【ネッフリ】『アウトサイダー』の感想(ネタバレなし)

※これは『外人任侠伝 東京事変』

アウトサイダー[Netflix]

《推定ながら見時間:40分》

ジャレッド・レト主演のヤクザ映画とかいうキワモノ感にしてこのザ・シンプルタイトル。味気ないなぁと思って見ていたら椎名桔平の台詞でテメェは外人なんだよ的なやつがあり、外人だからアウトサイダー! 気付くのが遅すぎたのでピカラットは全然貰えないとおもうがなんかスッキリしたのでよかった。

侮蔑語としての「外人」をスラング的にピックアップ活用したヤクザものの例として思い出したのはヴァン・ヘイレン来日公演時のプロモーションとして制作されたショートフィルムで、その名も『外人任侠伝 東京事変』。
宮造りの昭和残響銭湯にやってきたヴァン・ヘイレンのデヴィッド・リー・ロスが脱衣場で花札に興じる小錦ら先客ヤクザに絡まれる。「おい、外人(笑)」。
激おこしたデヴィッド・リー・ロスは月に代わって小錦とヤクザを成敗するのであった。イチゴミルクを飲みながら。

『アウトサイダー』とはなにかしら画のトーンに共通するものを感じたが接点とかあったりするだろうか。スタッフロールに日本側スタッフの名前がズラズラ並ぶ『アウトサイダー』だから、狭いジャパニーズ映像業界のこと、スタッフが一部被ってたりしてても別におかしくはないし、被ってなくても相互影響とかあったりするかもしれない。
いやそこは別にどうでもいいんですけど…ちゃんとしてたな。なんかすげーちゃんとしてたな。『外人任侠伝 東京事変』みたいなネタっぽいやつじゃないんだよ…ガチなんだよこれびっくりだよ…。

映画の冒頭は大阪で服役中のジャレッド・レトだ。たまたま遭遇したムショ内殺人を阻止したら刑務官からボッコボコに。おいおいいつの時代だよ~刑務所のセットも時代がかってるしよ~『網走番外地』じゃねぇんだぞ~とかニヤニヤしてましたがその後テロップで大阪・1954年と出る。
ジャレッド・レトがムショで救った男というのはヤクザの浅野忠信。こうして大阪ヤクザの知遇を得ることとなったジャレッド・レトなのだったが、いよいよ戦後を脱しつつある時代の流れの中で否応なしに任侠ヤクザと経済ヤクザの諍いに絡め取られてしまい…というわけだから意味もなく主人公が「外人」でもなければ意味もなく1954年設定でもなかったんだなこれは(また舞台が大阪と神戸というのも)

時代の狭間で居場所を失ってしまった周縁人たちの挽歌。それも含めての『アウトサイダー』のタイトルということか。ちゃんとしてるな。ちゃんと考えられてるな。なんか最初の方でニヤニヤしてた自分の浅さに対する自己嫌悪がじわじわ来てつらいよ…。

まあでもそこらへん時代考証とかいい加減なものにしないで作り込んでくるのはやっぱネッフリの映画だなぁとか思うのですが、やっぱネッフリの映画なのでケレン味がないっつーか要するに優等生的に小さくまとまってしまってるのでそんなに見ていて楽しいものでもないというのもあってだな。
なんか色々あるんだよ。相撲出てくる、切腹出てくる、指詰め出てくる、盃出てくる、カタナと仇討ちもある…米国産ヤクザ映画のワードから連想されるような見せ場はいっぱいあって、『その男、凶暴につき』オマージュとかバイオレンスも適度にあって、でもそのどれもがおざなりっていうんじゃなくて本当小さくまとまってるんで、地味っつーか堅気感がすごかった…。

ただそれ、つまんないって意味じゃないんで。すげぇ渋いなぁって感じですけど俺は結構面白く見れましたね。
たとえばこんなシーンはすごく良かった。日本語を解さない上に慣れないヤクザ社会の中に置かれてずっと沈黙&仏頂面のジャレッド・レトが旧友と再会して、その時にようやく表情に色が戻ってくる。
このへんのジャレッド・レトの芝居のニュアンス。えらい抑制の効いた、効き過ぎた映画なんですけどその中にふっと浮かび上がる諸々の機微とか悲哀は中々ハートに刻まれる感あった。いや、しかしこのシーンは本当よかったな。哀しくて、ビターで。

休暇で大阪を訪れていた沖縄米軍兵が何気なく広島を語るエピソードなんか入れてくるぐらいだから客寄せ用の見世物性を纏いつつシナリオは社会派的に糞真面目。
カビ臭い刑務所とか猥雑なドヤ街のセットなんかも糞真面目に凝っていたが、人の顔だけはどうしようもなかったのか、1954年の大阪ヤクザに見える人が浅野忠信とか椎名桔平も含めて基本的に一人も居ない。
わりとヤクザのヤクザ感の無さは萎えポイントだったが一人だけ意外なヤクザ的生臭さを発する人がいて、誰かと思えば安田大サーカスのHIROじゃないですか。これはサプライズだった。HIRO、大森南朋よりヤクザが板に付いてたよ…(あとモノマネは笑った)

野菜を切ってるみたいなへっぽこ指詰めだとか、ヤクザ映画のくせに緩いバイオレンス表現になんだかなぁと思っていると、これが場面によっては突発的な乾いた暴力の表出に変貌して急に怖く見えたりする。
やる気があるのかないのか分からないジャレッド・レトの能面芝居が仇討ちに得も言われぬエモーションを与えていたりするのだから(健さんメソッドだ)、どこがどうとか言いにくいが面白い映画だったし、そんで面白いって以上にすげー力作だなって思いましたね。
映像感覚的には全然違いますけど東映実録路線みたいなストーリーなんで…Vシネを除けば今の日本映画でほぼ不可能になったことをNetflixがやっちゃってんだから、すごいよね。それだけでも見る価値充分。

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監督シドニー・ポラック×原作レナード・シュレイダーとかいうガチ布陣なのでAVみたいなタイトルですが前衛プールの場面以外はかなりガチめの任侠ノワール。主演ロバート・ミッチャム、助演が高倉健の組み合わせもすごい。

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