『ボス・ベイビー』すげー良かったです感想

《推定睡眠時間:0分》

『リメンバー・ミー』と競合するファミリーアニメなので比較ポイントもないとは言えない(歌がキーになる、とか)が、そういうのはちゃんとした紙媒体の批評の人なり共感力と伝達力の高い丁寧な文章を書ける映画ブロガーの人なりがやってくれるので、俺としてはその点には触れることなくただ、どちらも客席にお子様満載の吹き替え版で見たがお子様レスポンスが良かったのは明らかに『ボス・ベイビー』の方だったとだけ言っておく。

赤ちゃんはどこから来るの? 系アニメであるからアダルト向けのジョークにも抜かりは無いが、基本はフィジカルなコテコテギャグが多い。都合が悪くなるととりあえず金をばらまいて解決しようとする憎たらしい乳幼児が暴れ回る『クレヨンしんちゃん』的抱腹絶倒ドタバタ劇なのでお子様もドッカンドッカン乗れるわけですよ。オムツ履きたくないボスベイビーが男性器丸出しで暴れたら面白いよね。面白いよね!
このボス・ベイビーは一人でタクシーに乗って一人でタクシーから降りて一人で小躍りしながら主人公の少年の家にやってくるが、その際には「なんで歩いてるの!?」の百点満点すぎる子どもレスポンスが俺の見ていた劇場では飛び出してしまったぐらいだからお子様のハートを鷲掴んでいたよ『ボス・ベイビー』。

そのレスポンスの良いお子様どもが果たしてどの程度このストーリーを理解できたのかは独身お一人様鑑賞の俺にはわからないんですが、そのへん逆にちょっと感動させられたところで…いや意外と、意外と台詞なんかに難しい表現があるし、展開は密度が濃くてアップテンポだから小学校中~高学年ぐらいじゃないとたぶん難しいんですよちゃんと意を汲むの。
ボス・ベイビーのダイレクトギャグとダイナミックアクションでくすぐられまくったお子様とある程度知恵の付いた年頃のお子様で見え方が違うっていう類の映画で…それでまた年齢とか世代による世界の見え方の違いっていうのがシナリオの核になってるタイプの映画で。

今これ見てる小さい子どもがいつか年齢を重ねて前とは違う視点から見直したらその都度違う相貌が現れるんだろうな…と思ったら感動するじゃないすかなんか。
そこ、ファミリー映画として実に上手いっすよね。いや本当そこが素晴らしくてですね、手堅くまとまってるような映画じゃないし散漫なところも粗雑なところも冗長に感じるところもあって、でもこういう映画は飽きずに何度も見れるし折に触れて何度も見ることでむしろ味わいが増していったりする。

ストンと綺麗に収まらない現実と現実の人間関係の多面性があって…赤ん坊が家に来たことで両親からハブられたと思ってる子どもの切実な心理をあくまで子ども目線で描き出す誠実に子どもへの信頼があって…要するに、そんな映画だとは全く思ってもみなかったが芯の通ったファンタジーだったから子どもマインドの俺は堪えられなかったのだ…。

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ていうわけで予告編からは『ベイビー・トーク』的あざとさと安パイぽさしか感じられないのですが(『ベイビー・トーク』パロディもそれはそれである)これはテリー・ギリアムの世界観とかに近いようなチャレンジング映画で、空想と現実の区別が付かない7歳のファンタジー少年が邪魔者としか見れなかった赤ん坊を弟として受け入れるようになるまでの心理過程を想像力豊かに映像化、と言えば身も蓋もないがその想像力の振れ幅の大きさが大変にファンタジーしていた。

だってもう画が3DCGと2Dカートゥーンと切り貼りアニメの混成様式。少年の空想に合わせて急にカートゥーン調になったり3DCGで描かれるお子様スケールのダイナミックアクションの最中にふっと背景の木を見たらそこだけ書割みたいになっていたりする混沌っぷり。
ニンジャだ! 少年はニンジャになりたい時にはそう叫んでニンジャになってしまうんである。それすごいっすか? 別に普通じゃないすか? 虚しい自問自答文章だが、いや、それがすごいんですと自分で答えるぞ俺は。

何故と言えば脈絡とか説明とかがないんだ。何故無いかって少年の奔放な空想を映像にしてるんだからそもそも説明のつかない不条理ワールドなのだ。徹頭徹尾、ではないけれども九割は少年の空想を客席に丸投げ。
ていうことで犬の着ぐるみを着た男を一目見てうわぁめっちゃ怖ぇぇ! とか少年が感じるやその恐怖がストーリーの方向を急に変えてしまったりするようなことが起こる。これぞ子どもファンタジーってもんでしょうよ! 逆に物の分かった大人は話についていくのがたいへんだ(分かってなくてよかった)。

しかし着ぐるみ人間が怖い、みたいな子ども感覚はいいなぁ。大人の浅知恵とか些細な無配慮が子どもにとっての脅威になるっていうの往々にしてあるじゃないですか。
朝起きたら家に少年の知らない子どもがいっぱい居るって場面があって、それは少年の両親が会社の同僚を子ども同伴で家に招いただけなんですけど、でも少年めっちゃ怯えるんですよ知らない子どもが勝手に家に入ってきてる状況に。で両親はその怯えをあんまり真に受けないの。
そういう子ども恐怖体験を逃さないから繊細な映画だなぁって思いましたよ。スラップスティックで繊細を覆い隠そうとするシャイネスとかグっとくるね。

外出禁止を言い渡された少年が空想によって監獄と化した自室の壁に監獄ドラマでよく見る日数を数える棒を描いていたが、その棒模様が少年のリアル布団の模様だったりするから芸が細かい。日常の些事から自分の世界を創造してしまう少年なのだ。
それにしてもさっきから少年が少年がとベイビー置き去りにして書いているが実際、少年目線の空想ファンタジー映画なんだからしょうがない。のだが、じゃあボス・ベイビーが空想の産物かというと必ずしもそういうわけでもないんであるとラストのラストで気付かされ、そこに至って劇中では語られることのなかった物語の存在が仄めかされ爆笑空想大冒険が想定外の厚みと余韻を帯びるのだった。

『ボス・ベイビー』はそのことを特に説明しようとはしない。それはまぁ各自勝手に汲んでくれやってなもんで、こんなポップに見えて案外観客を突き放しているとも言えるが、テリー・ギリアム流に言えば観客と子どもの知性を、なによりファンタジーの持つ力を信頼してんである。
こりゃたいへんとても真摯で味わい深いファンタジー映画だと思いましたよ、もう本当そんな風には全然見えないんですけど一見…。

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そこまで露骨ではないにしても随所に映画パロディの嵌め込まれた『ボス・ベイビー』には『未来世紀ブラジル』のパロディと思しき場面もあり、ドラッギーな映像感覚を見るとかなりギリアムから影響受けてるんじゃないかという気もするが、そうなると『ボス・ベイビー』は7歳の少年の空想を映像にしているわけだから素の状態でそれをやるギリアムは精神年齢7歳ということになってしまうな。

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