《推定睡眠時間:35分》
これ上映開始に間に合わなくて冒頭何分か見逃しちゃったし頭痛くて終盤も30分ぐらい寝てるからもう1回観に行くつもりでこれは諸々わかんないことがある中での仮の感想文ってとこですけどなんで2度目を見てからじゃなくていま仮の感想文をとりあえず書いてるかっていやもう面白い、面白かったからとりあえずの形でも感想文を残しておきたかった。
イギリスはロンドンに小綺麗な新築持ち家持ってる黒人一家がおりましてな、父親は配管工、息子22歳どすこい体型は部屋でゲームするかたまに散歩して昔のいじめっ子に遭遇して怯えるだけの日々を送るニート、とまぁ理想とは言えないかもしれないが、とはいえ食うに事欠くわけでもなし、むしろ小綺麗な新築持ち家に住んでるぐらいだから恵まれている方だと思いますが、その一家のマザーがとにかく誇張ではなく年がら年中ブチギレまくっているのである。
部屋でゴロゴロしてる息子にキレるのはわかりますわな。まぁキレがニート問題の解決に役立つかどうかは別として気持ちはよくわかります。しかし「さっきお前の妹のアニーさん(仮名)から電話があってさ」と会話を切り出す夫に対して「自分の妹なんだからあんたに言われなくたって名前ぐらいわかってんだよ!教えてくれてありがとうございました!」と食い気味でキレるのは「そこで!?」って思うよね。キレの発生するタイミングがこの人とにかくすごい。あぁよくいる夫にキレまくる妻ねと思ったかもしれませんがいや違うのだ。この人は家の外で暴風雨のようにキレまくる。歯医者で検診を受けていると「ぎゃあ! これじゃあ中世の拷問だよ! 高い金払って拷問受けてんのかよあたしゃあ!」とキレ、家具屋でどうせ買う気もないソファに座ってヘラヘラしてるカップルを見ると「それ買ってくよな? おめーらの汗でソファべっとべとだよ! そんなもん欲しくねぇや!」とキレ、もっとも理不尽なレベルではスーパーのレジで若い女がただ普通に商品をスキャンしていると「なに幽霊みたいな顔してんだよお前!」とキレ、それはひどくないかと抗議する後ろに並んでる客と大口論に発展してしまうのだ。
ここまでキレパワーの強い人なのだから夕食などもはや独演会いや毒演会であり、配管工の夫とニートの息子が完全に黙りこくって粛々とご飯を食べる中、マザーは世の中のすべてに延々キレ散らす。もはや日常なので夫も息子もとくに怒ったりイヤな顔をしたりすることなくまったくの無風、悟りの境地だ。その光景、爆笑である。これだけキレるマザーなのだからなにかしらメンタルの問題を抱えているのは明白、もしかするとメンタル以外にも重篤な病があるのかもしれず、そのへん俺が寝ていた終盤30分で明かされたことだろうと思われるが、具体的にはわからずとも超濃厚なユーモアとペーソスは十二分に感じ取れる。これぞ悲喜劇というもので、マザーが理不尽にキレるたびにこっちは爆笑、キレたマザーに夕飯を作ってもらえなかったのでケンタッキーのバケツ買ってきて無言でフライドチキン食ってる夫と息子の哀愁あふれる姿にも爆笑、まぁ本人たちは可哀相なのだが、間が絶妙なので笑えて仕方がないんである。
こういう面白さを支えるのはディテールの作り込み、クスリともセックスとも暴力とも無縁のニート息子の部屋に置いてあるゲームハードがプレステ5とかゲーミングPCじゃなくてSwitchでやってるゲームはFPSじゃなくて『パイロットウィングス』みたいなフライトシミュレーターというリアルさ(欧米映画の中に出てくるゲームといったらFPS一辺倒だもんな!)、床屋はアメリカでは黒人コミュニティの集会場の如しで『バーバーショップ』なんてアイス・キューブ主演の映画まであるぐらいの黒人カルチャーとして発展したが、マザーの妹のやってる美容室もまたロンドン黒人コミュニティの井戸端であり、そこで交わされる黒人女性たちの多少のダーティトーク入り混じる他愛のない会話も本筋とは何も関係ないが実におもしろい。
仮の感想だからとりあえずこのへんでオチもなく止めておくことにして、もう一回観たら続きを書こうと思います。いやしかし、面白い映画だったねぇ!