《推定睡眠時間:15分》
冒頭に「携挙の後、人々は」云々とテロップが出るのだがこれを読んですぐさま意味を了解できる人は日本にどれだけいるのだろうか。かくいう俺も詳しくはまったく知らないがどうやら携挙というのはキリスト教プロテスタントの概念、キリスト教ではやがて世界は終末を迎え(これを描いたのがいわゆる黙示録)天使たちと獣の軍団の最終戦争が起こるのだが、やがてキリストがどこかしらから再臨し最後の裁きを加えてまぁ出来レースだから敬虔なキリスト教徒たちは助かって獣の軍団は滅びるという。プロテスタントではその際に携挙が行われ、これはキリスト教徒がキリストにアブダクションされて天国に行くことらしい。
そんな文言が冒頭に出るということは終末ものなのだろうかと思うし実際舞台となるのは文明の残りかすみたいな森の奥の集落なのだが、ぶっちゃけ詳しいことはよくわからなかった。なぜならこの映画、セリフがないのだ。終末っぽい森の中で二つの部族がしのぎを削っているらしいことはわかるもののどうしてこの部族が対立しているのかは不明、わかるのはどうやらこの人らは聖書に忠実に生きていて、そこに沈黙がどうのと書かれていたのでみんなで声帯を取って沈黙しているらしいことである。そういえば『クワイエット・プレイス』という映画もそんな感じの映画だったから黙っていればそのうち天国のキリストがアブダクションしてくれると考えているのかもしれない。
ということで全編セリフなし、しかも全編森の中ってなわけでなかなかのクセモノである。いや、セリフがないのはリュック・ベッソンの『最後の戦い』とかもそうだからいいのだけれども、いくらアクションとサスペンス満載とはいえ全編森の中というのはちょっと……せめてゾンビとかでかいモンスターとかが出てきてくれればよかったのだが、描かれるのは徹頭徹尾二つの部族の地味なバトル&エスケープである。それはさすがに絵面が厳しくないですかね。
セリフがないと書いたが途中で出てくる車に乗ってるオッサンだけは普通に喋っていたので、どうも世界に終末が訪れたのではなくこの二つの部族は世界に終末が訪れたと信じ込んで森に籠もっているキリスト教カルトである可能性が示唆されるのだが、しかしまぁそういうネタなら同じ邦題を持つシャマランの『ヴィレッジ』がずっと上手くやっていたし、サプライズというにはちょっと物足りない。総じて、アイデアは悪くないかもしれないけどアイデア一本で押し切るほど面白いアイデアではないのでもっと意外性のある展開がほしかった、とか、もっと演出にメリハリが欲しかった、とか、そんな感じだったかなぁ。『声帯切村』と書いてコエキリムラと読ませる邦題サブタイトルはなかなか猟奇的なインパクトがあるが、圧強めの邦サブタイに内容が負けちゃってる映画であった。