極私的アマプラおすすめホラー10選(2019年4月版)

2019年4月現在アマゾンプライム特典で観られるホラー映画から面白かったやつを10本厳選。うそほんとは全然厳選してません。ホラーでジャンル検索するとアマプラジャングルの奥深くにはまだまだ秘宝が埋まっているようだがそこは手つかず。
今度暇があったらそこらへん漁ってみようと思います。なんかすごそうなのあるんだよ、『地獄のサティアン』とか『鉄腕少年バイオニック・キッド』とか。もはやホラーなのかどうかもよくわからないが…。

『サプライズ』(2011)

お金持ち家族が田舎に買った邸宅で団らんかつ険悪ムードな晩餐会を楽しんでいたらショック! 窓からボウガン! MAN WITH A MISSIONみたいなアニマルマスクを被った謎の武装グループの襲撃を受けてしまうのだった。
警察に電話をしようにも妨害電波が出ていてかからない、逃げようにもブービートラップが仕掛けられていて迂闊に動けない。お金持ち一家のご子息のパートナーとして現場に居合わせたヒロインの運命やいかに。そしてアニマルマスクのMISSIONとは…。

後に英語実写版『デスノート』を手掛けてツイッターが炎上、アカウントを凍結してしまったアメリカン・ホラーの俊英アダム・ウィンガードがその名を知らしめた作品で、ジョン・カーペンターの初期作を思わせる快作。
思わせるっていうかたぶんカーペンター映画を意識してたんでしょう。侵略者の不気味なキャラ造型や邸宅内の攻防は『要塞警察』みたいだし、アニマルマスクが自分の殺した死体の傍らで首を傾げる場面は『ハロウィン』のオマージュだ。

その一方でブラックユーモアを織り交ぜた激しいバイオレンス&ゴア描写は『ヒルズ・ハブ・アイズ』のアレクサンドル・アジャや『ホステル』のイーライ・ロスなどなど、ゼロ年代を席巻したスプラッタ・バック/フレンチ・スプラッターのムーブメントの影響を感じさせ、単なる古典オマージュものではなくジャンル映画の流れをきっちり押さえた上でのカーペンター映画の現代風解釈の観がある。

独自性なんか微塵もないと思うが、ともすればバカじゃねぇのの一言で一蹴されかねないシンプルかつ強引なストーリーをジャンル映画知識に裏打ちされたシナリオ解釈とパワフルな演出力で最後まで見せきるアダム・ウィンガードの手腕は見事。
最初サイコで中盤胸糞、最後は在宅応援上映間違いなしのスカっと爽やかアクションムービーに変貌する、一粒で三度+αおいしいカーペンター映画最新アップデート版です。


サプライズ(字幕版)[Amazonビデオ]

『スケア・キャンペーン』(2016)

素人強制参加型の過激なホラードッキリ番組が大人気。シーズン3ぐらいに入ってますます洒落にならないドッキリを仕掛けていくクルーたちだったが、局の偉い人から厳しい現実が。お前らもう飽きられてるよ、こいつを見なよ。
局の偉い人がクルーに見せたのは件のドッキリ番組に影響を受けたバカどもがネット配信したドッキリスナッフ動画。実際の人殺しにゃあ勝てないね、で、あんたらどうするの? 局の偉い人に焚きつけられたクルーたちは意地を見せようと更なる過激ドッキリの撮影に入るのだったが…。

またしてもアニマルマスクの殺人集団がやらかしてしまう映画だがこちらは襲われる方もやらかしているので狂気と凶器が眼前に迫っているのに撮影を続けてしまう。ある意味、もうひとつの『カメラを止めるな!』みたいな映画である。観ているこっちの心情としては『カメラを止めろよ!』って感じですが。

なにはともあれ二転三転するドッキリ合戦が見物。「うっそー!」「はいそれもうっそー!」「またまたうっそー!」みたいな延々続く小学生感には驚かされつつも呆れさせられる。
そのうちどうやら本当の殺し合いが始まってしまう(?)が、ドッキリ合戦ですっかり感覚が麻痺しているので何が起っても怖く感じられないというのがミソ。逆にその感覚に怖くなってしまう、ちょっとだけ知的なスプラッター映画だった。


スケア・キャンペーン(字幕版)[Amazonビデオ]

『クラウン』(2014)

人を殺すために仮面を被る不届き者がいればうっかり仮面を被ったがために人を殺さざるを得なくなったかなり残念な人もいる。
殺人ピエロものはリアル殺人ピエロのジョン・ウェイン・ゲイシーを擁するアメリカではホラー映画のサブジャンルとして定着しているが、この『クラウン』はその中でもちょっとした異色作で、殺人ピエロの恐怖ではなく(それもあるけど)ピエロ仮装の魔力で徐々に狂っていく男の恐怖にスポットライトを当てる。

剥がれなくなった呪いのピエロ仮装を身につけたまま仕事に向かったりする前半の、日常が静かにしかし確実に壊れていく感じが怖い。同時に切なくもある。
似たような設定で現代ゾンビ映画の生みの親ジョージ・A・ロメロが『URAMI~恨み~』という映画を撮っているが、そちらがAの名がそうさせるのか藤子不二雄A先生風のブラックユーモアが基調になっていたのに対して、『クラウン』が基調としているのは自分が自分でなくなっていくことの悲劇。

後半になるとそれなりに派手なスプラッターシーンも多く出てくるが、だから一番痛かったのは男が仮装を剥がすために自分の首筋に電動カッターを当てるセルフスプラッターな描写なのだった。


クラウン(字幕版)[Amazonビデオ]

『ディセント』(2005)

自動車事故で家族を失った友の悲しみを癒やすべく仲良しグループが洞窟女子会を開催。まぁ大自然の中で身体を動かしてりゃ頭のモヤモヤも晴れるっしょぐらいにみんな考えていたが、ショック! 突入した洞窟がガチ迷宮でかつ落盤で出口封鎖! 逆に全員の頭がモヤモヤしてきてしまう。
だがともかく動かなければ前には進めない。至る所に大自然の即死トラップが仕掛けられた洞窟内を大いに仲違いしながらアドベンチャーしていく女子会一行は、やがてそこに棲まう何かの影を察知する…。

現在リメイク版『ヘルボーイ』の降板騒動でなにやら揉めているらしい『ゲーム・オブ・スローンズ』にも参加した英国ジャンル映画界の雄ニール・マーシャルの出世作で、ホラー業界にプチ洞窟探検映画ブームを巻き起こしたような巻き起こさなかったような微妙な快作。
よく出来ているので取り立てて言うことがないというと面白のかつまらないのかよくわからないが、でもよくできてるんですよ本当に。優等生映画。

洞窟探検のドキドキ☆アドベンチャーがあってさ、その中での探検隊の諍い★サスペンスがあってさ、しかもクリーチャー♡ホラー要素まであるときたもんだ。
一歩間違ったら奈落の底に落ちるゲテモノ素材を破綻なくまとめて綺麗にオチまで付けてるのはすごいよ。ニール・マーシャルの次作『ドゥームズ・デイ』はゲテモノ素材を煮込んでいたらメルトダウンを起こしてしまったからな。いやまぁぼくはそっちの方が好きではありますが。


ディセント(字幕版)[Amazonビデオ]

『ディープ・サンクタム』(2013)

どんな酷い目に遭ってもあまり同情できなさそうな男女混淆軽薄若者ズが人里離れた隠れビーチでバケーション敢行。
酒とドラッグでどんちゃんやったり女関係で微妙に不穏な空気が流れたりする中、参加者の中で一番一緒にバケーションとか行きたくない粗野なアクティブ男が海辺に洞窟を発見。
とりあえず来いよっていうんで全員装備なしで軽はずみに足を踏み入れたところ…後はもうわかるでしょ?

低予算映画と言っても『ディセント』はセットを組むぐらいの予算はとりあえずあるわけですが、こちらの洞窟探検映画はそんな予算すらない地底予算映画なのでリアルな洞窟にリアルに入って(ほぼ)全編POV撮影。
しかもその洞窟が予算規模に合わせて(?)とにかく狭い。奥行きはあるが基本は中腰じゃないと歩けないし、這って進むような箇所も多数。岩肌はトゲトゲしていてちょっと探索するだけでもバンドエイドを何枚消費することになるのかわからないくらいだ。

その身のこなしからするとまぁなにかエクストリームスポーツとか洞窟探検とか普段からやってる人たちなんだろうとは思うが、こんな狭くて危ない洞窟を出演俳優たちはなんの躊躇もなくズンズンと進んでいくのだから閉所恐怖症者は大恐怖。観ているだけで息が苦しくなってくる。
ストーリー展開は定番もロケーションのヤバさとPOVスタイルが効いていて、仲間割れやお食事のシーンは同傾向の映画の五割増しの禍々しさ。海水が激しく流入する沈水洞窟の部分にノン救命具で飛び込んだりするシーンは単純に超びっくりして心配になる。

その命がけのリアリティの追求っぷりは他の洞窟ホラーの追随を許さないものがあった。なんだか地味にすさまじい映画である。


ディープ・サンクタム(字幕版)[Amazonビデオ]

『ゲット・アウト』(2017)

典型的リベラル白人っぽいガールフレンドに連れられて主人公の黒人男性がお邪魔したのはこれまた典型的リベラル白人っぽい家族の棲まう南部のお屋敷。
怪しい。オバマ大好きアピール、反共和党アピール、人種差別ダメ絶対アピール…確かに悪いことは言っていないかもしれないがアピールし過ぎてなんだかぎこちない感じである。
おまけにこのお屋敷で働く黒人庭師や黒人メイドはなんだかカルト宗教の人みたいな目をしている。怪しい…一体ここでなにが。その答えは想像を絶する冗談みたいなものであった。どうなる黒人男性。

ホラーというよりはホラ映画な奇想系ブラックユーモア編。どこまで本気なのかよくわからない恐怖演出が実に奇妙な味で、例を挙げれば、こう、なんとなく居心地の悪い主人公が夜中にお屋敷の外でタバコかなんか吸ってるわけですな。
すると向こうに黒い影がひとつ。目を凝らすとどうやらこの屋敷の黒人庭師のようだ。でそいつがこっちに向かって物凄い形相で全力ダッシュ。突然のことに驚き悲鳴を上げる主人公。ぶつかるか、と思われたその瞬間に庭師、急ターンしてどこかへ去って行く。
その翌日、庭師は主人公に詫びる。「驚かせてすまない。運動は身体にいいからね」あまりに意味が分からなくて普通に怪物とか殺人鬼が出てくるより全然こわい。

ハートのもやもやが止まらない奇妙な味で引っ張っていくが最後はちゃーんと気分スッキリなアクション展開。コメディリリーフのリル・レル・ハウリーも良いアクセントになっていて、構成が見事。突拍子もないアイディアもおもしろい、不穏にして楽しいホラー映画だった。


ゲット・アウト(字幕版)[Amazonビデオ]
ゲット・アウト(吹替版)[Amazonビデオ]

『デス・ルーム』(2006)

すっかり寂れたハリウッド撮影セット・ツアーに参加したなんだか癖のある男女数人。老ガイドがこのセットは呪われていて…と語る怪奇屋敷があったので一行は老ガイドの忠告も聞かずに中に入ってみる。
果たしてそこは呪われた撮影セットであった。その中心部である百物語部屋に閉じ込められた一行はかつてそこで鬼畜な百物語撮影を行っていたホラー監督の霊を鎮めるべく一人一人信じられない経験を話し始める。果たして一行は呪われたセットから抜け出すことができるのだろうか。

ジョー・ダンテ、ショーン・S・カニンガム、モンテ・ヘルマン、ケン・ラッセル…とジョン・ゲイター(『マトリックス』の特撮監修の人らしい)という大物映画監督が一堂に会した、もうひとつの『マスターズ・オブ・ホラー』と言うべきお祭りオムニバス企画。音楽が川井憲次、出演がジョン・サクソンに石橋凌にディック・ミラーにと監督以外もジャンル映画的豪華布陣。
 
そのわりにはぶっちゃけ全然面白くないのでガッカリ感が半端ないが、たぶん作り手の狙いはそこにはなかったんだろう。
セックスと狂気に関するヤマもオチもないようなハリウッド怪談5連発は『残酷の沼』や『夢の中の恐怖』等々のオムニバス・ホラーを彷彿とさせて、ほぼほぼ失われたジャンルと言っていいオムニバス・ホラーのチープで奇妙な味を現代に蘇らせようとしたように見える。

ひとつひとつのエピソードは大して面白くはないが通しで観れば色んな監督の色んな作風が見れてなんとなくお得感があるのがオムニバス・ホラーだ。似たような企画でいえばジョン・カーペンター×トビー・フーパーの『ボディ・バッグス』もそんな感じだった。
映画としては面白くないが企画としては大変面白いと思うので個人的にはお勧めしたい。そういう映画を一般的には企画倒れと呼ぶことも知っていますが…。


デス・ルーム(字幕版)

『アイ・アム・レジェンド《別エンディング》』(2007)

ゾンビウィルスの蔓延により地球文明は青息吐息、すっかり荒廃し自然に飲み込まれつつあるマンハッタンで愛犬と共に暮らす科学者ロバート・ネヴィルことウィル・スミスは自分が人類の最後の一人なんじゃないか疑惑に怯えつつ、ついでにゾンビの襲撃にも怯えつつ、完全打ちっぱなしゴルフやリアルGTA的都市ドライブを楽しんだりもしつつ、ボブ・マーリーなんか聴きながらワクチンの開発に勤しんでいた。
だが二人の生存者との予期せぬ出会いがネヴィルの運命を大きく変えることに…。

荒廃した都市のランドスケープを偏愛する態度を(現代デトロイトの都市崩壊から)デトロイティズムと名づけた人がいるらしい。
ジョン・マシスンの『地球最後の男』3度目の映画化は前2作では予算的にも技術的にも限定的にしか描かれなかった人類が去った後の崩壊都市を全面的にフィーチャーしたデトロイティズム映画で、倒壊したビル群が植物の苗床として再生しヒトの代わりにライオンやシカが闊歩する生命力に溢れた終末風景がたいへんな見所になっている。

マンハッタンの一角にはかつてこの地に生育していた古植物を人工的に植え直した「タイム・ランドスケープ」なるインスタレーションのスペースがある。それをマンハッタン島全体に拡大したのがこの終末風景なのだと思えば結構コンセプチュアルな映画の観で、無人のビデオ屋に並べられたマネキン人形とか基本的にそういうビジュアル先行で作られているのでゾンビ映画というよりは終末イメージビデオ的に楽しめたりする。

アマプラでは通常エンドと別エンドの両方が配信されているが(アマプラ特典は別エンド版のみ)、通常エンドを観てから別エンドを観ると『アイ・アム・レジェンド』のタイトルの意味が180度変わってしまって衝撃なので、既に通常エンドで観た人も別エンド必見。
詳細は控えるが良いエンドなんですよこれが。原作と前2作を尊重しつつ、新しい道を模索したという感じで。


アイ・アム・レジェンド 別エンディング(字幕版)[Amazonビデオ]

『アイアムアヒーロー』(2015)

こんな世界なんかいっそ終わっちまえばいいのになぁと心の内でいつも思ってそうな底辺漫画アシスタントの鈴木英雄は使うアテもないのに猟銃を保持してる危ないヤツ。
大丈夫かお前、『タクシードライバー』みたいになっちゃわないかお前。心配になるが大丈夫、英雄が終わる前にゾンビパンデミックが起って世界の方が終わってしまったのだった。戦え英雄! 今こそ猟銃の出番だ!

花沢健吾の人気コミックを諸々端折って王道ゾンビ映画として再構築した和製ゾンビ映画のメルクマール。基本的にはロメロ直系の欧米産ゾンビ映画のパッチワークだが、そのパッチワークが日本映画で普通にやれてしまったことの衝撃はめちゃくちゃ大きい。
こんな内容のゾンビ映画は世界中に腐るほどあるが今までの日本映画にはなかったから…こんな内容といってもラストのゾンビ大虐殺シーンは世界的にもあまり類例がない壮絶なもの。そこだけでもう150点オーバー満点です。

監督の佐藤信介はこの映画でも組んでる特殊造型・藤原カクセイ、アクションコーディネイト・下村勇二のコンビで以後アクション系の漫画原作映画を何作も手掛けることになる。


アイアムアヒーロー[Amazonビデオ]

『悪の教典』(2012)

見た目はハンサムだし性格は優しいし運動もできれば頭も良い。蓮実先生(伊藤英明)は生徒から絶大な人気と信頼を得ている満点高校教師だ。
だがちょっと待て、それはいくらなんでもパーフェクト過ぎないだろうか。というわけで微妙にクラスから浮いた微悪ガキどもが疑念を抱いているとそこに蓮実先生に嫉妬した陰険教師が合流、彼が持ち前の陰険さでもって独自調査したところによれば蓮実先生の経歴にはどうも怪しいところがあるという。
いったい蓮実先生とは何者か。それから学園の平穏は徐々に崩れていくのだった…。

最近は佐藤信介にその役回りを奪われた感のある三池崇史の原作もの(貴志祐介)ジャンル映画の傑作で、サイコパスティーチャー伊藤英明の冷静な狂いっぷりが最高。
誰からも好かれる理想の教師的な自分のイメージを保つことがなにより大事で、イメージが崩れるなら代わりにイメージを崩す現実の方を崩してしまう本末転倒な性格により、同僚教師も生徒の親もなんなら生徒まで躊躇なく血祭りに上げていく。

怖いなぁ。でもここまで酷くなくてもこういうヤツいるよなぁ。その陽性の狂気に一切の理屈を付けない潔い作劇がリアリティなんか皆無なはずの物語に逆説的に人間のリアリティを与えていて、キワモノの中に人間を見出す三池らしい映画になっていたように思う。
でもキワモノはキワモノなので最大の見所は学園祭に浮かれる生徒どもを散弾銃で片っ端からぶっ殺していくダイナミックな虐殺シーンです。「と…東大…」「To Die?」戦慄&爽快&大笑い。


悪の教典[Amazonビデオ]

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