未体験映画2022感想文『シティ・オブ・ジョイ』

《推定睡眠時間:25分》

未体験ゾーンの映画たち4週目だか5週目だかはラインナップがこれ一本でビデオスルー予定の最新映画を集めて限定公開というこの特集の企画趣旨から外れる1992年公開作一本立ては元々4Kリマスター版ソフトの発売に合わせたリバイバル上映の予定だったものがコロナ禍やらなんやらで流れて苦肉の策で未体験ゾーンにねじ込まれたとか概ねそんな感じの大人の事情が察せられるがそのことでビデオスルーのジャンル映画を佳作から愚作まで浴びるように観ることができる未体験ゾーンのありがたさを再確認できたのでぶっちゃけ「リバイバルかぁ…しかもヒューマンドラマかぁ…」とは思ったものの結果的にはよかったかもしれない。

映画の方はといえばさすがに古さを感じるものでインドはカルカッタのスラム街通称「歓喜の町」を舞台に本国で下手こいた傷心のアメリカ人(90年代映画にありがち)が田舎で食えなくなって大都会カルカッタに出てきたはいいが早速スラムの悪知恵を食らって無一文になってしまったインド人一家と出会って交流を重ねていき…の90年代的(もしくは80年代的)定番人間再生ドラマがリアルなカルカッタのスラムのオープンセットで繰り広げられるが、このオープンセットは雑踏の演出なども含めて見事な出来映えではあるものの各種インド映画を通してある程度のリアル・インドのイメージが出来上がっている今日の目からすれば嘘くさく見えてインド人同士が片言の英語で会話をするとか結構ノイズになってしまう。

嘘くささにも味のある嘘くささとそうでない嘘くささがあるがこれは後者で、当時の水準では相当にリアル・インド寄せの映画なものだから90年代以前の欧米映画的ファンタジック・インドでもないわけでオリエンタル的な興趣も薄く、単に古いなぁの印象ばかりが前に出る。インド人一家の娘の嫁入りが幸福な結末として描かれるのも隔世の感で、インド社会の(とくに貧困層の)中での嫁の境遇であるとか嫁といわず女性の置かれた立場がどんなものかある程度知れ渡った現在ではこれをハッピーエンドとして受け取ることは難しいだろうと思う。というか俺は難しかった。

それでも骨と皮しかないヨレヨレの牛とかマーケットの汚らしくも活気溢れる風景とかディティールに凝った映像の力は素晴らしく善意も悪意も押しつけがましくない自然体のドラマもこれだけ悪し様に書いといてあれですがなんかわりと沁みました。悪い映画じゃないんだよな。全然悪い映画じゃない。でもこれは時代を重ねて味わいが増すたぐいの古典的な映画じゃなくて時代と共に忘れられていく徒花の映画なんだろうなって思う。そんな映画だからこそリバイバルする価値があるとも言えるし、そんな映画こそ「未体験」なのかもしれないけどね。

【ママー!これ買ってー!】


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これも90年代っていう時代が作らせた映画だよねぇ。観たことないけど。

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