イルミネーション版『グリンチ』感想文

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《推定睡眠時間:吹替版20分/字幕版0分》

隠す必要もなければ隠したものを見たがる人も誰もいないと思うが何を隠そう2018年、いちばんのお楽しみはイルミネーション版『グリンチ』。
もうTOHOシネマズのムービングロゴがグリンチ仕様に変わった時からずっと心待ちにしてましたからね。冬にイルミの『グリンチ』が見れる! その一念でこの一年を生き抜いたようなもんです。

待っていたぞ『グリンチ』…さぁ、盗め! 心置きなくクリスマスに浮かれるやつらの手からクリスマスを奪ってしまえ!
以上が劇場に入る時のテンションですが出るときのテンションは一言、イイ話だったね。これに尽きます。
どんな表情でそう言っているかは各自勝手に想像してもらいたい(その表情であなたの心の澄み具合がわかるだろう)

一度目は吹替で見たので字幕でもう一度見てみる。その劇場を出るときのテンション、イイ話だったね! この違いがおわかりだろうか。
一応言っておかなければならないのは別に吹替版ぜんぜん悪くないっていうかむしろ良かったですよ、タレント枠ですけどロバート秋山とかオーバーザ枠のハマリ役、また別のアニメで吹替えやってもらいたいとおもったくらいだしね。

ロバート秋山の役はいつも陽気なグリンチの親友(?)、いつも陰気なグリンチはご存知でしょうが大泉洋、これも特に違和感なし。
字幕版のベネディクト・カンバーバッチ声と聞き比べるとー、大泉洋の方が声が若い。このへんちょっと好みが分かれそうなところですが、グリンチの孤独な中年男としての面が強く出ているのがベネカンで、子どものまま大人になってしまったわがまま人間の側面が強いのが大泉洋。解釈の違いがおもしろかった。

解釈の違いで言えばナレーションもだいぶ趣を異にしてましたね。字幕版はファレル・ウィリアムスのしっとり落ち着いた読み聞かせ父性ボイス、吹替版は宮野真守なので断然の甘ぁい寝かしつけ感。
吹替版で寝ているのはこういうところもわりと関係していると見た。これ結構原作絵本を尊重した映画化っぽいので台詞のナレーション比率が大きく、オノマトペとか畳語を多用するので宮野真守の声で言われると、英語よりダイレクトに言葉のニュアンスは伝わってくるが、眠い。物語を聞くなら字幕版か。

全体的に吹替版の方が低年齢層向けという印象で、クリスマスアニメの吹替版なので順当。字幕版の方はもっと大人向けなんですが、どっちが良い悪いじゃあなくて吹替版と字幕版が相補的な関係になってるのが良かったですね。
吹替版を見てのイイ話だったね、が字幕版も見て、イイ話だったね! になったというのはそういうことなわけです。

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で、イイ話なわけですよ『グリンチ』、一人だけ仲間はずれだって思い込んで村はずれの洞窟に隠棲しているグリンチの孤独を丹念に拾っていて。
ぼく「大人のお伽噺」的な映画キャッチコピーが八つ裂きにしてハザードシンボルを全面に貼り付けた上でマリアナ海溝最深部に埋葬したいぐらい嫌いなんですけど、でもこれは「大人のお伽噺」だったな。

昔のビル・マーレイがよくこういう映画出てたなっていう感じの。孤独な偏屈中年が空回りしながら少しずつ変わっていくみたいな。グリンチの相手役とか夜勤続きでくたくたのシングルマザー看護師すからね。
舞台になるフーの村は飛び出す絵本みたいなビジュアルと仕掛けがいっぱいでいかにも子ども向けな楽しさなんですが、そういう意味では結構渋い。

こんなシーンなんて大好きですね。グリンチ、マックスっていう召使い犬を一匹飼っていて、飯はそいつと一緒に食うんですけど晩餐会とかで使う超ロングテーブルの極と極に別々に座るから10メートルくらい離れてる。
それで一人と一匹の間には燭台が立ってるんです。だから正面からは相手の顔が見えなくて、なんか話す時だけグリンチはひょこっと上半身をずらして燭台の向こうのマックスを見るっていう…泣いてしまうぞ身につまされすぎて。

その拗らせたグリンチが村の超盛大なクリスマスを台無しにしようとして逆に色んな人とか犬とかにクリスマスの幸せを運んでしまうみたいな、ざっくりとそういう筋で…いや、もう本当にイイ話だなぁとしか言いようがないのですが、でも俺はですよ、やっぱりもうちょっとグリンチにクリスマスを…愉快に…痛快に…粉砕して欲しかった…。

世間に馴染めない奇人変人に目線の高さを合わせてそのシニカルな視点から物語るのはイルミネーションアニメの特徴であろうけれども、クソガキ的カートゥーン的なアナーキーっていうのもイルミネーションアニメを特徴付けるもんじゃないすか、『ミニオンズ』みたいな。
『グリンチ』前者はよく出てるんですけど後者はほぼ見当たらなくて、だからクリスマス粉砕計画があんまり楽しくないし、どころか見ていて寂寥感を覚えるばかりなんですよ、その楽しくなさに。

グリンチもあれクリスマスを妨害するのが楽しいからやってるんじゃなくて寂しさを紛らわすためにやってるわけだから物語的には正しいのかもしれないが…しかし…。
後で調べて驚いたよね、監督、ヤーロウ・チェイニーはイルミネーションアニメをずっとやってる人ですが、もう一人共同監督がいて、スコット・モシャー。
誰かと思って検索したら『クラークス』からずっとケヴィン・スミスとコンビ組んで映画作ってた人です。えぇ。そんな人呼んどいてこんなしっとりした騒々しくない映画になるの…いや実に良いしっとりなんですけどさ…。

音楽ダニー・エルフマン。とくれば『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』か『バットマン・リターンズ』か、と想像が先走ってしまうが(本当はエンドロールを見てエルフマンだったことを知ったが)ダークでファニーで躁なエルフマン・サウンドほどには映像が跳ねないし広がらない。
んまぁクリスマス映画だしイイ話だしマックスは可愛いしグリンチには共感しかないし動物も沢山出るし奇天烈ガジェットの数々は愉快だし選曲も良いし結局は面白かったのであんま悪く言えるようなところもないが…来年のイルミネーションアニメにはビリヤードのキューで地球打って玉突き的に太陽系ぶっ壊すぐらいのナンセンス馬鹿騒ぎを期待するよ!

【ママー!これ買ってー!】


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こういうのだったみたいなイルミ版『グリンチ』です。

500
よーく

吹き替え版で見たのですが、記事でも触れられてる通り思った以上に低年齢向けに仕上げてるな、ということとグリンチがいざクリスマスを盗みまくるシーンはもっとヒャッハー感が欲しかったというところは同感です。
というかまぁそこ以外は何も言うことがないくらいによく出来てるなと感心する映画でした。
だから俺のような観客が言うべきことは何もないんですがあれですね、やはり映画は映画館で見るべきだと強く実感しましたね。俺は12月24日の16時30分くらいの回にこの映画を観たのですが両隣りがカップルで前後が親子連れという最強の布陣で囲まれてしまい終始泣きそうでしたね。後ろから子供の声で「グリンチ可哀そう…」とか聞こえてきたときは可哀そうなのは俺だよボケが、と思いましたよ。
やっぱ映画は劇場で観ないとね。いい体験ができました。