『馬を放つ』という映画の感想

《推定睡眠時間:50分》

アクタン・アリム・クバト監督が自分で主人公も演ってるんですけどこの人が家族三人ひとつの布団に川の字で寝る場面があって、子どもを寝かしつけるというかさぁ寝ろ寝ろと頭から布団をぶっかけたそばからカミさんとおっ始めたので大らかだなぁと思ったが絶対子ども寝れない。

まぁそこらへんはキルギスだからな。そういう文化なんだろうな。地図のどのあたりにあるのか具体的な位置すらわからないのに適当なことを言うよ俺は。絶対眠れない子どもと違って爆眠りしたから適当なことしか言えないよ。
でこの仕事をしているんだかしていないんだかよくわからない主人公の人(むかしは映写技師をしていたようだ)が、なんか金持ち厩舎の馬丁だか警備員だかとやってた賭け事に負けた腹いせ? で馬を放つところから映画が始まる。

それにしてもこれも実に独特に映ったのだがその厩舎、トイレとか勝手口の扉の外側にスライド錠みたいのが付いていて…これ絶対イタズラで鍵かけるやついるから危ないと思うしそもそもなんで外に付いてるんすかね。
これもキルギスの文化なのかなぁ…なんか違う気もするんだが日本でも昔の木造アパートの共同トイレとか外側に鍵付いてるやつあるし…いやそれも目的がよくわからないんですけど。

それでこの警備員だか馬丁だかは本当は主人公が馬を放ったと知っているにも関わらず、仕事サボって遊んでたとバレたらやべぇと思ったらから嘘吐いてどっかの泥棒の仕業ですみたいなことを警察に言う。
映画の舞台になっている地域は外に扉の鍵付けててもまぁそんな頻繁にイタズラ利用とかされないぐらいの人口規模らしいので、警察も泥棒といえば前科持ちのあいつだろみたいな雑対応で済ます。

この前科持ちのあいつがかわいそう。警察署に連れてっても仕事増えるだけだしインセンティブ貰えるわけでもないよなぁってことでワイロ獲得を選んだ警官によって厩舎の金持ち暴力オーナーに身柄を渡されてしまった。
どうなるか推して知るべし。強く印象に残った場面だが、以降睡眠が本格化してくるのでこの可哀想な前科持ちのあいつがどうなったか、どう物語に絡んでくるのかそれとも絡んでこないのか、などといった情報は一切知らない。

終幕15分前ぐらいになってやっと起きたぐらいだからそれ以上のストーリーに関しては馬放ちのせいで主人公と主人公家族が過酷な運命を辿ることになったのだった程度のざっくり理解しかできていないが、どうもイスラム教の伝来と資本主義体制下での競争で遊牧の伝統が奪われ変えられ…的な背景を持った映画っぽい。
今や馬を持つのは金持ちだけだ。ちくしょうだったら放ってやるわ。俺は誇り高き遊牧民の末裔なんだ! あと映写機も回してやるからな!(宗教的な理由で封じられてたのだろうか)

アンチ拝金主義はともかくイスラム教と伝統の相克とか絡んでくるとセンシティブな話題になるので現地事情を知らない人間としてはどうこう言えないが(だいたい映画すらちゃんと見ていない…)、たぶんキルギスの伝承に基づいたものと思われる民話的ラストシーンは同時にニューシネマのようでも西部劇のようでもあって、監督が自分で主演してるぐらいだし元映写技師設定なぐらいだし部屋に貼った映画ポスターをティルトアップで大胆にフレームに入れてくるぐらいだから映画愛と映画ノスタルジーに満ち満ちた、なにか風刺的な意図を持った風俗・民俗ドラマ(旧ソ連圏の映画にありがち)の枠組みには収まらないような不思議な余韻を残す映画だった。

まぁ半分も寝りゃどんな映画だって不思議な余韻残るんすけど…。

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これもそういえばすごい寝たから逆に印象度が高かったなぁと思い出したが内容的には全然別に関係ない。
『馬を放つ』はあまりカットを割らないリアリズム調の映画ですけど『独裁者と小さな孫』は寓話的な感じだし。あとジョージア映画だし。

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さるこ

全部観ても、おとぎ話のような映画でした。それは観客の願望でもあるのかもしれませんが…。しかし半分しかご覧になられてないのに、こんなに洞察なさるとは。

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