恐竜ナメんな映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』感想文

《推定睡眠時間:15分》

サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、クリス・プラット、BD・ウォンとシリーズを彩った顔たちが一同に介してシリーズ最終章をお祭り的に印象づけるわけだが、萎えている。この時点で萎えているのはぶっちゃけ「人間なんてどうでもいいよ」と俺が思っているからで、一方この映画の作り手たちは「人間こそが重要なんだ」と考えているらしいことがこのキャスティングから透けて見えるからで、こっちは怖い恐竜でっかい恐竜風変わりな恐竜が見たくて『ジュラシック』シリーズの最新作に足を運んでいるというのにこいつら全然わかってない。

人間側は誰が出ようがそんなのどうでもいいんだよ。そんなことより恐竜を出さんかい恐竜を。なにしんみり長々と人間ドラマをやっているんだ。なんだクローン少女の葛藤とかそういうやつ。そいつ知らないよ誰だよっていうか誰でもいいよ人間なんか。なに恐竜闇市場で『ミッション:インポッシブル』みたいなことやってるんだ。人間のアクションなんか見ても面白くないんだよせめて闇市場のシーンを出すならそこで売買されてる色んな恐竜をちゃんと見せろよサッと一通り見せて満足するんじゃない。巨大肉食恐竜のバトルを間近で目にしたサム・ニール一行がその崇高なる風景に圧倒されることもなく今がチャンスとばかりにすたこらさっさと逃げていく? ありえない! ありえないよ! ジェフ・ゴールドブラムなんか恐竜の餌にしてしまえ!

いや面白かったですよ一応言っておくと。まぁ映画館で観ると通常のシアターでも恐竜の咆哮で座席ビリビリーって揺れたりするから臨場感あるしね。アクション満載とはあまり言えない映画ではあるけれどもテンポがそう悪いわけではないので退屈することはないんじゃないでしょうか。でもさ、曲がりなりにも『ジュラシック』シリーズの最終作なわけじゃないですか。そんな普通にまぁまぁ面白い程度でいいのかよ。っていうか、別につまらなくてもいいけど、あくまでも恐竜主体の映画として作らないとそれはダメなんじゃねぇかやっぱり。だって『ジュラシック・パーク』ってサム・ニールがすごいわけでもローラ・ダーンがすごいわけでもジェフ・ゴールドブラムがすごいわけでもなくて、恐竜すげぇ…っていう映画だったんだもん。

『新たなる支配者』の恐竜すごくないんだよ。それはシナリオ上の扱いもそうだし演出もそうで、これは人によるかもしれないですけど俺には恐竜CGとか恐竜アニマトロニクスさえも『ジュラシック・パーク』の何倍かショボくなっていたように見えた。そんなシリーズ最終作ってありですか。いいけれども別にこのシリーズに思い入れとかないし…。

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でこれは恐竜がテーマパークを飛び出して全世界に広がってしまったっていう設定の上でお話が進んでいくわけですけど、俺そこもがくーんと来てて、恐竜が野生化した世界ってどんなのか気になるじゃないですか。ところがこの映画ときたら最初の方でちょこっとダイジェスト的に恐竜化世界を見せるだけで後は恐竜会社の施設とか恐竜闇市場とかえらいスケール小さくなっちゃうんだよ。それで巨大イナゴっていうのが出てきてこのイナゴのせいで食糧危機だイナゴどうにかしないとみたいな話になるんですけど、は? いやイナゴじゃねぇだろ恐竜を問題にしろよ。なにイナゴだけ悪者にして恐竜オッケーみたいな感じにしてんだよ。どう考えても世界的に破滅的な外来種だろ恐竜とか!

それを全然やらないで恐竜との共存を訴えても説得力っていうものがないじゃんさ。もう生態系ぐっちゃぐちゃに決まってるんですよ恐竜が野に放たれた世界なんて。前作『炎の王国』のラストはそれを予感させるものだったのに…ねぇ? あとあれ万能すぎだろクリス・プラットの恐竜を抑えるポーズ。なんで野生の大型恐竜にまで効くんだよおかしなことになるだろうが強さのバランスが。こんなところにもこの作り手の恐竜軽視が見えて嫌ですね!

絶対勘違いしてるんだよこの作り手は。恐竜をたまに間違って人を殺すだけのかわいいペットだと思ってるんです。だから人間が保護してあげなきゃいけないし繁殖管理などもしっかりしてあげないといけません。こんな見方は初代『ジュラシック・パーク』の精神に反するものだと思いますよ。だって恐竜は人間の手に負えないっていうのが『ジュラシック・パーク』だったわけじゃないですか。人間にはコントロールできない恐竜に対して畏敬の念があったし、それをコントロールしようとする人間の愚かしさを告発してもいた。俺は『ジュラシック・パーク』のそういうところが好きでしたよ。人間を特権化しないでそれよりももっと大きな存在がこの世にはあるんだっていう価値観が。つまり、人間中心主義に対する批判が。

『ジュラシック・パーク』が特別な作品になったのは何も恐竜を超リアルに再現したからってだけじゃなくて、そういうテーマ性とか精神性がしっかり作品の軸にあったからだと思ってるし、これ以外のシリーズ作も出来はまちまちだとしてもそれは踏襲してたんですよ。なのになんでこれだけ恐竜軽視の人間中心主義になってしまったのかと考えれば、どうにもストーリーの収拾が付かなくなってきたからシリーズを畳むためにシリーズの軸をへし折ることを選んだ、と思えてならない。

だとしたらまったく残念。だとしなくても結局残念。どうせ映画なんだから人類なんか滅ぼして地球を恐竜の星にしてしまえばよかったのに…そうもできない事情があったんでしょうな、ハリウッド大作でバッドエンドというのは基本的にはない。俺からすれば人類滅亡エンドはむしろハッピーエンドだが、大多数の観客にとってそれはバッドエンドなんだとこの映画の作り手(とお金と権力を持つ人たち)は判断したんでしょうよ。あえて繰り返せば、映画館で観るハリウッドのエンタメ大作としてはライド的に楽しめるところはあるけれども、でも俺はこんなシリーズ最終作なら無理に作らなければよかったのにって思いましたね。

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やはりここはシリーズの原点を今一度見ておきたい。

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ああああ
ああああ
2022年8月2日 6:01 AM

最新作はまだ観てないんですがあまり評判が良くないみたいですね。

初代ジュラシックパークって、当時の技術では表現としてできる事が限られてたはずなのに、以降のどの続編よりも恐竜がリアルだし怖いし、ちゃんと生きてる感じがします。
それにはスピルバーグの演出の巧みさとかも当然寄与してると思いますが、何よりもやっぱりさわださんのおっしゃる通り「人間の手に負えないむき出しの生命」みたいなものをちゃんと描こうとしてることが作品に凄味を与えてるような気がしますね。

関係ないですがハリーポッターの「ファンタビ」シリーズも、作品を重ねるごとに魔法生物そっちのけでホグワーツ関係者のいざこざに焦点が向いちゃってる印象を受けてちょっと興醒めしてます。
人間ドラマはそこそこでいいんだよなーって感じです。

火薬バカ一代
火薬バカ一代
2022年8月4日 12:01 AM

レビューを拝見して、自分がなぜ「ジュラシック・パークⅢ」が一番好きなのか分かったような気がしました。
序盤で登場人物紹介を手早く済ませたら(見るからに頼りないウィリアム・H・メイシーとか、一目見てキャラが分かる親切設計)、後はひたすら恐竜に追われて逃げるだけという潔さ。
「着メロをテーマ曲に登場する巨大恐竜」とか「あえて歩いて登場するプテラノドン」とか、パンチの効いた恐竜たちの名場面が最新作には見当たらなかったのが残念でした。
恐竜抑えるポーズもあんまり何度も繰り返されるから段々ギャグに見えてきて、最後3人が一斉に始めた時は我慢できずに笑ってしまいましたね。