【ネッフリ】『すべての終わり』感想文(ネタバレなどない)

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《推定ながら見時間:35分》

妻が身ごもったのでいよいよ腹をくくらんといけなくなった主人公の法律関係の人がぼくたち結婚しまーすの一言を口のできるだけ奥の方に含んで妻の両親に会いに行くと明日の舅が元軍人のフォレスト・ウィテカーでもう明らかに無理な感じである。

俳優経歴的には元食人大統領アミンでもあったフォレスト・ウィテカーなので独裁的圧迫ディナーっぷりが酷い。間違った答えを選んじゃったら即粛清な小言の連続についついぼくたち結婚しまーす妻は妊娠してまーすを呑み込んで、代わりに妻はお前のことぶっちゃけ嫌いなんじゃないですかね的な最悪の粛清返答を吐き出してしまう主人公の法律関係の人。

アミンの怒りで全米が粛清された。信じられない大地震、信じられない大津波、信じられない大自然火災、信じられない大ゲリラ豪雨、信じられない大停電、信じられない大情報遮断、信じられない人間たちとすべてを覆う灰の雪。

既にして最悪なのにどうしても娘に会いに行くと言い出すフォレスト・ウィテカー。ここはニューヨークらへん、娘はサンフランシスコ、飛行機は飛ばない。どうするか。車で行くしかねぇだろう、義理の息子と一緒に。
とんでもない展開になってしまって心からアミンお義父さんに勝てもしないケンカを売ってしまったことを悔いる主人公の法律関係の人であった。

そんな愉快な感じの映画では断じてないがストーリー的には別に嘘を書いているわけではないお馴染みネッフリ映画の終末もの。何度地球と人類を壊せば気が済むんだ。終末の頻度が高すぎるだろうネッフリ映画。

その中身はというとたぶんこれは『性本能と原爆戦』の順当な現代アップデート版で、同級生の女の子の代わりにフォレスト・ウィテカーと初期終末世界を巡るマイルドな『ドラゴンヘッド』で、ガソリンを求めての地味なカーチェイスとか結構あるからバイオレンスの振り切れない現実路線の『マッドマックス』みたいな感じとつまり要するにすごい堅実真面目で目新しさとかびっくりポイントとかゼロ。

これはちょっと色んな意味で厳しいのではないかと思われますが個人的にはお気に入る。いや俺こういうのがちょうど見たい終末世界だったんですよ。
世の中には色んな終末映画がありますがその源イメージの一角を成す『世界が燃えつきる日』…ではなくてその原作のロジャー・ゼラズニイ『地獄のハイウェイ』、直接的な影響は不明も『ニューヨーク1997』と『マッドマックス』の下地ぐらいは確実に用意したであろう最上級のB級SF『地獄のハイウェイ』の、あのオーソドックスな終末世界の相似形があったんですよ『すべての終わり』。

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『地獄のハイウェイ』は67年発表だから直接その世界を映像に落とし込むには技術的に時間を要した、でも年月を経るとそのイメージはどんどん古くなっちゃってそれだけじゃ成立しなくなっちゃった、ってんでみんな『地獄のハイウェイ』的な世界にゾンビ付け足したり暴走部族を付け足したり色々工夫するわけじゃないすか。

でもこれそういう工夫とかほぼないからな『すべての終わり』。それなりに金をかけてこんな先祖返り的な終末世界が最新技術で描写されるっていうの嬉しくなってしまいますよね。褒めているのだか貶しているのだか微妙な文章ですが…。

そういうところがまず面白かった。あと面白かったのは『地獄のハイウェイ』とかだったらサバイバル最優先なピカレスク的主人公がアンチヒーロー的な格好良さを帯びますけど、これは主人公の法律関係の人がフォレスト・ウィテカーの指導を受けてどんどん逞しくなって終末世界でのサバイバル術を身につけていくにつれて、別に格好良くならないばかりか逆にどんどん嫌なやつに見えてくるっていう。

妻(娘)に会いたい一心で地獄のハイウェイ横断旅行に出た二人は道中で諸々失って諸々奪っていくわけです、出会ったやつらから。
『すべての終わり』っていうタイトルは全然冴えないけれども内容はよく表してると思っていて、家族愛とか夫婦愛を錦の御旗に掲げて冥府魔道に入った人間がそれゆえ最後には人間性を失ってしまうみたいな逆説がこの映画にはある。

それをヒロイズムで糊塗したりしないから主人公の法律関係の人が嫌なやつに見えてしまって感情移入できないしあと全然盛り上がらない、映画として。
でもそういうドライに計算されたものとして見ると感情的にはノレないけどやっぱちょっと捨て置けない魅力も感じたりする。

人殺しも厭わないガソリン強盗がそこら中を走り回っているかと思えば普通に家族を乗せてのんびり逃避行中のオッサンもいたりする微妙なリアリティ。その会話の糞おもしろくなさ。
じっくり間を取って疑心暗鬼の緊張感があるが誰も気の利いた感じの台詞を言わないしだいたい基本イベント的なやつが起こらない。リアリズムです。

主人公とフォレスト・ウィテカーが途中で立ち寄る自主封鎖された小さな町に、ピックアップ・トラックの荷台に乗った汚いランニングシャツ姿の私兵たちがいる。
特になにをするわけでもないがこいつら実に不穏な雰囲気を漂わせていて、これが非常によかったのですが、映画全体が不穏な雰囲気を漂わせるだけで結局なにもしてこないっていう肩透かし感がある。

それも含めて個人的には好きな映画なのですがその肩透かし感ネッフリオリジナル系の映画にありすぎなのでまたこれかよっていうツッコミは入れておきたい。

【ママー!これ買ってー!】


地獄のハイウェイ (ハヤカワ文庫 SF 64)

クライマックスの暴走族バトルはやっぱ『マッドマックス2』に影響与えたんじゃないかとずっと思っているがどうなんすかね。『怒りのデス・ロード』の大嵐とかあのへんも。

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