快眠ノイズ映画『セノーテ』感想文

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《推定睡眠時間:20分》

メキシコのなんか洞窟の中とかにある泉を夢の中をたゆたうような上下左右同定不能な自由水中カメラで撮ってそこに古代マヤ演劇の台詞を乗せたり地元の人の顔とか祭りの様子を合間に挟んだりするんですけどよーわからん。むしろ全然わからん。まぁ詳しい人はこれはこれであれはああでとわかるのかも知れませんが、理屈でわからせる気はあまりない映画なのでわからなくても問題なかろう。

監督の小田香という人は『鉱』というノイズ天国映画で話題になった人でもっと若いときに『ノイズが言うには』という映画(未見)を撮ってるぐらいなのでこれもノイズ、ノイズ、ノイズを浴びろという感じです。ノイズといっても工場ノイズとか機械的なノイズではなくむしろ機械的な秩序を突き破って想像力を解放する荒々しい自然のノイズみたいなやつ。

色んな種類のノイズがあります。泉にガシガシとカメラ入ってくのでそのゴポゴポォグニュグニュゥいう水ノイズ、それからそこで遊んでいる? のか? 別の場所で録音したものを後から付け加えているのかもしれませんが? ガヤガヤはしゃぐ子供たちの笑い声や叫び声のノイズ、これらは音のノイズですが映像ノイズもあり、水中の不純物…まぁでも自然の泉だから何が不純なのかという話なのですが、不純物捉えまくりです。これもノイズ。

そんでこの泉は洞窟の中にあるので真上に開いた穴から水が降り注いでくるのですが、ほの暗い水中世界を捉えるために暗視カメラみたいの使ってるので、さっきまで水中をたゆたっていたカメラが不意にぽわぁっと水面に浮上すると太陽の光で画面が真っ白に焼き付いてしてまい、そこに降り注ぐ水がフィルムでいうところの「雨」みたいな、スクラッチノイズとして画面に入ってくる。これもノイズなのでノイズ、ノイズ、とにかくノイズなのです。

まぁ、そこからなんか自由に感じ取ってくれみたいな。ノイズから場の記憶を吸ってくれみたいな。そういう作りの、ノイズが好きな人には『鉱』同様のノイズゆりかご、気持ちよくてたいへんよく眠れてしまったが、ノイズにとくになんも思わない人ならなんやねん! ってなるんじゃないか。非関西弁話者でもあえてなんやねん! って言いたくなってしまうぐらいなノイズフェチ映画ではあったように思います。

あとこの泉は古代マヤで子供の生け贄の儀式が行われていた場所らしいということで古代マヤ神話のポポル・ヴフに言及されるのですが、ポポル・ヴフでは地底の冥界シバルバーに行くには天の川を渡るんだみたいなことになっているはずで、天文学一点突破の古代マヤ文明だから神話に天の川が出てくるのはわかるが、モチーフだとしても地底に行くのになんで宇宙を持ち出すんだろうと思っていたのですが、あの右も左も上も下もないような水中映像を見ているとこれは確かに宇宙の無重力空間のようだ(といっても古代マヤ人に重力の概念などないだろうが)、アン・リーの『ライフ・オブ・パイ』にもそういえばそういうシーンがあったが、水と宇宙はイメージの中で一つに溶け合うんだなぁとかなんとなく納得してしまうのだった。

※PFF(ぴあフィルムフェスティバル)に新設された大島渚賞の第一回受賞作品/監督がこの映画だったらしいのですが、審査員長が坂本龍一なのでなんというかあまりにも意外性のない受賞であった。

【ママー!これ買ってー!】


マヤ神話 ポポル・ヴフ (中公文庫)

副読本として役に立つかどうかわからないが…。

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