玉城ティナに殺される『わたしに××しなさい!』感想

《推定睡眠時間:15分》

お前の言っていることは分からん、そんな不合理な概念は俺にはまったく理解不能だ、とかそういう感じの話し方をするイタい俺っ子の玉城ティナが「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」って叫びながら吹っ飛んでいくところとか死ぬじゃん。死ぬ。

玉城ティナのファッション独演会な趣もあるので可愛い服に身を包んだ玉城ティナがいっぱい見れる、メガネを取ると俺っ子属性が取れて急に怯えた子犬みたいになる、など玉城ティナの多彩なキュートがフィーバーしたアイドル映画だったがそういうガーリー系キュートはべつに興味なし。
「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」です。「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」ですよ。あれはもうモンティ・パイソンの名スケッチ『恐怖の殺人ジョーク』みたいなもの。玉城ティナの「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」は人を殺す。

そこで見事に死んだので以降は天国から下界を眺めているような感じになりました。つまり寛容なこころでほわほわとスクリーンを見ているが比較的どうでもよい。
どういう場面で「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」の殺人キュートが飛び出したかというと大人気web小説(もはやケータイ小説とは呼ばない)作家の裏の顔を持つ恋愛経験ゼロの俺っ子女子高生・玉城ティナが編集者から提案された(web作家に紙媒体的な編集が付くことってあるんすかね)恋愛小説を書くために学園いちの爽やかイケメンだが裏では周りのバカを小バカにしているイヤメンな小関裕太の弱みを握って(それが落とした女と悪口に塗れた学生手帳なのだが今時の高校生がそんな風に学生手帳を使うかね)自分と恋愛シミュレーションをさせるのだがそうして書かれた恋愛系web連載小説にツイストを加えるべく玉城ティナ先生お得意のファンタジー展開をねじ込んだところ同じクラスの玉城ティナが作者だとは当然知らないクラスメイトの愛読者が「リアル恋愛ってこうじゃないよね~」とそれまでは大好評だったにも関わらず残念感想を漏らしているのを盗み聞きしてしまったため(クラスメイトの感想ごときで作品の評価を測るなよ)「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」、とこういうわけですが勢いに任せて読点ガン無視。

やはりweb小説はリーダビリティが命であろうからこんな読みにくい文章をぶちまけていたら玉城ティナ先生に怒られてしまうな。
いやむしろ「ななな、なぁんだこの酷いシロモノはぁぁぁ!?」とか言って欲しいですよ。なななシリーズで色々怒られたり呆れられたりしたいな。
願望のコーナーになってしまった。そういう映画じゃねぇよ。

T-JOY系のティーン映画だからTOHOでかかったりするティーン映画なんかより対象年齢ならびに対象意識が若干低め。
原宿的ポップな映像感覚はかっこうがよろしいので偏差値は低いが、というか偏差値の高さが観る側にも作る側にも別に求められていない分だけポップでローコンテクストな作りなのだと思われ、漫画もドラマ版も未見の俺でも結構結構おもしろく見れたのだった。

でもたぶん半分ぐらいはドラマ版のダイジェストなのでドラマ版追ってた人はどう受け止めたんすかねそのへん。あの名場面がグレードアップしてスクリーンに! ってなるの。それともその場面もう知ってるよふざけんなよってなるの。
どっちでもいいか。しかしネタの反復によって効果が倍加するのがローコンテクストな劇の強みだろうみたいなところはあるな。ハイコンテクストなネタは天丼が効かないもんな。

えぇとそれで、そうだなそれで…もうあんま書くこともないな。こちらも反復しますが「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」で俺は死んでますからね。あとは別にって感じですよ。
結局こういう偏差値低めのポップティーン映画もさぁ、最初はなんだよその設定っていうのブチ上げてさぁ、それがファンシーでおもしろかったりするじゃないすか。
でも絶対途中からシリアスに寄ってくるんですよ。ティーンの心の痛みとか気の迷いを見せる方向に引き寄せられていくんですよ。

教育的引力だよね。こういうバカでキュートなティーン映画を見るたびあーあって思うのはですよ、バカとキュートで突っ走ればいいのに途中からシリアスになって最後はみんな常識的なところに落ち着いちゃうっていうそこ。
これだって玉城ティナが浮世離れした濃キャラなのに話が進むにつれてどんどん俗世に馴染んでキャラが薄まっちゃって、予期していたことではあるけれどもそれが残念至極で…そのターニングポイントがちょうど「ななな、なぁんだとぉぉぉ!?」だったわけですつまり。

そう考えると実に示唆的ですよあの場面は。だって玉城ティナが自分の得意分野に小説を軌道修正しようとしたら恋愛脳の凡才愛読者の不興を買って、それが一因となって彼女は自分のフィールドじゃない恋愛の方にのめり込んでいくわけですから。
俺っ子のままで別にいいのに。恋人がヴァンパイアなんておもしろいじゃないですか。でもそのような変わったものは一般的な恋愛と一般的な感覚にかき消されてしまうのだとそういうお話。

【ママー!これ買ってー!】


ハグしちゃお

××にはハグとかキスが入るがそうか、二文字か。三文字だと思ってました(リンクはとくに関係ないです)

↓原作

わたしに××しなさい!(1) (なかよしコミックス)

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