未熟人観察映画『若い女』の感想

《推定睡眠時間:20分》

主人公の女は別に若くないのでシニカルなタイトルなのだこれは。御年31歳。いや31歳は若いだろみたいな声もあるかもしれないがまぁそうかもしれないがこの場合の“若い”は未熟の婉曲表現だろう。

映画が始まって即未熟。10年ぐらい付き合った男と喧嘩して家を追い出された主人公の女(レティシア・ドッシュ)がドゴンドゴンとアパルトマンというのか知らんが集合住宅の玄関ドアをぶっ叩いて大騒ぎしている。
もう夜も遅いのに。少しは静かにしてほしいがそういう配慮というか、感情のコントロールができる人ではないので若い女。

その若い女のあてどないパリ放浪をヌーベルバーグ風というかいやもうヌーベルバーグとも言わないんすかねこういうの、なんか最近プチ流行してる感じの等身大の冴えない若者の等身大の情けない日々を等身大の腹蔵ない距離感で撮って俺センス良いっしょ的な意表を突く(かどうかは知らない)グランジとかオールディーズとかなんかDJ感覚でサントラに載せてくタイプのやつ。

なんかよかったですよ、バイト先とかだと借りてきた猫みたいにつまらない若い女がパーティで踊るところとか。動きのキレと感情のキレが同期してて。
動きが全般的に面白かったな動きが。色々あってこの人が実家に帰る場面があるんですけど母親、若い女と折り合いが悪いから帰って来るなり全力で家から追い出そうとする、で若い女は追い出されたくないからなりふり構わず階段の手すりとかに掴まって全力で抵抗してレスリングみたいになってしまうっていう。これ笑った。

あと曲はCarte Contactっていうバンドなのかソロの人なのかよくわからないのですがCarte Contactの”Like a Dog”っていうの、ダサかっこよくて良いかった。
この人ら(?)の他の曲がSoundCloudに何曲か上がっていたがプリセットみたいなチープシンセ音がニューウェーブとかテクノポップのリバイバルの系。そういうところからサントラ曲を拾ってくるの、なんとなくいかにもって感じ。

それでそのいかにも臭が強すぎたので、部分部分で面白いなぁとかセンスいいなぁとかは思うがちょっと見ているのが辛いところがあったのだ俺の場合は。
こういうのが等身大でしょみたいな。面接でテンパって空回りとかそういう共感度の高そうな未熟人日常エピソードの羅列があざとく感じられちゃって逆に映画と距離できちゃって。

それは俺自身が未熟人だからなのですが、結局いいね感覚の、フェイスブック感覚の映画で、あーあ私ってダメだなとか言いながら年収300万ぐらいは一応あってモテないモテないとか言いつつモテないエピソードとして合コン失敗談を話せるぐらいにはノーマルな対人関係の輪の中に入っていて冠婚葬祭とかにもちょいちょい顔を出す結局は普通に世の中を渡れてる社会人が顔文字付きの共感しました的なコメントを送りつついいねをプッシュして楽しむような、ようするに世間一般の未熟じゃない人にとってとても都合のいい未熟人観察映画のように俺には思われたのだ。

おもしろいおもしろくないとは別にそういう印象を与える映画は好かんよ、いやこっちが勝手にそう捉えただけだからいくぶん被害妄想的ではありますけどさ。

【ママー!これ買ってー!】


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モラトリアム系フランス映画は常に一定の需要があるな。

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