新書みたいな映画『シャドー・ディール 武器ビジネスの闇』感想文

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《推定睡眠時間:30分》

わりとどうでもいい映画だったと言うとせっかく作ってくれた人とか配給してくれた人とか映画館にかけてくれた人とかに全力なのだがでもわりとどうでもよかったのでそうとしか言えない気がする。軍産複合体ねぇ。うーん。そうかー。いやまぁそれは確かになんと言いますかこういう形で軍産複合体というのがありますよ問題ですよね問題だと思うでしょ思えコラテメェこっちは人死んどんやぞ! っていう啓発を継続的にやっていくということはとても意義のあることだと思いますし作ってくれた人とか配給して(略)の思いもわかりますけれども、それはわかるんですが、うーん、そうだねぇ、やっぱ映画として面白くないんじゃない…かなぁ? みたいな。みたいなね! あくまでみたいなですけどでもそのみたいなが強かったからなーこれはー。

ナビゲーション映画というジャンルなんですよこれはそんな用語を使っているのは俺だけなんですが。だから基本的に予想外の展開とかはなく…題材をものっくそ掘り下げてみるとかそういうわけでもなく…まぁ観る教科書というか…実際それを目指して撮られたんだろうという感じで…わかりやすいのはわかりやすくていいよね! わかりやすいのいいこと! 資料映像インタビュー映像豊富。びっくりしました実際の武器ディーラー(ちょっとかっこいい)が普通に顔出しでインタビューに応じてるの。まぁでも会社建ててお仕事としてやってるわけだから当たり前といえば当たり前ではあった。

でもその資料映像が結構どうなのって感じで(あぁ、ついに悪口が…)ものっそい典型的なプロパガンダの作りなんですよねこれが。なんかね、色々入る。民間人の紛争巻き添え死の映像とか色々入ってくるんです。で、それが文脈とあんま関係ないんだよね。要はさ、軍産複合体悪いですねー戦争ビジネスマン最悪ですねーアメリカの大統領とかも表面的には平和だなんだとか言っているが裏ではそんなのどうでもいいって思ってますよねー! っていう文脈で子供とかの紛争巻き添え映像入れてくるの。失笑とまでは言わないけれどもそんなベタなっていうか。プロパガンダって言ってももうちょっとうまくできるんじゃないかと思ったし、それはそれでお前らもやり方えげつねぇなって思うじゃん。だって文脈と直に関係ない悲惨映像なんだもん。そんなん「悪いなー」っていうイメージを文脈に付与するための装飾でしかないでしょ。

いや軍産複合体悪いから別にいいんだけどさ。でもその悪さっていうのも掘り下げが本当に浅いので悲しげ音楽と悲惨映像に頼りまくったなんとなくの悪さイメージしか持てないのがドキュメンタリー映画としてダメだなって思って。インタビュー対象も武器商人だけ異質な人選ですけど基本はアクティヴィストとかリベラル派のジャーナリストとかだし身内みたいなもんじゃないですかそんなの。それでいいのって思うよね。あなたたちが伝えたい軍産複合体の問題ってこの程度の映画で本当に伝わってるのみたいな。

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こう言うのもあれですけど軍産複合体なんてもう何十年前から言われてるんだよみたいなところあるじゃないですか。それが人道的にまずいでしょっていう認識は確かに共有する必要ありますよそりゃ。でもその構造に依存せざるを得ない政治的状況の方が本当は問題なわけじゃないですか。で、その問題に切り込もうとするとファクターもステークホルダーもめちゃくちゃ多くなりますよね。経済の話はしないといけない、外交の話はしないといけない、内政の話もしないといけない、イスラム過激派の背景の話をしないといけない、すると宗派の違いの話もしないといけない、イスラム諸国の近現代史の話もしないといけない、となると民主主義の話をしないといけない、共産主義の話をしないといけない、冷戦の話をしないといけない、アメリカの話はしないといけない、ロシアの話はしないといけない、イギリスの話はしないといけない、中国の話はしないといけない、シリアの話はしないといけない、イスラエルの話はしないといけない、イランの話はしないといけない、エジプトの話はしないといけない、シリアの話はしないといけない、それから…終わりないですよこんなの。

だからですね、別にこの映画で答えを出せとは思わないし、軍産複合体問題の入門編なら入門編でいいと思いますけど、安易な悲惨映像で悪いぞムードとか平和になればいいねムードを醸し出したりしないで…いや尺に余裕があるならしてもいいと思いますけど、でもさぁ、それより先にこれがいかに解きほぐしがたい問題なのかちゃんと整理して観客に提示すべきだと思うんですよ。そうしないと誠実じゃないですよ。相手が誠実じゃないからって自分まで誠実さを失ったら何を信じたらいいかわからなくなっちゃうじゃん。あえて言うならそれこそ問題でしょうが。そんなニヒリズムに観客を浸らせたらダメだし、チープな感傷に浸らせてもダメじゃないですか。これはあなたにも関係ある問題なんですよってちゃんと理解してもらって考えてもらわないとダメじゃないですか。

それをさ、アメリカ=イギリス中心史観でもってなんかふわふわした感じの印象平和主義で誤魔化したり…って別に作ってる方は誤魔化してるつもりはなくて本気なんだと思いますよきっと! だけど本気でそれならやっぱドキュメンタリーとしてもプロパガンダとしてもダメだよ。原作ノンフィクション読んだ方がいいやって思ったのでその意味では有意義な映画だったと思いますが…。

【ママー!これ買ってー!】


武器ビジネス 上: マネーと戦争の「最前線」

アマレビュ見たら上巻の翻訳がやたら叩かれていた。

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