映画感想『Merry Christmas! ~ロンドンに奇跡を起こした男~』

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舞台美術的なセットデザインとかライティングが目を引いたんでこの陰影に富んだうつくし空間を作ったのはどんな人やと検索するとプロダクション・デザインがパキー・スミスという人、フィルモグラフィーを見ていくと『フリー・ファイヤー』とか『ハイ・ライズ』とか癖の強いインスタレーション的な映画を結構やっている。

メアリー・シェリーが『フランケンシュタイン』を書き上げるまでを描いた『メアリーの総て』もこの人の手によるものというからトリビア感があった。
えらい抽象的な邦題なので見るまで何の話か掴めなかったこの『ロンドンに奇跡を起こした男』は、チャールズ・ディケンズが『クリスマス・キャロル』を書き上げるまでのお話だったので。

一方、撮影監督。ベン・スミサード。シェイクスピアものの『嘆きの王冠 ホロウ・クラウン』を撮った人、というのでなんとなく『ロンドンに奇跡を起こした男』の格調高い、舞台劇的な趣の土台が見えてくる。
この人はこの人で『グッバイ・クリストファー・ロビン』なる伝記映画に撮影で参加してるようなので、パキー・スミス共々こういう時代相の演出とか、フラットな演劇空間の造形というのは慣れたもんだったんでしょう、たぶん。

良いっすね。面白い面白い。お話はディケンズが想像上のスクルージさん(演:クリストファー・プラマー!)と対話を重ねながら『クリスマス・キャロル』を書き進め、つつ、振り返りたくない己の過去と向き合っていくというもの。
『クリスマス・キャロル』は『クリスマス・キャロル』のように書かれたのだ、みたいな入れ子構造、英国的諧謔に彩られたファンタジーに近い奔放な伝記映画って感じ。

エキセントリックなディケンズがダン・スティーヴンス、俺は馴染みがなかったが実写版『美女と野獣』で野獣だった人、らしい。
スティーブンスとプラマーのミュージカルのような掛け合い、登場人物の言にいちいち横槍(ツッコミ)を入れるプラマーの糞野暮、いやぁ、楽しい。

人は良いが先のことを考えないディケンズの父親役はテリー・ギリアム映画の常連でシェイクスピア俳優のジョナサン・プライス。
だからもう、撮る側も撮られる側も、その筋の分かってる人たちが集まって全員70%ぐらいの力で仕事してる感じですよね。

ディケンズの作家的陰影をヴィクトリア朝イギリスの明暗の中で浮き彫りにしていくストーリーも、だからファンタジーが必要なんだとか、だからクリスマスが必要なんだという風に帰結して、展開の飛躍を強引にも調和的に納得させてしまうのだからよく出来ていた。
こういうの幸せな映画だと思いますよ。奇想を衒うとか、演技を競うとか、そういうことをしない。しないでも面白い。

ちな一番好きなところは陽気な幽霊の挿絵をややギレで発注するディケンズと陽気な幽霊ってなんだよってややギレで拒む挿絵作家のバトルです。なんでもないところが面白い映画は良い映画。

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ビル・マーレイ版のクリキャロってだけでちょっともう面白いじゃないですか。

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