《推定睡眠時間:45分》
「巣食うもの」などと言われれば引っ越した先の古い家にはなにかしらの怪異が存在したというタイプの怖い映画に決まっていると旧約聖書のヨブ記にも書いてあったはずなのだがあれなんか違う。なるほどたしかに謎のカラス怪人は出てくるし後半には悪魔的な存在も追加コンテンツとして登場してくれるが主人公のベネディクト・カンバーバッチはうわぁとびっくりすることもないしそんな異常モンスターハウスと化した家から二人の子供を連れて脱出しようともしない。理由は明瞭であった。なぜならカラス怪人も悪魔も妻を亡くした大傷心状態のカンバーバッチの心が生み出した空想の産物だからだ。『サイレントヒル2』でいうところの赤い三角頭である。
ホラーそのもののような装いでありつつ語られるのはホラーというよりもホラーの背景にある人間の悲哀というのは英国怪談の伝統といえば伝統なのかもしれない。これはイギリスの映画なのだが、そういえば10年ぐらい前にやっていたそれなりに話題を呼んだ『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』もそんなたぐいの映画だったなぁと観ながら考えていた。それでも『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』は最初の方はしっかり幽霊映画として怖かったのだが『フェザーズ その家に巣食うもの』の方はそもそも怖がらせようとして撮っていないので、ジャンル的にはホラーというよりもダーク・ファンタジーが適切だろう。
妻を亡くして心身共に荒んだ主人公がカラス怪人に責められたり悪魔に唆されてあの世に行きそうになったりしながらどうにか現世でふんばって二人の子供との関係を修復しつつそこに生きる希望を見出していく……ざっくりまとめればだいたいそんなお話だろうか。イイ話なのかもしれないが詳しいことはよくわからない。あまりにも抑揚のない会話シーンがやたらと長いのだ。そして抑揚のない長い会話を聞いていると読み聞かせのように感じられてきて眠っちゃう。正常な大人ならそうでもないのかもしれないが俺はお子様である。カラス怪人が人を食べるわけでもないし悪魔が憑依して襲ってくるのを悪魔祓いするわけでもないし、俺のようなお子様にとってこれは少し高尚すぎ、そして眠すぎる映画であった。
愛する人を喪失した男の前に喋るカラスが現れるという筋書きはおそらくポーの『大鴉』を下敷きにしたものだろう。断片的で詩のように流れていく映像は『ツリー・オブ・ライフ』以降のテレンス・マリック映画に近い。ほほう、なんだかちゃんとした大人の映画ですなぁ。こういう映画は然るべき人が然るべき時に然るべき評価をしてくれることだろう。そんなもん人間いつかは死ぬもんなんだから誰かが死んだぐらいでこの世の終わりみたいに懊悩しないでいいんだよ人がメソメソ悩めばブンガク的な映画になるとか勘違いしやがってなどと思ってしまう知性も繊細さ批評眼もまるで持ち合わせていない俺としてはあれこれ言わずただ眠かった、とそれだけ言うに留めておきたい。あとすいません邦題に騙されたと付け加えさせてください。