映画『マスカレード・ホテル』の真犯人を考察する!(ネタバレ超あり注意)

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《推定睡眠時間:5分》

ネクストコナンズヒント的なやつを俺が勝手に作るとすれば“プライベートホテル”です。さてプライベートホテルと『マスカレード・ホテル』の関係とは…その謎が解けた時、あなたは予告編にちゃんと出てくるしポスターにもちゃんと載っているが劇中には決して姿を現さない『マスカレード・ホテル』の真犯人を知るであろう。

表向きの犯人は松たか子でした。なんでも連続殺人事件が発生、手口も様々なその犯行現場には暗号を記したメモが残されていた。
主人公の刑事・新田(木村拓哉)が解読したこの暗号は次の犯行現場の緯経度を示すもので、それに従えば次に犯行が起るのは都内の高級ホテル。

ということで新田ら捜査陣はホテルの従業員に扮して張り込み開始。プロ意識が超級のフロント係・山岸(長澤まさみ)と時に反目、時にお互いの仕事から学びを得たりしながら犯人捜しに奔走する。
そんな中、霊感持ちの設定が『来る』と被っている盲目の老婆に扮してホテルにやってきたのが松たか子で、彼女の目的は昔来たときに酷い接客をされたからとかいう接客業ホラーすぎる理由での山岸の殺害。

実は連続殺人もそのためにでっち上げた偽装工作、言わば仮面であったからハイレベルなクレーマーだが、一流のホテルマンともなれば殺人クレーマーすら一発ぶん殴ることなく穏便に対処可能というわけで事件解決めでたしめでたし、となる。表面的には。

盲目の老婆に扮した白杖の使い方がなってない松たか子は言う。わたしは直感に従うの。俺も松たか子に倣って直感に従いたい。このトリック、この映像、俺は確実に見たことがある。
どこでだろうと考えて思い当たったのはすいませんここから先は巻き添えで他作品のネタバレも入りますがただもう古い作品だからさすがにいいだろうそれぐらい許してよと思うのですが、犯人を緒形拳が演じた『古畑任三郎』の特番、『黒岩博士の恐怖』であった。

猟奇的な連続殺人が発生。手口も現場もバラバラで一見無関係な各々の被害者はたった一つの共通点で結ばれていた。検死の結果、肛門からおみくじメモが発見されたのである。
一体誰が! 誰がってコロンボ型の倒叙ミステリーだから(このエピソードだけちょっと違うが)もちろん検死官・黒岩博士が犯人なんであるが、実は黒岩博士は殺人なんか犯していない。
変死扱いされて運ばれてきた死体におみくじメモを仕込んで連続殺人をでっちあげたのだ。その目的は連続殺人に見せかけて知人を殺害するためであった。

メモを肛門に入れるか入れないかの違いはあれどトリックとしては松たか子の偽装連続殺人と同種。ここでもう一つ、注目すべきポイントが浮上する。
偽装連続殺人といっても松たか子の場合は実際に人が殺されている。闇サイトで誰か特定人物をぶっ殺したいが警察には捕まりたくない人間を募り、連続殺人の体でメモだけ死体にくっつけて各々勝手に殺してもらっていたわけだが、その第一の殺人の加害者がアリバイとして用いていたのが電話であった。

ピンと来たね。『古畑任三郎』のシーズン3、犯人役が真田広之の『その男、多忙につき(忙しすぎる殺人者)』で、真田広之がアリバイ工作に用いたのも電話、正確にはホテルの電話だったのだ。
滞在する部屋に掛かってきた電話を携帯に転送、話しながら被害者の部屋まで行き話しながらぶっ殺すというのがそのトリックであるが、『マスカレード・ホテル』において新田は客室電話の仕組みから第一の殺人の電話トリックを閃くのだ。

果たしてこの類似は一体何を意味するのであろうか…後半に続く。

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答えは鈴木雅之であった。ラッツ&スターではない。『世にも奇妙な物語』、『ショムニ』、『GTO』、『HERO』などなどフジテレビ系の超ヒットドラマを多数手掛けた“プライベートホテル”の鈴木雅之と同姓同名のドラマ演出家がいるのだ。
その鈴木雅之が演出した『古畑任三郎』のエピソードが特番の『古畑任三郎 VS SMAP』、そして『黒岩博士の恐怖』と『その男、多忙につき』。
そう、予告編にちゃんと出てくるしポスターにもちゃんと載っているが劇中には決して姿を現さない『マスカレード・ホテル』の真犯人とは…監督の鈴木雅之だったのだ!!!

…そんな下らないことを言いたいがためにこんなに文字数を使う。でもいいんです山岸さんはお客様がホテルのルールと言ってましたがブログのルールはブログ主です。俺のブログでなにを書こうが俺の勝手だろ! 俺のブログは俺が神様だろうがッ! クレーマーばかり出てくる映画だったのでついついこっちもクレーマー化してしまう。あぶない。

でもびっくりしましたよね、原作者も違うのにピンポイントで同じトリック使った『古畑』の回を演出した人が監督やってんだもん。マジどういうことなのって思うよ。
しかも使い回してる(※原作があるので正確には違いますが…)のはトリックだけじゃなくて演出もだから。

偽装連続殺人の回想シーンだけモノクロっていうのは『黒岩博士』でもやってたし、『その男、多忙につき』はシンメトリーのホテルのロゴ(井沢ホテルというホテルの井の字をロゴ化)が謎解きのキーになってたんですが、なんとこっちも執拗にシンメトリーのホテルのロゴが画面に映し出される、そのロゴが刻印されたペーパーウェイトが犯人逮捕の決め手になる!

…このフジテレビミステリーは松たか子の犯罪より遙かに謎解きのしがいがあると思うのだが、誰か事情に通じた業界の人、こうなった経緯を解説してくれないだろうか。某ダサ邦題炎上記事みたいに…。

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おもしろかったすけどね。色んな怪しい客に面倒くさい客が矢継ぎ早に投入されるからテンポ良好、そいつらの接客からヒントを得て新田は連続殺人の謎を解いていく面白の二本立てスタイル。
こういうフジテレビのドラマたくさん見てきたからおもしろかったし、なんか懐かしかったですよ。

っていうかこれ元々連続ドラマの企画だったりしたんじゃないすかね。僕はフジテレビの事情に通じていませんから一切そのへんわかりませんが、新客登場→早速クレーム→新田と山岸が反目しながらもクレーム解決→客が感謝して感動的な音楽→新田なにか閃く→新田と山岸ちょっとお互いを認める、のパターンを5セットぐらいやる平板な構成が連続ドラマの特別編集版みたいに見えたから…。

シンメトリックなフラット映像はフジドラマの映像美学か。いや撮影効率を追求した結果かもしれないがとにかく、カメラが背景に対して正面フィックスを徹底キープ。
1カ所だけドローン撮影でホテルのロビー全景を収める動的ショットがあったが他はもうほぼほぼドンとカメラ置いてその直角的な構図の中でシーンに出てくる全俳優が演技する。

カメラが動くといったらせいぜいエレベーターからエレベーターへのトラッキング、横に直列した人物から人物へのパンニング、それでそのお芝居を真正面バストショットで切って繋いでいく。
なんかウェス・アンダーソンの映画だけを映画として学習したAIが撮ったような映像である。良い意味でね。良い意味でね?

まあ良い意味かどうかは議論の余地があるとしても、俳優のお芝居を見せるという意味でこの演劇的な撮影スタイルはたぶんきっと間違いではない。
だって渡部篤郎出てきたらバストぐらいの近さで渡部篤郎見たいでしょ。俺は見たいよ。テレビドラマ的な名優怪優いっぱいで楽しかったからいいんです。テレビドラマ的な名優怪優のいつもの感あふれるお芝居を見るためだけの映画と言っても過言ではない。伝統芸能みたいなものです。

いいんです。エンディングテロップの出し方までテレビドラマスタイルだったからテレビでやれよって気はしますがテレビでやったら見ないからいいんです。テレビでやったら見ませんよこんなの! 手垢付きすぎでしょ! この部屋ちゃんと掃除したんですか!? なに、これが鈴木演出? フジドラマ美学? お前それが客に対する態度か! 話の分かるやつを呼んでこい!

個人的には、コンビニ夜勤でわけわからんやつの相手したりホテル清掃でわけわからん部屋の使い方を見たり所詮は非正規雇用のくせに糞みたいにプロ意識が高い同僚に接客業かくあるべしな説教をされてその場でバイト辞めたりとかしているので身につまされるところが多すぎてあるある的に楽しめました。

あと友情出演の明石家さんまってどこ出てたの?

【ママー!これ買ってー!】


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『黒岩博士の恐怖』収録の巻。シーズン3は比較的印象の薄いエピソードが多いが、それに先立って放映された『黒岩博士の恐怖』はシリーズの中でも屈指のインパクト。

↓原作と姉妹編(監:鈴木雅之)

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