【ネッフリ】『TWO』感想文

《推定ながら見時間:15分》

ベッドで目覚めた全裸の男女の腹部がびっくり超接合! バカなのかと思うがムードはあくまでシリアスそのものというのが逆に可笑しいネッフリ配信ジャンル映画の個人的に久々の快作。真面目なんだよネッフリ映画ってオリジナルも配信スルーも。別に真面目は悪いことではないですし真面目な内容の映画では真面目な作りも必要でしょうしそれで傑作になっている映画もネッフリにはたくさんあります。でも真面目な映画は真面目に観ないといけないからな。ジャンル映画ぐらいは気楽な感じで観させてよっていうところもありましてということでそこにぴったんこしたよねこの『TWO』は。ランタイムも71分とかだし。71分! ハリウッド娯楽映画の標準ランタイムが150分当たり前な昨今、この潔さはシビれる。ハリウッド大作1本やってる間に2回も観れるじゃんTWOだけに…。

お話も潔いもんで全裸の男女がくっついたまま扉に鍵の掛けられた謎の寝室からの脱出を目指すっていうだけ。巷でいうところの脱出ゲームだが内容は薄っぺらい脱出ゲームでも中年男女の全裸と腹部接合が加われば笑いも緊張感も生まれる。まずやはり下世話ながら気になってしまうのは勃っているのかということである。この腹部接合は脇腹をくっつけたものであるからやや患部が引っ張られる形にはなるものの全裸中年男女が向き合うことが可能である。女の方は何度か男の上に乗る形になるわけだが勃っていた場合は入ってしまう…これは緊張感があるね。そして同時にすごくバカバカしい。

更にこの男と女、わりとバカっていうか後先を考えない性格である。確かにこんな奇っ怪な状況で後先を考える余裕もないだろうが明らかにあやしいところに置かれた罠ですよと書いてある以上に罠っぽい水や食料を「どうせ死ぬんだったら飢えたまま死にたくない!」とガツガツ貪る男。見ず知らずのむさ苦しい男と肌を密着させたくないのはわかるが無理に引き離そうとしたらお互いに超痛いのはわかっているのに「離れてよ!」と叫びながら時間を置いて何度も繰り返し離れようとしてそのたびに痛みにあえぐ女。「あんたが仕組んだんじゃないの!?」「そんなわけないだろ!」の会話は二人とも真剣なのに爆笑ものだ。なのにというか、真剣だから笑っちゃうんだよね。

だがバカバカしいのは二人だけではない。一応これはまぁ一体誰がこんな馬鹿げた企みをというのを脱出方法&分離方法を模索しつつ探っていくミステリーなのでそこらへんは隠しながら書きますがその犯人、うなじに「2」ってタトゥー入れてる。何故かと言えばこの人は「2」の神秘に取り憑かれた2マニアだったのだ…って言われても感すごくないか!? 2マニアって! そりゃまぁどんな世界にもマニアはいるしどんなモノにもフェチはありますけど2っていう数字がめっちゃ好きってところから中年男女の脇腹を接合したいって発想出てこないだろ関係ないしそれ!

でそれをなんかまた例によって真剣な表情で解説するんだよ、2は最小の素数、2はフィボナッチ数、2は陰陽図…っていうか世の中いろんな数字がありますけど一般的にはそこは3じゃねぇかな神秘の数って言ったら。聖書の引用とかも出てきますけどキリスト教だったら三位一体なわけですし。でも2なんだよな。理由らしい理由も語られることなく2超やべぇって思っちゃった人が中年男女接合手術をして聖書ネタの絵画とかが思わせぶりに飾られたホテルの一室みたいな監禁部屋に入れるっていうこのバカバカしさ。ちょっとケヴィン・スミスの『Mr.タスク』を彷彿とさせたりもするがこっちはあくまでジョークなしのガチなのでバカを通り越してある種の凄みを感じさせないでもない。

とこのような映画ですが最後らへんに出てくる女性のヌードはそのバカ性に反してラファエロの絵画やミケランジェロの彫刻を思わせる美しさで、生命の儚い輝きと自由を求める力強い衝動がその血に濡れた白い肢体の捻れから迸る。エロになってないってのがこれはすごいと思ったよな。別にエロが悪いとかランクが下だとかそういう話じゃなくて基本的に女の人のヌードはエロいから普通に撮ってもエロくなるしエロく撮ろうとすればもっとエロくなると思いますけど、エロくしないで美しさだけ出すっていうのはかなり技術もセンスも熱意もいるじゃないですか。その点でこの映画を作った人はすごい。本気で女性のヌードの美しさだけを追求してるもん。撮影地的にヌードになった人の方も大変だったと思うのでそれもすごい。それでなんか最終的にちゃんとした真面目な映画だったんじゃないかって錯覚しかけたもん。性に囚われた存在としての人間の寓話って感じで。

あとこれ基本的にホテルみたいな監禁部屋の中を全裸中年男女がうろうろしながら口論したりなんかするだけの映画なので映像的には美ヌードの出てくる最後のシークエンスを除けばかなり地味なんですけど、そのぶん音の演出にはかなり拘ってるみたいで、ベッドの衣擦れの音とか接合患部を動かすと出るぬちゃぬちゃいう音、物を飲み下す音とか咀嚼する音…というのが強調される。それが映画的な面白さに繋がっているかどうかはよくわからないが、ただね、そのことからわかるのはこの映画、発想はすごいバカだけど作ってる方は本気です。本気でとてもよかったと思います。そんなには面白くないけど。

【ママー!これ買ってー!】


ムカデ人間 (字幕版)[Amazonビデオ]

『ムカデ人間』も一作目はわりとシリアス路線なんだよな。三作目とかは監督本も本人役で出演した壮大な悪ノリ大会でしたけど。

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