この物語、純愛につき映画『アナログ』感想文

《推定睡眠時間:0分》

最近はその手の映画が全盛期に比べて数を減らしたので相対的に多少のオリジナリティを獲得している感もないではないがプロット的にはあまりにも王道の難病純愛ものだったのでこんなのゼロ年代に公開されてたら完全によくあるあれで終わってたなというこの映画の原作がビートたけしという事実をどう受け止めていいかよくわからないが原作が発表されたのは2017年ということでたけしのオフィス北野退社騒動が持ち上がりオフィス北野・森社長に対する恫喝音声がリークされた頃である。その後たけし2019年に離婚、愛人と再婚。離婚話はもつれたというしそもそももっと前から別居状態にあったというから2017年頃のたけしは離婚に向けて話し合いを既に行っていたのではないか。

その合間を縫ってたけしがこれ(の原作)を書いていた…そう思うと何かはわからないが何かこみ上げてくるものがある。あまりにも王道の難病純愛ものと書いたがそれはプロットだけの話ではなくキャラクターもまた王道難病純愛もの、主人公の建築家(二宮和也)が一目惚れするマドンナ的な人は映画では波瑠が演じているが、知的で清楚でおしとやかでいつもハンドバッグを大事そうに持っている…って『電車男』の伊東美咲じゃねぇか。そりゃこれが原作執筆時のたけしの頭にあったマドンナ像とどの程度近いかは知りませんが再婚相手がたけしにはこう見えてたのかなっていう気はしてしまうだろそれは。そうしたらあんた何かはわからないけれども何かが…何かがこみ上げてくるだろうよ! なんだろうこれはなんだかわからないけどなんとなくだけどちょっと悲しい気がする!

それがこの映画の最大の見所だな。二宮和也と友人の桐谷健太との即興的なやりとりの面白さなどもあるとはいえ内容的にはとにかく王道の難病純愛もの、小洒落た喫茶店で出会った二宮和也とスマホ持たない人の波瑠は昔ながらの「来週またここで会いましょう」を繰り返して距離を詰めていくがある日突然波瑠が現れなくなり…ってなもんで、たけしはあくまでも原作者に過ぎないので当然だがたけしらしい台詞もほとんどないし波瑠がスマホを持ってない設定にも大した意味があるわけじゃないしそのほか何か奇抜なものがあるわけでもない、もうとにかくアタマからシッポまでいつものアレとしか言い様がない難病純愛ものなのだが、これを、この原作を、繰り返しになるが「おい刀出せ刀!」の恫喝音声リークを含むオフィス北野退社騒動と愛人との再婚のための離婚話を進める傍らでたけしは書いていた…そのことがこの『アナログ』という映画をただの難病純愛映画ではない特別なものにしているのだ。その特別さにどのような価値と意味があるかはみなさんで勝手に判断してください。

他にちょっと面白かったところは二宮和也が芝居の合間合間に微妙にたけし感を出している気がしたのでそのうち自称がおいらになるんじゃないかとわくわくしたところ(なりませんでした)、二宮和也の他にもジャニタレが出ていたので当然スタッフロールの上の方には旧ジャニーズ現スマイルアップの藤島ジュリーK前社長の名前があるかと思いきやジャニタレ出演映画には全てあるはずのその名前がなく、これは邪推もいいところなのであくまでも俺の妄想として理解していただきたいが本当はプロデューサーの一人として藤島ジュリーKの名前が入っていたがジャニーズ・スキャンダルによる巻き添えバッシングの可能性を恐れて急遽スタッフロールから藤島ジュリーKの名前を外したんじゃないか説が俺の脳内にのみ浮上したところ、そういうのがおもしろかったです。

めちゃくちゃ普通の難病純愛映画なのにたけしスキャンダルとジャニーズスキャンダル、二つのスキャンダルを背負って曰く付き物件感が強すぎるだろ。

【ママー!これ買ってー!】


アナログ (集英社文庫) Kindle版

とはいえたけしの書く物語というのは昔からピュアなので老境に達してピュア成分が更に純化されたというだけの話なのかもしれん。

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2 Comments
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匿名さん
匿名さん
2023年10月26日 12:10 AM

最後の文章で笑った。確かに普通の難病純愛映画なのに曰く付き物件感が強すぎるw