フクロウかわいい映画『マチルド、翼を広げ』感想文

投稿日: カテゴリー 居眠り映画館タグ , , ,

《推定睡眠時間:15分》

主人公の友達いないキッズ・マチルドちゃんが別に暮らしている父親マチュー・アマルリックに悪夢というか不安な夢の話をしていて、その夢の内容の方は昨日観たばかりなのに忘れてしまったが、あー俺も水没した都市でひとりぼっちになる夢をよく見てたなぁと思ったことはしっかり覚えている(マチルドちゃんの夢も水に関するものだったはずである)

なにか、埋もれた記憶を発掘する作用がある映画なのかもしれない。孤立女児と母親のお話ですが記憶というものが重要な要素になっていて、たとえば理科の授業で人体骨格標本が出てくる場面があるんですが、他の子どもたちはそれをオモチャ的な標本としか見ないのにマチルドちゃんはそこに生きた人間の残滓を見たりする。

そんなだからマチルドちゃんは学校で浮いた存在。ちょっとあかんぞということで母親が担任にお呼ばれするが、マチルドちゃんを交えた三者面談で母親、あれ私なんの用事で来たんだっけとか抜かす。
なるほど娘が説教されないようにはぐらかしてるんだな。良い母親ダナァ…と思っていたがそのちょっと後の場面、ショッピングモールでウェディング・ドレスを試着する母親の図。
「ご結婚されるんですか?」「いいえ」「へぇ?」「あぁいえ、結婚します」「どんな方と…」「…人生と」「…」「…」

どうもこの母親は認知症らしいのだったというわけでドレスを着たままショッピングモール闊歩、代金を支払ったかどうかは知らないがその姿で路上にさまよい出て家がわからなくなってしまったりする。
母親を演じたノエミ・ルボフスキーが監督・脚本も兼任、なんでも自身の幼少期を下敷きにしているそうなのでやっぱ記憶に関する映画なんである。

良かったところといえばそれはもうフクロウです。マチルドちゃん母親にフクロウをプレゼントされてお友達になる。フクロウ超かわいい。喋ると声はオッサンなのだがオッサンでも超かわいい。
あとマチルドちゃんもキッズスケールなパンク精神をフル発揮していてかわいいのですがあんまりかわいいと書くとマチルドちゃんの全裸入浴場面もある映画なので危険な感じになる。

いやべつにそこを見てかわいいと言ってるわけじゃないから…しかしお国柄の違いを感じる場面ですよね、こういうの。
女性監督と女性出演者の親密な関係性の賜物ですが、親密さや素朴さの表現というよりはちょっとした反逆精神の表れっぽい。
フクロウはかわいいが意外とギョっとさせるような攻撃性やエロティックな死の匂いを秘めた映画でもあるのだ。

奇矯な振る舞いが日に日に酷くなる母親との二人暮らしは次第にマチルドちゃんの内面を荒らしていく。
その心の声を代弁するのが喋るフクロウで、いずれ避けられない母親との別離をマチルドちゃんはフクロウの形象を借りて準備することになるが、イマジナリーフレンドを通した親離れの物語とすると、一種特殊な親子関係や出来事を描きつつもその核は普遍的なものなのかもしれない。

ノスタルジーとは違った意味でなにか記憶をまさぐられるように感じたのはその普遍性に触れたからか。
女児の成長に伴う密やかな母親への反発や不安が詩的かつ奔放に表現されていて、懐かしくはないが私的な記憶を呼び覚まして、なんだか不思議な手触りの映画だった。

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女優としても監督としても脚本家としてもと八面六臂な活躍っぷりのノエミ・ルボフスキーはアルノー・デプレシャンの『魂を救え!』なんかに脚本で参加したデプレシャンの盟友だそうで。なるほどそう聞けばこの予定調和から外れた微妙にこころのざわつく作りもなるほど感ある。
監督デプレシャン、主演マチュー・アマルリックのジャンルレスな自由作『キングス&クイーン』ではルボフスキーは出演に回っているから、そのあたりの縁で『マチルド』にもアマルリックが出ているのかもしれない。

1000
よーく

何か少女の日記帳を盗み見してるみたいでいけない気分になる映画でしたね。とても背徳的でエロティックな映画だと思う。いや俺は決してロリコンではないが。
記事内にもあるけど非常に死を連想させるシーンや演出が多い映画でその死と対比させるためにエロスというか生々しい生命力を描いているのかなと思いました。マチルドちゃんが何歳だったのかイマイチ記憶が定かではないが、おかんがあんなだからあまりにも早い自立を促されるんだけど当然まだ子供なもんだから母親から離れたくないし目を離すとどこかへ消えてしまいそうな母親を繋ぎ留めたくもある、という二律背反が悲しくて切ない。フクロウ越しに自分と対話する姿は端から見るとファニーな感じもするけど本人的には滅茶苦茶シリアスなんだよな。
でもキリキリと胃が痛くなるような深刻さではなくどこかふんわかした映画だったのでそんなに辛い気持ちにはなったりしない、なんかそういう良い雰囲気の映画だったように思う。
しかしフクロウかわいいなぁ、帰り道でフクロウカフェを検索するくらいにはかわいかった。