難民叙事詩『ヒューマン・フロー 大地漂流』を観る

《推定睡眠時間:50分》

森美術館で昨年10月から今月20日までやってた破局テーマの美術展『カタストロフと美術のちから』と公開期間がほんのちょっとしか被らなかったの超もったいねぇなと観ながら思って、っていうのは『カタストロフと美術のちから』アイ・ウェイウェイの難民テーマの作品も展示されてたんですよ。

どういうやつかっていうと『オデッセイ』と題されたデジタルプリントのパネル絵巻。難民の遭遇する様々な困難がエジプトの壁画みたいな絵柄で描かれていて、それが帯状に、帯状っていうか横向きにした映画フィルム状にって感じですけど切れ目無く延々と連なってる。
その壁画の帯が森美術館の床から天井まで壁一面に何重にも重なっているから超でかい。作品リストを見るとサイズ可変だそうなので展示場のサイズに合わせて帯を減らしたり増やしたり、長さを調節したりできるらしい。

制作2016年とある。キャプションには特に書いてなかったと思うが、時期を考えるとこれたぶん『ヒューマン・フロー』と並行して作られた同じプロジェクトの別作品みたいな位置付けなんでしょう。
なんせ森美広いからサラっと流してしまい、かなり寝た映画同様に全然細かいところまで見れてないからアレですが、併せて見るとなにかしら得るところがありそうな作品だった。

あのサイズだって意味もなくでかいわけじゃないんだろうとか。上の方の絵とか見上げてもよく見えないぐらいでかかったんですが、それは難民問題自体がそうで、言葉にすればワンフレーズだけれどもそこに含まれる出来事は非常に広範に渡っているから全容を把握することは並大抵のことではないだろうみたいな、そういうことを思ったりしたんです、が。

で、難民問題そのものが表現されたのが『オデッセイ』だとすると、その個々の現場から現場へと手持ちカメラ片手に漂流しつつ、美麗ドローン空撮を駆使して難民問題を鳥瞰的にナビゲーションしてくれるのが『ヒューマン・フロー』だった。
いやもうお勉強になりましたよ。このシンプルに分かりやすい構成。アイ・ウェイウェイの真摯な思いがひしひしと伝わってくる。

それをすげぇ寝てしまって本当に申し訳ないがでも絵画的に切り取られた場面の一つ一つが静かに美しくて、国境移動の場面なんてピクニックみたいに牧歌的なムードが漂っていて…そこにはなにか難民リアルを美的に消費することのアイロニーがあるような気もするが、考えるより先に眠くなってしまった。
そのことをどう理解したらよいか俺には判断しかねるが、ただあのとても良い映画だったとは思います。いや本当に…。

【ママー!これ買ってー!】


カタストロフと美術のちから

図録。

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