極私的アマプラおすすめホラー10選(2018年8月版)

暑いのでなんとなく寒冷系ホラーの本数が多くなったアマプラホラー選。南極とかベーリング海とか。
前のは極私的アマプラおすすめホラー映画10選+1(2018年2月版)

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『遊星からの物体X』(1982)

極私的と銘打っておいてそんな超定番を頭に持ってくるとか人として恥ずかしくないのだろうかと俺の中のもう一人の俺が苦言を呈しているが今秋デジタルリマスター版でリバイバル上映もされるそうなのでまぁ、いいじゃないですか記念ということで…どこが記念なのかわかりませんが…。

その説明も必要なのかどうかわかりませんが一応書いておくと南極観測基地をへんげ自在のエイリアンが襲う映画。知らない人は『エイリアン』の舞台を南極基地に移し替えてG的に神出鬼没なエイリアン(ゼノモーフ)の恐怖特性をなんにでも擬態可能な不定形エイリアンの恐怖に変換したものを想像すればだいたい合ってる。
それ以上の説明は野暮になるしピンからキリまで大量の感想・批評・レビュー・悪口・ポエムがネットには転がっているはずですからネタバレ等々知りたければそういうのを読んだらよろしい。読まないで観るのがいちばん良いと思いますがね。

『E.T』と同年公開だったことから客入りの悪さについて監督のジョン・カーペンターは「みんな友好的なエイリアンが見たかったんだ…」みたいな感じで分析しているが、でも完全非友好な『エイリアン』が79年の公開で大いに話題になったわけだからそれはなんか違うくねぇかと思わなくもないがまぁ別に、どうでもいいのですが…。

ちなみにこちらも今やSFクラシックな『ブレードランナー』も82年公開で興行が見事コケてるので、82年という年は映画史上の名作SF映画が何本も公開されているが興行的打率はそんな高くなかった(っぽい)ので環境的に恵まれていたのか恵まれていなかったのかよくわからない。


遊星からの物体X (字幕版)[Amazonビデオ]
※リメイク的前日譚の遊星からの物体X ファーストコンタクト(字幕版)も今のところアマプラで見れる。

『ペットセメタリー』(1989)

本当は続編の方が好きなのでそっちを推したかったが残念ながらアマプラに入ってなかったので仕方なく1作目(仕方なくと言いつつ1作目の方がたぶん絶対面白いとは思う。面白いと好きは違う)
どういう理屈か知らないが死体を埋めると蘇生するとまことしやかに囁かれるご近所ペット霊園のそのまた奥にあるネイティブ・アメリカンの儀式場&墓地。
それだけ書けばもうどうなるか大体わかると思いますがその近くに引っ越してきた一家がついつい出来心で死んだなにかを埋めちゃったら…という映画。

古くは『私はゾンビと歩いた!』、『ペッセメ』と近い制作年でいえば『バタリアン・リターンズ』とかの悲哀系ゾンビ映画の定番かつ秀作的ポジションで、スティーヴン・キング原作映画の成功例としてもよく言及されたりする(キング原作映画は言われるほど玉石混淆だと思ってないので個人的には賛同しかねますが)

恐怖演出自体はそれほど怖いものではないかもしれないが、なにが怖いって一度禁忌を犯したらその魔力に取り憑かれて後に引けなくなってしまう平凡人のハートの弱さと、大事なものを失った時にその喪失を受け入れることのできない悲しさが、怖い。


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『ウィッチ』(2015)

というわけで怖いのは超自然の脅威よりも人間のこころの弱さだシリーズ最新版。
17世紀のニューイングランド。異端信仰のかどで(しかしそれが本当に異端信仰だったのかどうかは描かれない)村落共同体から追放され魔女が棲んでそうな森の近くで単独生活を送る羽目になった不幸な一家に更なる悲劇。大事にしていた赤ん坊が忽然と消えてしまい、恐慌を来した一家は犯人捜しと家庭内魔女裁判に突き進んでいくのであった…。

敬虔真面目な平凡人が、それも悪意なき善意のつもりの敬虔真面目な平凡人こそがめっちゃ怖いというお話ではありますが禍々しい音楽と陰鬱な映像、粘性の恐怖描写もめっちゃ怖いのでストーリーだけじゃなくて全体的にめっちゃ怖い。怖いしそれに厭さがすごい。

17世紀の魔女恐怖が現代にまで続いていることを示唆するエンディングがまた厭全開なのですが、それが一方でカタルシスに満ち満ちてもいるのだからアンビバレント、なんかえらく動揺されられてしまう映画だった(これにまったく動揺させられない人もいるだろうという点も動揺のゆえんだ)


ウィッチ(字幕版)[Amazonビデオ]
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『ゴーストシップ』(2002)

真面目系な人間怖い映画が続いたので今度はスカっと楽しいダーク・キャッスル印のお化けホラー。
ウン十年前に消息を絶った客船が突如としてベーリング海に出現。金の匂いを嗅ぎつけたサルベージ隊が早速船に乗り込むが案の定幽霊船だったのでだいたい死ぬ。

冒頭のダンスパーティ大虐殺が最高にして最高潮。人がいっぱいダイナミックに肉片化するシーンを頭に持ってくる映画がつまらないはずはないからその時点で傑作決定。さすが『13ゴースト』に続く初期ダーク・キャッスル映画。
その後はろくなショックシーンがなかった気もしましたがでもいいんだ冒頭でこんなに景気のいいスプラッターが見れたから。いいんだ…。

おもしろい趣向として船の座礁を回避するために船底に穴の空いた幽霊船を修繕する結構本格的な海洋パニック映画的要素がある。
幽霊船なんだから放っといてさっさと逃げた方がいいと思うが、このサルベージャーたちは金のために幽霊船から離れようとしないばかりか直してしまうという皮肉。

それがストーリーにも絡んできたりするのでよくできた映画だなぁと思いつつ、ちょっとこぢんまりと上品にまとまり過ぎている気もしないでもない。


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『トライアングル』(2009)

映画データベースのIMDbで『Ghost Ship』を検索するとこの『トライアングル』の方も引っかかる。
そんな原題だったかなぁと思ったらこれはフィリピン公開時の英語題らしい。おもしろい偶然もあるもの。

それにしても。フィリピン英語題が『Ghost Ship』になったのは遭難幽霊船を舞台としたスラッシャー映画だからでしょうが、こういう内容の映画を『Ghost Ship』として観たフィリピンの観客はたぶん恵まれていて、アマプラの商品説明でも(そしてソフト題でも)軽くネタバレをかましているのでもったいぶってもしょうがないのですが、『Ghost Ship』のタイトルだけ頭に入れて観た方がたぶんおもしろく観れるんじゃないかとおもいますよねこういうのは。

というわけで詳述自主規制。『0:34 レイジ34フン』とか『サヴァイブ 虐殺の森』の監督:クリストファー・スミスらしい陰鬱な雰囲気と捻った展開がおもしろいスミス版『ゴーストシップ』です。


トライアングル(字幕版)[Amazonビデオ]
トライアングル(吹替版)[Amazonビデオ]

『ジョーズ4/復讐篇』(1987)

ある意味これも海洋スラッシャー映画なジョーズシリーズ完結編。1作目は遠いむかしに一度きり、2作目は見たことがないのでストーリーの繋がりがよくわからなかったが、どうも1と2で巨大サメと戦ったロイ・シャイダーの妻ロレイン・ゲイリーが今度の主人公。

夫は死んだがサメも死んだ。これからは平穏な余生を…と思っていたらやっぱり今度もサメ出現、最愛の息子が食われてしまう。
悲しみも癒えぬまま長男の待つバハマに飛んだロレイン・ゲイリーだったがそこにいたのは…サメ! サメ事件呼びすぎだろう名探偵コナンじゃあるまいし。

なにやら評判がたいへん芳しくないようですがサメセンサー(心電図みたいなSEが恐怖を煽る)を駆使した『エイリアン』的サスペンス、その手があったか沈没船での『13日の金曜日』的建物内サメ攻防、サメ映画史上の名作『ディープブルー』に先んじてサメと戦うバトル黒人にマリオ・ヴァン・ピーブルズ、その父でブラックスプロイテーション映画のゴッドファーザー的なメルヴィン・ヴァン・ピーブルズもゲスト出演とかなり見どころ満載な感じ。

意外に大人な人間ドラマとマイケル・ケインの存在感(出てるんですよ!)、パニック映画の名匠ジョセフ・サージェントのツボを外さない演出も手堅い、結構ちゃんとした映画だとおもうんだけどなぁ。


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※『4』と並んで評判の悪いジョーズ3(字幕版)も今のところアマプラで見れる。

『ウィジャ・ビギニング 呪い襲い殺す』(2016)

インパクト絶大なすごい邦題が内容よりも話題になってしまった感のアメリカン・こっくりさん映画『呪い襲い殺す』の前日譚。
前作からだいぶ遡って50年代末ぐらい、インチキ霊媒で生計を立てていた母と娘二人(フォックス姉妹をイメージしたと思われる)のもとにひょんなことから呪いのウィジャ・ボードが。

監督のマイク・フラナガンは『人喰いトンネル』とか『オキュラス 怨霊鏡』で注目を集めてステーヴン・キング原作のネッフリ映画『ジェラルドのゲーム』で爆死した人。
大きな効果音を急に鳴らす系のびっくらかし演出なんかよりも湿った不気味ムードの醸成と人間ドラマに重きを置いたJホラーの影響も顕著な作風で、どのくらい顕著かというと『ウィジャ・ビギニング 呪い襲い殺す』には御札が美術小道具として壁に貼ってあるし、『人喰いトンネル』では主人公の家に仏壇があって南無妙法蓮華経と唱えたりしていた(『人喰い』はちょっと諸星大二郎的なところもある)

というわけでアグレッシブな邦題に反してアメリカンでハイテンションな怖いシーンはあんまなし。その代わり天井からぶら下がった首吊り死体の揺れを壁に映った影でじぃーっと見せる等、実にイヤァな感じの恐怖が多発。
ハレーションを多用した昼のシーンは冥府のようでとっても現実感がない。インチキ霊媒の設定が演技と憑依の境を溶かしてしまって常に何かが起きるんじゃないかと落ち着けない。

繊細で薄気味悪い、ついでに人間の業も感じさせてくれる丹念に作られたアメリカンJホラーって感じで面白かった。


ウィジャ ビギニング ~呪い襲い殺す~ (字幕版)[Amazonビデオ]

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『富江』(1999)

かわいそうな富江。望んでそんな風に産まれたわけじゃないのにバケモノバケモノといじめられて殺されて。
それではあまりに不憫だから自分だけは富江の味方でいてやろうと思う男どもがいる。でも富江はバケモノだからそんな甘っちょろい愛はゴキブリのように食い荒らしてしまうのだ。
そのようにしか生きられない富江。そして男どもは一様にこう言う。バケモノめ! あぁかわいそうかわいそう、こわいこわい。やっぱり独身が一番だ…。

異形まんが家・伊藤潤二の原作映画化第一弾で『DOOR』(脚本)の及川中が監督した貞子に続け的な魔性系ホラー。
事故で記憶を失った中村麻美の住むアパートに気味の悪い学生が越してくる。なにかを育てているらしいが詳細不明。
まぁいいか、そんなことよりも記憶を取り戻さなければ。精神科医・洞口依子の手を借りて失われた過去に近づいていく中村麻美。
だが過去に近づくにつれて学生の育てるなにかも中村麻美に…的な。

一応絶世の美女設定の富江が菅野美穂で、あくまで俺の感覚ですが菅野美穂まったく全然絶世の美女に見えないのですが、あの平面的で目力の強い漫画顔にはなんとなく富江のリアリティがあるので不思議なもの。
無垢と残酷と甘えと怒りと不安と狂気が落ち着きなく入れ替わる菅野富江の情緒不安定な少女っぷりを見ていると、散々酷いこともしているがやっぱり同情してしまうのだからおそろしい。

メランコリックなストリングスにチープなヴォコーダーが乗るテーマ曲が切なくて不安で、そこはかとなくノスタルジックで心地良い。
この心地よさはどろーんと自我の内側に沈み込んでいく危うい心地良さだ。危うい。ちょっと動いたら腕が折れそうな中村麻美の華奢い危うさ、その担当精神科医は洞口依子でこれまた別の意味で危うい、富江を追う刑事の田口トモロヲ…は危ういというかヤバい。

しかしそのヤバさの中には富江に憑かれた人間のかなしさが垣間見えるのだったというわけで、世紀末的な猟奇趣味とメランコリーの横溢する狂気の癒やし系メルヘンとでも言えそうな、個人的には90年代Jホラーの中でも相当好きな忘れ難い映画。
(余談ですが中村麻美の恋人役の草野康太というと超大作サウンドノベル『街』の篠田正志として90年代ゲーマーに記憶されるが、その『街』で篠田正志が萌えていたサド女子高生・水曜日を演じた留美は『富江』にも出ていた)


富江[Amazonビデオ]

『残穢 住んではいけない部屋』

富江の次は残穢。語感が似ている映画は内容もなんとなく似ているので、こちらも呪いの増殖と連鎖・拡散が物語の大きなポイント。
これ怖かったなぁ。家では絶対に見たくない感じだし、見るとしてもワンルームで壁を背にして見たい。

公開時にレイトショーで映画館に観に行ってそんときは平気だったんですよ、観ている間は。
でもその後でアパートに帰って自分の部屋に入る時にめっちゃ躊躇いましたよね。家に憑く呪い、部屋に憑く呪いが描かれる映画だからなんですけど、その見せ方が本当にいやらしくて絶対に隣の部屋になにかが居る、でも勇気を振り絞って扉を開けたら居ない、居ないのだけれどもなんらかの気配と痕跡が…っていうじらし演出がじわじわとメンタルを蝕む。

OV系ホラーを長年手がけてきた中村義洋の面目躍如。『アヒルと鴨のコインロッカー』とか『予告犯』で有名監督の仲間入りをした人ですが、やっぱ本領を発揮できるのはホラー映画じゃないかと思うのでもっとホラー、獲って欲しいなぁ。

お話の内容は実話系怪談作家の竹内結子が読者の橋本愛から引っ越した部屋で起こっているらしい怪異の相談を受けたことに端を発する呪い探求ミステリー。
橋本愛の生真面目さ、ええ感じに怖さに貢献していたとおもう。たぶん唯一の息抜き要員だった佐々木蔵之介の軽妙な演技もおもしろかった(その役名は平岡芳明という。平山夢明のもじりだ、ははは)


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『へんげ』(2011)

とみえ、ざんえ、と来たら語感的に『へんげ』を持ってきたくなる。というわけで『へんげ』。アマプラには他にも『リング』も『らせん』もあるので三文字和ホラーが充実してる。
一応言っておきますが限りなく自主映画に近い底予算の商業映画なのでこれまでに挙げたどの映画よりも作りが安いしあとこわくない。

その点だけ留意のうえで見ればおもしろい『へんげ』。言ってしまえば『エクソシスト』と『鉄男』をくっつけたような映画。
平凡な夫婦の夫が原因不明の奇病を発症、段々と肉体が異形へんげ。ストーリーそれだけ。本当は『エクソシスト』と『鉄男』に加えてあともう一本べつの映画を付け足したいがそれは見てのお楽しみ。

まあ潔くていいっすよね。おもしろい映画のおもしろ要素を三つくっつけて50分。浮気がどうとか隣人との確執がどうとか病気の原因がどうとかそういう余計なサイドエピソードには脇目も振らず、奇病に端を発する一組の夫婦のフィジカルとメンタルの“へんげ”一本で最後まで爆走。気持ちのよい映画だ。凄惨な殺しはあれど最後はイエーって感じになる。

監督の大畑創という人は卒業制作の中編『大拳銃』で注目された人で、『大拳銃』もやっぱこんなというか、ぶっちゃけ俺は『大拳銃』の方が全然おもしろかったのですが、物質との関係や物質的な変化がどう人間性を変化させるかということがおもな関心事っぽい。

『大拳銃』は闇拳銃を生産しているうちにその魔に取り憑かれて破壊的な奇形拳銃を作り始める兄弟を描いたフェティッシュなノワール。
『へんげ』もまたデヴィッド・クローネンバーグ的な、あるいは『遊星からの物体X』的な肉体変容とそれに伴う人間性の崩壊、破壊の快楽についての映画だった。
なお特技監督は現代特撮の雄・田口清隆(ネタバレのようになってしまうスタッフ紹介)


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