配給の映画なんて今までずっと具のない雑炊でしたからね。なんかあのイエティのやつとかさ、呪いの映画のやつとかさ、あとほらあれ『悪魔のいけにえ』の今更激安オマージュ作みたいのとか! まぁ観た人はどんな映画かわかると思いますが(観てない人は観てガッカリしてください)そういう映画ばっかりやってきたTOCANA=エクストリームの配給映画としてこの『クリーチャーズ』を観ると・・・面白すぎてびっくりする!

いいのかこんなにサービス満点で! いいのかこんなに宇宙生物かわいくて! いいのかこんなに平和なギャグで人を笑わせて! もうガラリと世界変わったよ、エクストリーム配給ってことを思い出して。そこからは幸せな時間でしたね~。うんわかってる。エクストリーム配給を頭に入れなかったらつまらなくはないけどわりと突き抜けたところのない低予算で頑張ったね映画。でも睡眠を経て途中で「あ、エクストリームか!」と思い出した俺にはエクストリーム史上最高傑作。映画って見方次第でいかようにも変わるもんですね。なにか昔の洋画劇場解説者の決め台詞っぽくそう言って感想を終えよう。ここで終えないとたぶんつまんなかったところをどしどし書き始めてしまうから・・・。

【ママー!これ買ってー!】


『クリッター』[DVD]

かわいい宇宙生物の造形は『グレムリン』のギズモに近いが内容的に近いのはスピエリッグ兄弟のデビュー作『アンデッド』とか、あと『クリッター』。

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