映画版『坂道のアポロン』ざっくり感想

《推定睡眠時間:15分》

そんな別に悪い映画だとは思わないんですけどエエッ! ってなるポイントが一カ所だけあって、エンディングテーマ曲が小田和正っていう、いやそこはポップスでいいのかよみたいな。
なんかジャズの映画じゃねぇの。ジャズが繋ぐ友情みたいな、辛いこととか色々あってもジャズで乗り越えてこうぜみたいな、なんかそういう映画じゃねぇのこれ。

ラストシーンがジャズ的に結構盛り上がる感じで、盛り上げて盛り上げて盛り上げて…ここ! っていうタイミングで画面暗転したんで俺的には超ジャジー気分だったんですけど、エンドロール入ったら小田和正っていうこのヤコブもびっくりの梯子外し。
なにも小田和正の曲が悪いとは思わないけれども、でもこの映画のこのタイミングで流すのは絶対違うよな…坂道転げ落ちましたよ最後の最後で。

坂道といえば何か台詞を聴き逃してるのかそれとも聴き間違えてるのか、医者で主人公のカオルくん(知念侑李)がジャズ友の千太郎(中川大志)との出会いを回想して「あいつとは、あの坂の上で出会った…」みたいな事を言っていたのだが、回想シーンに入ったら二人が初めて顔を合わせたのは高校の屋上だったからいやお前ら坂の上で会ってねぇじゃんっていう。

この高校は急勾配の坂の上に立地していたので広い意味で言えばまぁ、坂の上で会ったっていう表現も間違ってはいないかもしれないが、でもあんま坂をフィーチャーする映画じゃなかったからなこれ。やっぱ坂の上では会ってないんじゃないかな。
坂よりも遙かに印象深く描かれていたのはカオルくんが千太郎と幼馴染みの律子(小松菜奈)を交えて友情セッションを繰り広げる秘密基地的な楽器店の地下室だったから、もう地下室のアポロンで良かったんじゃないかと思わなくもないが…なんかあれだな読んでないけどたぶんきっと、原作の方はもっと坂寄りだったりするんだろう。

ジャズ狂のタモリも日本坂道協会の副会長だし…などと、どうでもいい駄ツッコミと連想が止まらないのは良くも悪くもウェルメイドな学園&音楽&恋愛映画だったからで、面白いは面白いけど特になんか言うことはないっていうのが恋愛も青春もジャズもクラシックも分からない俺の個人的感想。
それはもう見る方に問題がある気もするが…まぁ恋愛も青春もジャズもクラシックも分からない人でもある程度は面白く見れる映画だったってことで好意的に受け止めてくださいよ、各位…。

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しかしなぁ、これも原作だともう少し掘り下げてる部分なのかもしれないですけど、60年代の佐世保っていう設定が雰囲気作り程度にしか機能してなかったように見えたのはもうちょっと、もうちょっとだけそこ突っ込んでも良かったじゃんっていうのは思ったよな。
カオルくんたち三人の秘密基地的地下室にある日のこと学生トランペット奏者の淳一(ディーン・フジオカ)がやってくる。この人は千太郎の兄貴分かつ音楽的憧れの的。なにかしら志を持って上京したが、やはりなにかしら志を持って参加した学生運動の現実に疲弊して佐世保にとんぼ帰りとこうなった。

これ良くないですか。学生運動の理想に敗れた人が佐世保のレコード屋の地下室で一人寂しげにトランペット吹いてるってイメージ。あるいは吹けなくなってしまって、自分たちが何を間違ったのかとか、信じた理想とはなんだったのかとか、孤独に思案を巡らせてるってイメージ。
そういうの面白いなぁと思って見てたんですけど…でもあんまり具体的な事情には触れないで、つらい大人の世界みたいな感じで抽象化されちゃってたな、淳一さんの抱えた傷が。

ただこういう、キャラクターの表面的な苦悩を見せつつ内面にはさほど踏み込もうとしないところがあんまり記憶には残りそうにないが気持ちよく見れた所以だと思ったので。
そのへん匙加減の上手い映画なんだろうな。適度に陰があってさ、それなりに重みもあって、でジャズでなんとなくスルーしてくわけですよ、そういうネガティブを。過度に深刻ぶったり感動をぶち上げたりしないで。
爽やかでいいっすよね。時間余った時に暇つぶしで見たら超面白く感じるかもしれないな、こういうのは。

60年代佐世保を再現する意図など毛頭無い。漫画的な書割背景としてありゃいいんだ的な潔さなのでキャラクターだって漫画。知念侑李の漫画演技(ギャグ演技とは微妙に違うんだ)も中川大志の漫画演技も変に気取ったところがなくてストレートに目に楽しい耳にも楽しい(しかし小松菜奈だけは別の世界から来たようでなんか怖かった…)。
あそこ良かったな、グループサウンズ馬鹿を押しのけてジャズっちゃう知念侑李と中川大志。いいよね。いいじゃないですか。それを超絶上手いっていう感じには見せないところが良いよ。超絶上手くなくてもジャズりたかったらジャズっちゃえばいいしっていう軽さ、ちょっとだけ沁みたよ。

なお超々オーソドックスな音楽青春映画ではあったが地域振興映画的には意外すぎた場面があり、やたらと挿入される背景の山影や町の俯瞰ショット、名所名跡一通りロケなどは標準的地域振興映画の枠内に留まっていたように思うが、地域振興映画のド定番・橋シーンが…とにかくめちゃくちゃ小さい。シーンの扱いが小さいとかではなく橋自体がめちゃくちゃ小さいからびっくりした。普通もっとどーんとしたデカい橋を撮るじゃん…。
これだったらもう画面に映さなくてもいいのではないかと思ったぐらいだが、ていうかそもそもなんで地域振興映画には必ず橋で別れる男女とか橋を走り抜ける男のショットとかが入ってくるんですかね。謎、

【ママー!これ買ってー!】


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小松菜奈が演じる律子が『サウンド・オブ・ミュージック』好きって言うので律子に惚れちゃったカオルくんは劇中ナンバーでジャズるのだった。

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