考えさせられる映画『雪の華』感想文(含ネタバレ)

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《推定睡眠時間:0分》

主演の中条あやみは『覆面系ノイズ』では幼少期のトラウマ(?)により歌が歌えなくなり『3D彼女 リアルガール』では何らかの重篤な病で記憶を失ったりしていた病苦女優なので『雪の華』も病名さえ観客に明かされることなく当たり前のように余命1年宣告される。

どこ需要なんだそれは。中条あやみ別に健康体にも見えないけど病人にも見えないだろ。劇場から出るときに映画なんか普段は大して見ない感じのそこらへんの女(※性差別的表現)が「内容は良かったけど…主演の女の子の演技が…」って言ってるの聞きましたよ俺は。面倒くさいオタク層ならともかく映画なんか普段は大して見ないそこらへんの女層にも届いてないんだよ中条あやみの病人芝居。

だがその責を中条あやみにだけ負ってもらうことはない。確かに中条あやみはあまり器用な演技ができる人ではないと思うが、そもそもこんなざっくりしたシナリオにどう感情を乗せたらいいんだというところもある。演じる側も観る側も。

映画は中条あやみ演じる余命1年の人・美雪の幼少期の描写から始まる。家で酸素マスクを付けて雪降る外の景色を眺めている美雪。クリスマスケーキなのかバースデーケーキなのかすら判然としないケーキのロウソクを消そうとするが、うまく息が吹き出せない。呼吸器が弱いらしいということがわかる。

時は一気に過ぎて現在。立派な中条あやみに成長した美雪がMRI検査を受けている。その後、診察室へ。ドクター田辺誠一が脳の断面図を見ながら美雪に告げる。「実は…あと1年…大事に生きてください」早いな! びっくりしたその超速展開!
俺まだ美雪の病状も来歴も人柄もなにも聞いてない。呼吸器疾患かと思っていたからなんで脳を撮ってるのかもよくわかってない。

まぁなんかたぶん呼吸の問題は適当な難病の神経症状だったということだろう。急に頭が痛くなったり呼吸が苦しくなったり錠剤3つカプセル1つの処方薬を飲むときには苦しそうな顔をしていたから恐らく嚥下障害もとその症状は多岐に渡っていた。

もっとも嚥下障害に見えたものは中条あやみが薬を正面を向いて飲むから喉に詰まっているだけの可能性もある。薬が苦い可能性も考えたが錠剤とカプセルは苦くないし錠剤の1つなんて糖衣なんだからその可能性は低いだろう。

なるほど薬は上を向いて飲めばいいのにという教訓的描写だったのか。そんなわけがあるか。あったらどうしよう。嚥下障害だとしたら契約彼氏・悠輔(登坂広臣)の家で事情を知らない家族とすき焼き食った時に誰か気付くだろって気もするし…。

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とにもかくにも美雪に残された時間はたった1年。「なんで私だけこんなに不幸なんだろう…」と中条あやみの顔と声とファッションで言われても俺としては一つも納得できるところがないが、若くして余命1年を宣告されたら確かにそんな気分にもなるだろう。

隅田川沿いのそこそこのマンションに住んでて難病の治療を受けながらも貯金は300万ぐらいあって1年に3回フィンランド旅行に行くが職業は低賃金でお馴染み図書館司書というむしろ相当余裕ないですかお前感のある生活を送っているとしても、不幸は不幸なのである。
ただその不幸が美雪の過去とか闘病生活とか人間関係が全然描かれないから少しも伝わってこないというだけだ。

不幸のドン底な美雪に追い打ちをかけるようにチャリンコひったくり犯が彼女を襲う。たまたま現場で美雪の前を歩いていた悠輔は走り去るひったくり犯にバランスを崩して転倒、振り返ると美雪も倒れていたのでひったくり察知、追いかけて犯人から奪われた美雪のバッグを取り返してひったくり犯を逃がしてやる。

ひったくり犯追跡で結構な時間が経っていると思うがまだひったくられた時と同じ場所に同じ姿勢で地面に座って「私は不幸…私だけ…」とぶつぶつ呟いている美雪の下に悠輔が戻ってくる。「お前がひったくられるところ見てたけど、なんで何も言わねぇんだよ! 声に出さなきゃわかんねぇだろ!」

ってなんで防ぎようがないたぐいの犯罪被害に遭ったのに怒られなければいけないんだ。声を出す出さないの問題なのかそれ。大体お前ひったくられたところ見てなかったじゃん、クリスマスツリー持って前歩いてたじゃんお前。

なにか理不尽な気もするが美雪は叱られてハっとしつつ半分一目惚れする。一方悠輔はクリスマスツリーを運びながらひったくりに遭った人を助けつつ怒鳴りつけるという得難い経験だったにも関わらず半年ぐらい経ったら美雪のことをサシで見ても思い出せないくらい完全忘却していた。

ずっと悠輔を想っていた美雪とそんなことを全然知らない悠輔…のドラマチック展開なのかもしれないがそれを忘れる悠輔やばい人なのでは。記憶に残らないぐらい日常的に見ず知らずの人を怒鳴りつけていたりするんだろうか。と考えたらドラマチック気分が飛んでしまう。

まあともかくそういうことになって、件の事件から半年ぐらい経って偶然再会した悠輔をストーキングした美雪は町工場かなんか居抜きした風のシャレオツカッフェに辿り着く。

そこは浜野謙太が経営するお店で、両親を亡くした悠輔は2人の姉弟と一緒にその上に住みながらカフェで働いている。
察するにここはガラス工芸職人だった悠輔の父親の工房を一部改築したものなのだが何も誰も説明してくれないので想像力で補うしかない。

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居抜きだけあってこのカッフェ、小さなライブができるぐらいの広さはあるがとにかく人が集まらない。浜野謙太は初登場のシーンで早速「もう店はダメだ…金がないと…100万…」とぶちかます。営業中に客として来ていた美雪に聞こえる声で。

カフェのシーンは10シーンぐらい出てくるが俺の計算が正しければその間に店を訪れた客は6人+声だけ出演3人であるから経営難には説得力しかない。
浜野謙太なんかにカフェ経営を任せてはいけなかった。あいつは店を建て直す気がない。悠輔のガラス工芸を集客に繋げるアイディアを閃くのかと思ったがそういう展開もなかった。店の余命も1年、ということだとしたら深い(深くない)

100万あればお店が助かる…そして悠輔はそのお店で働いている…「!」美雪の小4レベルの思考回路に電流が走る。100万で悠輔を恋人として買えばいいんだ!
「あの! …こ、こ、こ…このお金を使ってください! か、か、か…彼氏になってください! 1ヶ月!」声を出せ、悠輔からの理不尽な説教アドバイスが実を結んだ。結んでねぇよ!

その後も延々信じがたい光景が続くのでいちいち書きませんがキャラクターの存立基盤をマッハで台詞説明して終わらせるかもしくは完全に端折るシナリオなのでお前たちは何がしたいんだよ的な感じになる。

早くして亡くした?父親(※実はそれも説明してくれないので俺の想像である…)からフィンランドのオーロラは超綺麗で中でも赤オーロラは絶品、珍しいから見れば願いが叶うと幼少時に聞かされた美雪はなんとしてもその光景を目に収めようとインスタかYouTubeで見ればいいのに何度もフィンランドに行くが、それが父親の想い出ゆえなのか、それとも死ぬ前に奇跡的に綺麗なものを見ておきたいからなのか、あるいは赤オーロラに病気を治してくださいの願い事をするためなのかわからない。

映画のラストシーンでは1ヶ月の契約期間を終えて未練を残しつつも病気を隠したまま悠輔と別れた美雪が、病気結構大変だと思うが単身フィンランドのオーロラ名所を訪れる。
頭痛を堪えつつも何時間も酷寒の中を薄装備で待ってたら(それ風邪なんじゃないか…)ついに赤オーロラ到来、美雪の脳裏に悠輔の「声を出せよ!」が響き渡る。

さあ美雪はなにを赤オーロラにお願いするんだろう!「悠輔に…会いたいよおおおおおおお!」お前はなんでフィンランドに来たんだよ。悠輔あの潰れかけのカフェで働いてるよ。絶対フィンランド行っても会えないよ。

来たけれどもね。最終的には難病恋愛映画マジックで悠輔、倒木で通行止めになった道路から外れて雪に埋もれたフィンランドの森を徒歩で抜けてたった1人で赤オーロラ観測してる美雪の下にやって来たけれども。
ちなみにその後のエピローグで美雪死ぬのかと思ったら神経症状が悪化して車椅子生活になりましたが元気そうに生きてました。お前ら身体強いな。

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…っていう。ていう映画のシナリオを渡されたら普通の人ならどう演じたらいいかわからないと思うので、中条あやみが下手な役者だとしてもこの映画の中条あやみが下手に見えるのは半分かそれ以上、中条あやみのせいじゃない。

その幼稚な言動の数々と愚演っぷりに何度もぶっ転がしてやろうかと怪我しないように草原とかにぶっ転がして土とか蟻とか服に付けてやろうかと思ったが、草原とかにぶっ転がすべきなのはシナリオも含めて映画の方なんである。出来上がった映画のマスターの方である。

良いシーンはあったけどな。桜の枝越しに美雪を捉えてその花々でアイリス的な効果を狙ったり、水上バスでのデート会話の長回し、美雪を自室の窓際に立たせて窓ガラスに反射する夜の水上バスと美雪を同一画面に収める、とか撮影はちょっとトリッキーなことをちょいちょいやったりしてなかなか充実。

独特の会話の間というのも儚さを感じさせるところがあって面白く…あと登坂広臣と田辺誠一は上手かった。
いや、だから良いところはあるんですよ。良いところは色々あるんですけど最終的には、最終的にはぶっ転がしたくなるから…まぁなんか大変だったんだと思うよ作り手も! 『雪の華』を映画化しろって無理難題をしかも今更言われてもどっからどう話を作っていいのかも、どうやってその話を語っていいのか普通わかんねぇもん!

これはもう企画が悪い。企画が悪いということにしておこう。『雪の華』ととくに関係ないしねストーリー。フィンランドとかどっから出てきたんだよ…絶対フィンランドロケありきの企画だったよ。
役者も脚本家も監督もみんな頭を悩ませた。俺も頭を悩ませた。考えさせられる映画という定型感想があるが、俺にとっては今年一番考えさせられる映画でしたね。

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海外ロケもの邦画の要救命具率、めっちゃ高くない。

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