《推定睡眠時間:50分》
韓国ノワールはどんなものでも間違いなく面白いという偏見があるのでまぁ下の方といっても『修羅の華』とかああいうVシネ的面白さがあるしと最近は逆にどうせ面白いんでしょ? とあんまり関心をなくしてしまった。でも面白いから観に行くわけだが観に行ったら観に行ったでこの映画、元ヤクザの主人公がのっけから給料未払いの建設会社の社長に無言で近寄ってそこらへんに置いてある鈍器をあまりにも自然に手に取るとあまりにも自然に鈍器で社長をぶん殴り「給料は半分でいいから払え」と暴力正論を述べる。あーあ、やっぱり面白いじゃないか。主人公がとりあえず人を殴ってから話し始める韓国映画がつまらないことはないのである。
と思ったら面白さのピークは結構そこらへんかもしれなかったというかなり珍しいパターン。その後も主人公とヤクザの抗争シーンなどはあるしそもそもこの映画はノワールなので主人公が社会的な重要人物をぶっ殺して逃走中の弟を探し出すのがメインのお話であるから人を殴るとか殴らないとかは紅茶の付け合せのお菓子みたいなものなのだが、この探索の部分が基本的にいろんな人との長い説明会話で進んでしまう。
説明会話が長くてもそこは映画監督の腕の見せどころってもんで撮り方によってはちゃんと面白くなると思うのだが、そのへんがどうもこの映画は締まらないというか。たまにヤクザをボコすシーンとかは清涼剤のように入ってくるものの、基本的には展開も編集もカメラワークも全部平板で、盛り上がるに盛り上がらない。それを誤魔化すかのように劇伴だけはやたらと鳴るので安易で安っぽい映画だなぁの印象が終始拭えない。
韓国ノワールにもちゃんとそんなに面白くない映画があったと知れたのはこの映画のわりと数少ない良かった点かもしれない。他に何か書くことがあるかなぁ。このままだとこのブログ史上最小文字数の感想になってしまうのでもう少し何か書きたい気持ちはあるのだが。まぁ顔は良かったね顔は。そう顔は良かった。たしかにそんなに面白くはなかったがそれでも腐っても韓国ノワール、どいつもこいつも顔がイイのでなんというか映画を観てますねぇ感は味わえるのだな。もちろんこの場合のイイ顔とはすなわちイケメン顔ということではない。平気で法を犯しそうだしそれでなんの良心の呵責も感じなさそうな顔ということである。なんだかんだそういう役者は揃えているし、そういう面構えの役者の層の厚さが韓国映画の面白さを下支えしているんではないだろうか。
だって日本でノワール映画作るっつってもこういう顔の人ぜんぜん集められないもんな。同名韓国ノワールの日本版リメイク『最後まで行く』とかも映画としては面白かったけれども犯罪者どもの面構えは全然迫力なくてダメだったよ。そういう意味では『ブロークン 復讐者の夜』、やはり面白くはないがつまらないとは言えない、韓国ノワールの底力を感じる映画だったかもしれません。