《推定睡眠時間:15分》
新しい建物への移転が決まり警察機能はほぼストップしているが一応人は置いとかないといけない的な警察署の旧オフィスで一人夜勤を任されることになった女性警官の恐怖を描く映画ということでそういえば前にも『ラスト・シフト/最期の夜勤』という同じような設定のホラーがあったからそれのリメイクかなと思ったらリメイクだったしそして監督はオリジナル版と同じアンソニー・ディブラシっていやそんなわざわざセルフリメイクまでして引っ張るほどのネタなのかこれは? 『ラスト・シフト』は日本では劇場公開がされず配信スルーになったはずの映画だが本国アメリカではややウケだったようなことをどこかで聞いた気がするのでディブラシ的には映画人生のホームラン、あの夢をもう一度……みたいなことだったのかもしれないが、もうすこし上を目指してもいいのではないかと思うんですがどうでしょう。
そんな話はどうでもいいとしてこれはなかなか面白い映画であった。オリジナルの方はNetflixで観ようと思って気分が乗らず5分ぐらいで中断したままなのでどこがどう変わったとかはわかりませんが冒頭、ファウンドフッテージ風の儀式殺人映像から始まってふーんそういうやつかと思ったら場面はすぐに普通の映画に切り替わってその儀式殺人の捜査を担当した刑事がなにやらお悩み中、件の儀式殺人では何人かは助けることができたが一人は助けられず悪魔の生け贄にされてしまったことを悔いているらしい。そこから急転直下の展開である。この刑事、突然発狂して同僚の頭部をショットガンで吹き飛ばすと自らもショットガン自殺を遂げたのだ。
本筋のお話はここから始まる。その事件の一年後、問題のショットガン刑事の娘も晴れて警官となって勤務初日に配属されたのが今お引越中の警察署、そこはショットガン刑事が乱射事件を起こした場所でもあるのでショットガン刑事の娘にして主人公のこの女性警官にとっては因縁の場所であり、しかも町はショットガン刑事が摘発した悪魔カルト教団のシンパたちがあちこちでデモを起こしてシンパの放ったブタさんがあたりをうろついていたりするというよくわからないカオス状況、この状況でなにか悪い事が起こらないわけがなく、主人公は幻覚なのかそれともオカルトなのか判別のつかない謎の恐怖現象に巻き込まれていくのであった。
率直に言ってなんかよくわからない。画面に映っている物とか出来事をあえて詳細に説明しないというのは一つの恐怖テクニックなわけですが、この映画はそれを全編に渡って用いているので、こうなるとテクニックというより単に説明不足なんじゃない……? みたいな気がしてしまう。町では悪魔カルトの残党がデモをというがそもそもこの悪魔カルトというのもなんなんだかわからない。儀式殺人をやって摘発されるようなカルトの信者が普通に町で抗議デモをやっているというのはどういう状況なんだろうか。最初の方に出てくる先輩刑事がなにかよくわからない理由で一人でブチキレているとかそういうのは怖くていいと思うのだが、基本的な設定まで不明瞭にしなくても……と思う。
ただそのよくわかんなさが個人的には好きなのでおもしろかったという話。あのカルトはなんなんだの他にもあのホームレスはなんなんだとかあの隠し資料はなんなんだとか起こっている出来事はよくわからないが幻覚的な恐怖シーンはゴア描写強めで意味がわからないなりに視覚的インパクト強め、首吊り少女を助けようとしたらロープがぐいぐいと少女の首に食い込んで目玉がポンと飛び出し首切断とか悪趣味でよいかったし悪魔の造型もグロテスクで不気味、不穏なムードの醸成にしても半ば廃墟と化した薄気味悪い警察署のロケーションも奏功してなかなか上手く、まぁ風邪を引いたときに見る悪夢のような映画と思えばなんとなくスッと入ってくるんじゃないだろうか。その意味では開発元が海外に移ってからの『サイレントヒル』シリーズ作と近いものがあったかもしれない。いや、俺はそのへんの作はプレイしたことがほぼないんですけれども。
それにしても舞台となる警察署、やたら広くてへーアメリカの警察署こんな風になってるのかと感心。広い体育館とかシャワールームとかがあってまるで高校のようである。それとも本当は警察署じゃなくて高校でロケをしたんだろうか? そうだとしたらなぜあえて体育館を見せるとか高校感を出してしまったのだろう。普通はもっと警察署っぽく見せるように撮ると思うのだが……そこもまた謎というわけで、とにかくあちらもこちらも謎だらけ、でも怖いし面白い、そんな『MALUM 悪しき神』であった。ちなみにこれ今調べたら監督がカーペンターの『要塞警察』オマージュ作とか言ってるらしいんですが、俺の頭にチラついたのはカーペンターというよりもカーペンターの影響を感じさせる地下鉄終末ホラーの『11:46』でした。これもなんかよくわからなくて面白いんだよ。