年越し二時間スペシャル映画『マスカレード・ナイト』感想文

《推定睡眠時間:15分》

度重なる公開延期により映画館の予告編で博多華丸の「まさに、仮面舞踏会だ」とかいう(そこに「まさに」いる?)ドヤ台詞をいったい何回聞かされたかわからないが予告編といえばこの映画に付いていた本編前予告編は日本製ドラマの劇場版のものばかり、ドラマ見ない勢からすればそんなドラマあったんかいなんなんだそれの連続なのだが中でも「日本中に考察ブームを巻き起こした」との煽りナレーションに続いてタイトルの出た『あなたの番です』は「考察ブーム」も含めて完全に知らないのでマジでそれはなんなんだよであった。田中圭が主演のドラマらしいが田中圭の人気っぷりもなんなんだよ。俺はまだ田中圭のイケメン枠編入も認めてないからな。認めるとか認めないとかそういう話でもないだろうが!

さておき、その謎予告編群を薄目で眺めながら俺は思ったのだ。こんなに毎週映画館に行っているのにシネコンの大スクリーンを占拠して一日何回も上映されることになるいわば映画館的にもメジャー配給的にも目玉作品と呼べるものを全然ガチ全然知らない…ということはもしかしてそんなに映画館に行かない世の中の大半の人の方が今流行ってる映画のこととか俺よりよく知ってるのでは? 金と暇さえ払えば誰でもイスに座ってるだけで達成できる映画館通いとかいうチュートリアル級の実績など誇れたものではないがいやでも逆にっていうかそれよりもっとランクの低い最初の一歩的な実績であるところの「映画館でやってる映画を知る」すら俺いままで達成できてなかったの!?

って思うと多少の凹みがあるね。俺が映画館通いに費やした金と時間、なんだったんだろうね。思い出すなぁ、そうそう俺は昔から卑怯かつ安易な手で人より上に立ちたかったので俺だけがルールを知っている新しいゲームを学校に持ち込んでは連戦連勝で気持ちよくなり、しかしクラスメイトがルールとコツを覚えてしまうと基礎能力はこちらの方が圧倒的に低いので今度は連戦連敗で全然勝てなくなってしまいふてくされ、また別の俺だけがルールを知っているゲームを探しては…いいよそれは! それは思い出さなくていいやつ! 単に人生が虚しくなるだけのやつ!

でもね、誰しもこんな風に忘れたい過去の自分の顔ってものがあるじゃないですか。みんなその顔を大人の仮面で覆い隠して生きてるんだね。というわけで資力はA級! ほか性格と知力とモラルなどは全部まとめてZ級! の地雷客ばかりがなぜか集まってしまうセレブ界の吐き溜めホテルを舞台に仮面剥がしゲームが再び勃発! 仮面の下に猟奇気味殺人犯の素顔を隠しているのは誰だ! キムタクと長澤まさみがお前の仮面を、剥がす!!! 全然うまい前置きになってねぇよ。

それにしてもどうしてこう地雷客ばかりが来てしまうのか。最初の地雷客からしていささか地雷の度合いが酷すぎる、正体は不明だがおそらくタレントかなにかのたぐいであろうこの女性客は人目を嫌って「写真とか絵とか人の顔が見えるもののない部屋にして!」の無茶振り発注を出すのだがこの部屋なら人の顔はないだろうと吐き溜めホテル側が用意した部屋にチェックインするとキャアアアア! の悲鳴。

お客様どうされましたかと即座に駆けつける敏腕ホテル・コンシェルジュ長澤まさみが目にしたのは窓の外、ホテルの向かい側に設置された明石家さんまのビール広告看板であった…「人の顔を見ずに東京タワーだけ見たいんです! あの看板を撤去してください!」まず東京タワーぐらいこのご時世いくらでも見る方法あるだろと思うし一ホテルに別の建物が出してる広告枠の看板を撤去できると思ってるならどうかしてるだろと思うし明石家さんまの広告が目に入ったぐらいで叫びだしてしまうならかなり精神的に追い詰められているからお前が行くべきは吐き溜めホテルじゃなくて確実にメンタルクリニックだろと思うし長澤まさみも「かしこまりました、手を考えます」じゃないだろ医者を呼べよ! お客様に寄り添ってるようでむしろお客様の病気を深刻にしているぞ!

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このようにどんな無茶振り発注でもうっすらと笑顔で引き受けてしまうコンシェルジュまさみなので地雷客の皆様は増長するばかり、そりゃあ殺人犯も来ますよねなのだがこの殺人犯! そしてそれを追う警察! ホテルなのに部屋には入らずなぜかロビーでうろうろしているばかりの地雷客たち! まぁ前作もこんな感じだったしフジテレビ制作だし監督は鈴木雅之(※演出家)だしで事前に分かってはいたことではあるがテレビドラマ的な「こんなものでしょ」がすごいよな、マンションで女の死体が見つかってその事件の捜査本部に「密告者より」と題したファックスが来るところからして平成テレビドラマの中にしか存在しない特殊警察像だが、どこの馬の骨とも知れん密告者(?)のあのホテルの年越し仮面舞踏会(だせぇぇぇぇ!)に犯人来るっぽいっすよ情報を信じて捜査官およそ50人ほど投入、人死ににランクなどないがとはいえたかだか一件の殺人事件で超スケールの覆面捜査をやってしかも全然犯人の足が掴めねぇとかなんなんだよこの警察は帰れ!

ピエロの仮面をつけた客がホテルに入ってきたら一斉に確保しようとするところとか意味わからんだろ。なんで仮面=犯人だと思ったんだよ。あとそいつ普通に正面玄関から歩いて入ってきてるからどうしても尋問したかったら普通に近づいて任意同行求めればいいんじゃない? ファックスに書いてあった「犯人しか知らない情報」が犯人このホテルに来る説の根拠だそうですがその「犯人しか知らない情報」、事件現場がマンションの何号室かみたいなやつだったのでうんそれ犯人じゃなくてもバリで知れると思うグーグル検索とか使えば!

このホテルは客も従業員も誰もスマホなどの現代テクノロジーを使ったりしていなかったので時空の乱れなどに巻き込まれて未だ平成一桁年代に滞留しているのかもしれないな。その証拠に長澤まさみの腕時計は常時ちょっと遅れてるし(伏線ですと全身でアピールするような伏線である!)監督の鈴木雅之が以前手掛けた『本能寺ホテル』も理由もなくホテルが戦国時代に繋がっているというお話だった。なんでこの人ホテルばっか撮ってるの?

大いに下らないがただテレビドラマとしては結構面白く観られる。テレビドラマといったらやはりテレビ俳優の芝居を見るものですからね。やたらロビーで俳優たちに会話させてばかりいるスタジオセット志向も地雷客の実はちょっとイイ話的な小エピソードを数珠つなぎにしていく起伏のない構成も肝心の仮面舞踏会のシーンがめっちゃ適当で華がなさすぎて誰もこんなしょうもない仮面舞踏会来ねぇよっていうところもあくまでテレビ俳優の芝居をどう面白く見せるかに特化した結果と考えれば納得です。

ずっと面白い顔をしている梶原善、激きめぇ沢村一樹、すっかり能ある鷹は爪を隠す的キャラが馴染んでしまった小日向文世、いるだけでとりあえず作品に重みが出るペーパーウェイトみたいな渡部篤郎と石橋凌、ぶっちゃけ魅力がよくわからない長澤まさみ、かっこいい上に可憐な麻生久美子、見せ場が薄いのでエンドロールに入るまであんま出ている実感がなかった高岡早紀、「まさに、仮面舞踏会だ」の台詞が見せ場の頂点だった博多華丸…あとキムタク! 眼福眼福ゥ、見てくださいよこの絢爛たるオールスター・キャスト! テレビの刑事ドラマとかに絶対出てくる人たちがこんなに集まっちゃってテレビの刑事ドラマでいつもやってる感じの芝居を延々やっちゃったらテレビドラマ好きもう歓喜!

…なのか? 俺は平成で時代が止まってしまった精神のコールドスリーパーなので平成刑事ドラマなどでよく見た顔ぶれがいつものやつをやっているのを楽しく眺めておりましたが演出家的にはここで観客爆笑やろと思ったに違いない明石家さんまのカメオ出演シーンで200人ぐらい入ってたシネコンの客ただの一人も笑ってなかったぞ。そもそもキムタクと長澤まさみの掛け合わせにときめくのか今のテレビドラマ視聴者は。まぁ、いいか。俺には関係ないし! 『マスカレード・ナイト』、たのしいテレビドラマの二時間特番でした。

【ママー!これ買ってー!】


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『本能寺ホテル』なども見れば『マスカレード』シリーズ二作の独特のカメラワークが監督・鈴木雅之のスタイルであることがわかる。様式美の世界なんだねこの人の映画は要するに。あと『本能寺ホテル』はかなり下らなかったです。

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