ショートドラマなら秀作だったかも映画『口に関するアンケート』感想文

《推定睡眠時間:0分》

こんなタイトルだけあって冒頭に「この映画には最後にアンケートがあります。御協力ください」みたいなテロップが出てきて映画のラストではその通りに観客に対するいくつかの設問がそのまま画面に出てくるが、そのアンケートべつに「口」と関係なかったから『口に関するアンケート』とはなんだったんだろうか。原作破壊だとファンに怒られていた『変な家』でさえ変な家は何軒も出てきていたというのに。そのへん原作小説ではちゃんと「口に関するアンケート」になっていたのかもしれないし、かなりこちらが譲ることになるが設問の中には「口はわざわいの元だと思いますか?」というものがあり、劇中では人づてに話が伝わっていくことで伝染する呪いが描かれていたから(Jホラーでよくあるやつ)、それを「口に関するアンケート」と称しているのだと理解できなくもない。

まぁ、どうでもいいだろう。ストーリーがまったくわからない予告編を見れば察せられるようにこの映画は近年の清水崇ホラーらしく話題性先行型の映画であり、例のアンケートも話題性を盛り上げるための装置以外の意味は何もない。なぜアンケートが話題性を盛り上げるための装置かといえば、この映画はいくつも提示された謎がほとんど解決されることなく、起承転結の結の部分が欠落したシナリオとなっているから、劇中で提示されるさまざまな謎に対して観客はあれはなんだっただろうこうだったんじゃないかいやああだったんじゃないかと自分で考えることになる、言うならば「考察系」の映画なんである。そしてアンケートではご丁寧に「○○の正体はなんだったと思いますか?」「○○があんな行動を取った理由はなんだと思いますか?」とこれを考察してくださいね~のポイントを観客に教えてあげるわけである。監督の清水崇は過去に『戦慄迷宮3D』という富士急ハイランドのオバケ屋敷を題材にしたアトラクション映画を撮っているが、この『口に関するアンケート』は観客に考察して謎を解くことを促すという作りからプレイアブル映画とか言えるかもしれない。

個人的にはあんまり感心しない映画だった。その理由はいくつかあって、『口に関するアンケート』は肝試しで山の心霊スポットに行ったワカモンどもが呪われるお話だが、最近公開された同種の山ものホラー『祝山』がかなり俺基準で出来の良いホラーだったというのが一つだし、もう一つは映画の1/3ぐらいは役者の独白なんじゃないかという構成で、数人のワカモンたちそれぞれの独白によって曖昧だった物語の輪郭が浮かび上がってくる、と同時に予想を覆すような新事実が次々と出てくるミステリーのスタイルを取っているのだが、話自体はなかなか意外性もあり怖さもあって面白いものの、その独白シーンというのがただ単に役者の顔を正面から撮ってるだけで、こういうのはもちろんあえてやっていることではあるのだろうが、それが長い。ちょっと退屈。早くオバケ出せばいいじゃんって思っちゃう。

それにこの独白シーンでのお芝居がみんなオーバーアクトでね。これは役者さんの問題というよりも清水崇の映画はずっとオーバーアクトだからこの人の演出の手癖なんだと思うが、オーバーアクトの長々とした独白を見せられたらそんなあんた稲川淳二じゃないんだから、稲川淳二だったら熟練の話術があるからもっと巧く怖く話すしさ……とか思っちゃうのよ。狂った人が急に「あははははは!!」と笑い始めるとか今時それで狂気を表現するんのかってなるし。いや、でもそんなのは比較的どうでもいいことで、そうだなぁどこに感心しないってやっぱり一番は考察ありきの映画で、そしてこれを観る限りではどうも劇中に答えは用意されていないという、そこだな。みなさん勝手に考察して楽しんで下さいネってあんたそんなの映画の作り手の敗北宣言ですよ。勝手に考察して楽しんでくださいねでいいなら壁の変な落書きだって同じじゃん。そこはさぁ、なんでもいいからこれが作り手としての私が考えるこの物語の答えですっていうのがなかったらダメだよね。二転三転するある種『羅生門』的なシナリオは確かに面白いけど、でもその二転三転の結果生じる矛盾や謎に関しては「みなさんで勝手に考察してくださいね~」ってそれだったらなんでもアリだよなんでもアリ。

それが今のワカモンどもの求めるホラー映画の形なんですとでも言われたら俺はもうワカモンじゃないから握りこぶしに血を滲ませて泣くしかないわけだが、じゃあ、じゃあせめてさ、そのへんの問題はともかくとしても何かホラー映画として印象的な場面なりオバケなりは出してくれよって思うけど、そういうのもないじゃないですか。セミがたくさんへばりついてる大木とか見せられてもセミ好きだからうぎゃ~ってならないし(※個人差あります)、オバケは出てくるけど特段怖いものでもなく、首吊り幽霊の足がテーブルの上の水筒を蹴倒すところ以外は結構ありきたりな表現でしたよ。こうなるとですねぇ……なんか、そうだねこれスマホで観るショートドラマとかだったらこの形式とこのお話面白いなって素直に思ったかもしれないんですけど、90分ぐらいのホラー映画として観るとなると……いやつまんなくはないんだけど、やっぱ感心しないナァこういうのは。まぁ原作も普通の形の小説ではないぽいから映画に翻案するのが難しかったのかもしんないですけど。

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