銃を捨てよ宇宙を見上げよ映画『ディスクロージャー・デイ』感想文

《推定睡眠時間:30分》

少し遅れて映画館に入ったらいきなり政府の怪しい人っぽい人たちがおそらくUFOとか宇宙人とかに関する機密情報を持ち出したと思われる2人組に銃を突きつけており最初からクライマックス! しかしその後はサスペンスフルという感じでもなく案外のんびりした展開、起こる出来事としてはこの2人組とは別にお天気キャスターのお姉さんがオレンジ色の鳥を見たことから謎の異言発話を発症、一方政府の怪しい人っぽい人たちから逃げる2人組を援助する謎の組織は秘密裏になにかしらの計画を進めており……と、なんだか『カプリコン・1』のようなというか、なかなかのサスペンスっぷりなのだが、カーチェイスもしっかりあるし宇宙人もしっかりあるのにその演出は妙に平板、盟友ジョン・ウィリアムズの劇判も控えめで、果たして年齢によるものなのか、今度のスピルバーグ宇宙人映画は『未知との遭遇』や『宇宙戦争』みたいなギンギンの感じではないようであった。

それでも宇宙人は存在しまーす! の映画がハリウッド大作として観られるのは嬉しいことだ。考えてみればいつからだろうか、ハリウッド映画といえば『インデペンデンス・デイ』のように宇宙人がアメリカにやってくるものが定番だった時期が結構長かったと思うのだが、ここ十年ぐらいなんかそういうのあんまやらなかったよな。理由は単純アメコミ映画がハリウッドを席巻してしまったのでそこにばかり資本が集中したのだろう。宇宙人ものといっても作られるのは『スター・ウォーズ』とか『プレデター』シリーズとかディズニーのスペース・オペラばかり、これは声を大にして言いたいのだが我々が(誰?)宇宙人を見たいというのは現実世界の中で宇宙人を見たいということであって、決してスペース・オペラというファンタジー的な世界で、ではないのだ。

だってそんなもん夢がないでしょうが! スペオペの世界に宇宙人がいるのは当たり前のことであって(でも変な造型の宇宙人が出てくると喜ぶ)、宇宙人がありがたい存在になるのはそこではなく、本来いるはずのない現実世界にお邪魔した時なのだ。残念ながら現実世界に宇宙人が出てきてくれることは無いので、もしも現実世界に宇宙人がいたらなぁ……の夢を叶えてくれるハリウッドの宇宙人映画はとても嬉しいというわけである。そんな夢のあるハリウッド映画が最近は本当に減ってしまい、辛うじてジョーダン・ピールの『NOPE』がその夢を叶えてくれる映画だったが、まぁとにかく俺としてはつまらない思いをしていたのであった。

ということで些細なことは気にしない。宇宙人映画の巨匠スピルバーグにしては火力不足を感じる出来ではあるとしても、ムー界隈でUFO&宇宙人事件がアメリカで多発した年として記憶される(らしい)1973年を起点としてロズウェル事件、宇宙人の解剖ビデオ、ミステリーサークル、アブダクションとインプラント(的な)、宇宙人テクノロジーによるサイコダイブ、ある日突然習得したことのない外国語がペラペラ話せるようになる謎の神秘体験(かのフィリップ・K・ディックも経験したと主張)、政府非公認ながらアメリカ合衆国を影でコントロールする力を持つ謎のUFO組織、もちろん宇宙人の造型はグレイタイプ、オカルト的レジスタンス組織による地下活動、ともう約2時間半の上映時間中ずっとムーの誌面、こんな映画を2026年に映画館で観ることができるというのはある意味事件だろう。ノーランのやつとかじゃなくてこういう映画こそ無駄にIMAXで撮ってもらいたかったと思う。デカい宇宙船の方がトロイの木馬よりも絶対にIMAXで映すべきものである。

それにしても2026年現在、世界はあちこち戦争だらけ。欧米VS中露の構図は新冷戦とも言われ、劇中でも新冷戦によって核戦争の危機が迫っていますと終末ムードなのだが、こんな時代にこそUFOと宇宙人という空想的なものが必要なのではないかと俺としては思う。なぜ人が戦争をするかといえば根本的には領土や資源といった地球上に有限なものをより多く獲得するためだろう。だとすればその根本的な解決策は地球の外の無限に目を向けることのはずだ。宇宙に無限の可能性があるのなら、なにも狭い地球の有限な領土や資源をみみっちく奪い合う必要なんかないではないか。サイバーパンクの元祖的小説『スキズマトリックス』でも対立陣営が一触即発というちょうどその時、太陽系の外から宇宙人の船団が到来、かくして太陽系の人々は争うのをやめて各々のドリームを実現すべく好き勝手に外の銀河へと散らばっていくのであった。

そう考えればこの火力不足の枯れた演出は『地球の静止する日』のように意図的なものだったのかもしれない。ワクワクドキドキのSF活劇じゃなくて君たちはこの地上でケンカばかりしていないでもっと空を見なさいという宇宙人の巨匠による啓蒙映画。こんな映画を観ていったい誰が蒙を啓かれるんだと言われれば口ごもるしかないので悔しいが、いやでもさでもさ世界中の人たちがみんなUFOと宇宙人の動画見て戦場にいる兵士たちも一旦戦うのやめてスマホに釘付けっていうシーン感動的だったと思うよ! いいですか! 地上の現実ばかりを見てこれがリアルなのだと諦めながら戦争で人を殺す兵士や戦争をさせる政治家と、広い宇宙には宇宙人がいるに違いないのだと確信して戦争に使う用に蓄えていたお金や労力を投じて宇宙人を探しに行く兵士や政治家がいたら、どっちの方がマシなのかという話ですよ! 圧倒的に後者でしょそれは!

人間には無限への夢が必要だ。宇宙人の幻想が必要なのだ。世界が戦争にうつつを抜かしハリウッドは政治と金儲けにしか興味を持たなくなってしまった昨今、そんなことはどうでもいいから人間はもっとUFOとか宇宙人を夢見るべきなのだと説く『ディスクロージャー・デイ』は、あまり面白くないとはいえ実にグッと来る映画であった。なんかグレイがおばあちゃんみたいな服着てるのも斬新でよかったし。

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