こころがふるえる『午前0時、キスしに来てよ』感想文

《推定睡眠時間:10分》

何を書いたらいいのかわからなくて困ってしまう。何をというかどこから書いたらいいのかわからない。映画が好きだからとりあえず映画に関することから書いていこうと思う。

真面目なガリ勉設定であることが冒頭の台詞で開示されるがその後とくに勉強している場面とかはないのでどこがガリ勉やねん的な主人公の花澤日奈々さん(橋本環奈)は勉強も好きだが絵本も好きで王子様に憧れていて映画も好きな軸のブレが激しい人格なのである日のこと「THEATER TICKET」とだけ書かれた名画座のチケットを手に入れ家事の合間を縫って男と女が「この出会いは偶然か?」「いえ、これは運命」と言うだけの前衛的なモノクロのフランス恋愛映画を観に名画座に行くのだがっておい! おい!

間違い探しか。お話の最初から順を追って書いてるだけなのにおかしいところ5つぐらい出てきたろうもう既に。なんなんだこれは。ひとまず映画関連の描写に絞るとしても一つや二つじゃ済まないぞツッコミポイント。なんで名画座に特別鑑賞券で行くんだよ。あるところにはあるのかもしれないけど高校から名画座通ってて見たことも使ったことも今までに一度もないよそんなの。

名画座に普段から行くような人は相手にしてないですよみたいなことなんでしょうね。その名画座、これは湘南ロケもののキラキラ映画なのだが…外観が東京駅みたいなレンガ作りの洋館。こころがはげしくゆさぶられる。そんな立派な名画座があってよいのか…いやあって欲しいとは思いますけど、あって欲しいとは思うが…そして中に入ると建築知識に乏しい俺の頭脳ではうまく描写できないが初代『バイオハザード』のエントランスホールみたいな…そんな名画座あるわけねぇだろ!

だいたいそれどういう構造なんだよお前ら階段上って二階から場内入ってるじゃねぇかしかも後方扉からじゃなくて前方扉から! 新宿ミラノ1みたいな巨大劇場とかTOHOシャンテみたいなスタジアム式の劇場で勾配の都合後方は二階から入るとか! 浅草中映・新劇場とかシネクイントみたいな二階席のある劇場だったらわかりますよ! でもそうじゃないんだもの! 洋館の二階にあるのかもしれないけどね! それならまぁおかしくないか! なんだよ複合商業施設でもない単なる洋館の二階に入ってるキャパ200くらいの名画座って! ねぇよそんなの!

もちろんこれが『シンデレラ』のバリエーションであることは知っている! ぼく知ってるんです! 名画座興行を舞踏会に見立てていることも知っている! だから名画座なのに特別鑑賞券とか洋館設定という無理を通していることも知っている! 知っているんだ…知っているんだよ…。

でも見立てるなら見立てるでちゃんと見立てりゃいいだろうと思わずにはいられないのはこの興行、例のモノクロのフランス恋愛映画、主人公ふたりを含めて目視で6人しか客が確認できなかったことで…それは、こう、なにか狙いもあるのかもしれないとは頭の片隅に置いておくが、エキストラで客席埋められなかったの…? ロビーに出ても客はおろかもぎりも居ないしっていうかボックスオフィスもないし舞踏会に見立てるにはちょっと廃れ過ぎじゃないだろうか…。

このご時世によくこの名画座生き残ってるよな。しかも夜の回でキャパ200に6人しか入らなかった例のモノクロ謎フランス映画、終盤にもう一回同じ名画座にかかるんですけどその時は客2人だったからね。どっからその余裕出てくるんだよ。設備維持費とかすごそうなのにな。あぁそれで人件費削減で劇場スタッフ一人もいないのかってそんなわけあるかよ。ある意味、映画好きの夢の詰まった映画ですね!

こういうのがずっと続く。歌手から俳優に転身した国民的スーパースタァ(片寄涼太)が16歳女子高生と交際していることが発覚して記者会見を開くと高校の教室のテレビで生徒たちがその中継を固唾を飲んで眺め、中継を流す渋谷のオーロラビジョンには女子高生たちがつめかけ…山口達也が女子高生襲った時だってそんな騒ぎになってなかっただろ。っていうか他の重大ニュースでも早々ならないわ。なんだよオーロラビジョンて。スマホで見ろスマホで。

白馬の王子様に憧れる映画好きのガリ勉の生徒会員で『シンデレラ』なので養子設定でもある花澤さんのキャラ特盛りっぷりもすごいが国民的スーパースタァのキャラもすごい。ロケに訪れた花澤さんの通う高校での撮影の空き時間、校庭で準備運動だがチアの練習だかをする女子高生たちの尻をずっと見ている変態なのだ。それがストーリーに絡むのならまぁわかるが意味もなく変態。ケツを強調した女キャラのフィギュアを集めているらしいがオタクというほど集めているわけでもないので単なる変態性欲者になってしまった。

ちなみにこの男は花澤さんの下着を事故的にとはいえ見ているがとくに気にかけるでもなく平然としていた。花澤さんの鼻を甘噛みして「はい、キスの予約」とかなんなんだ。怖いわ。風俗か。あとそれロマンティックなことみたいにやっているがされた方は臭っ! てなるだろ唾液で。した方も衛生的に若干気持ち悪いだろう。油まみれじゃねぇか鼻の頭とか。根性あるな。やっぱ変態。

こういうのがずっと続く。国民的スーパースタァの自宅に招かれた花澤さんは本棚に10冊ぐらい映画の本が並んでいるのを見て「本当に演技が好きなんだぁ~」と振り込め詐欺に騙される高齢者のようなことを言う。こういう奴なら犯しても何も言わないだろと踏んだのかどうかは知らないが、いきおい花澤さんを押し倒してヤってしまおうとする国民的スーパースタァに「お前らなにやってんだぁ!」と待ったをかけるのはマネージャーの遠藤憲一。もうヤクザの世界じゃねぇか。っていうか、いまどき国民的スーパースタァって。こういうのがずっと続く。

サグラダファミリアの空撮ショットを入れて安上がりなゴージャス感を出したかっただけとしか思えない世界的な映画祭「バルセロナ国際映画祭」(舐めているのか)。予算的な都合からか現地ロケはなく適当な外国人キャストと室内オンリーで「バルセロナ国際映画祭」と言い切る豪快演出(舐めているな)。国民的スーパースタァとの未知との遭遇にホラー映画ばりに目をひん剥いて驚く橋本環奈と女子高生のケツを一人で眺めながら淡々とヒップサイズを呟くある意味こっちもホラー映画な片寄涼太の凄惨な棒読み人形芝居(他の映画では全然そんなことはないと言っておく)。こういうのがずっと続く。こういうのがずっと続く。こういうのがずっと続く…。

キラキラ映画のおたのしみ要素のひとつであるポップな映像とかは出てこない。そのへん、色んなシチュエーションでスタァの表情を見せることに特化したオールドスクールなキラキラ映画という感じ。お金を出してる人が見たいものを見せるという意味では的確極まる映画である。江ノ電と神社と絵馬と橋本環奈を一つの画面に同時に収めるとか見事というほかないショットだった。宣伝的な意味で。

花澤さんの幼なじみ役の眞栄田郷敦とか、友人役の八木アリサとか、あとお母さん役の酒井若菜とか遠藤憲一とか、脇を固める人がちゃんと腰を据えたお芝居をしてくれていたのは救いだったと思う。
やぁ、スター共演もののキラキラ映画がまさかこんなインスタントな作りだとは思わなかったのでびっくりしちゃった。星五つですね。なんとなくそれっぽく見えればリアリティとかモラルなんてどうだっていいんだよ的なこの映画的デタラメに星五つ。これが映画だッ!

【ママー!これ買ってー!】


映画「兄に愛されすぎて困ってます」

『兄愛』の片寄涼太は妹の土屋太鳳に欲情していたので涼太くんは性欲魔人! それはそうと土屋太鳳の受けの芝居が見事なキラキラ映画でした。

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