全裸映画『サウナのあるところ』感想文

《推定睡眠時間:0分》

タイトル画面のR15表示に浮かんだ疑問符は暑い画面を更に暑くするオッサンたちのあられもない姿ですぐさま判明、サウナの中にオッサンちんこが12本ぐらいフルでチン座しているのだった。
おっさんたちは胸襟を開いてパンツを降ろしてちんこを晒して自らの人生を回顧したり悩みを打ち明けたりしている。そこにボカシを入れるのはおっさんたちの覚悟を無下にすることだろう。

確実に集客に影響の出るR指定を受け入れてまでノンボカシを選んだ配給の英断に拍手を送りたい。全裸配給、アップリンク。ナイスですね。
(でも子どものちんこはちゃんとボカシが入っており、昔の映画だったらR指定でもおっさんちんこは絶対モザイク、逆に子どもちんこは猥褻ブツとは見なされずに基本的にフル見せだったわけだから、なにか時代の変化を感じてしまう)

とふざけたくなってしまうところではあるが内容は至って真面目、真面目というか深刻、人を食ったユーモアも随所に仕込まれてはいるが基本的にはつらみ強めのおっさん映画だった。
フィンランドには至る所にサウナがある。サウナはもはやフィンランド人の生活の一部。ていうんであんなサウナこんなサウナの中で全裸フルチンのおっさんたちが語らうのだったがその話が娘が死んだとか継父から虐待されてたとかそんなのばかり。サウナはフィンランド人のカウンセリングルームであった。

アツアツの石に水ぶっかけてジュワーと立ちのぼる蒸気をウチワ代わりの木の枝をバサバサやって(日本だとタオルでやってるのしか見たことない)浴びるロウリュはフィンランドサウナの標準設備。
おっさんたちがつらい過去を吐露しながらロウリュがジュワァ。沁みるね。沁みるけどそのシチュエーションちょっと面白くなってしまうな。

俺このサウナ入れないと思うわ話聞きながら笑っちゃうから。いや、笑える話じゃないのはわかってるんですよ。それはわかってるんですが葬式で笑っちゃう蛭子さんみたいなもので…恰幅のいいでは済ませられないご立派体格のオッサンが屋外に設置されたキャンピングサウナに入る時に外で全裸になっちゃったりするのを見たら早いよ! お前もうそっからフルチンになっちゃってんのかよ! とか思ってしまいますからね。

ここらへんカルチャーギャップというか。フィンランドは全裸になってもあんまり怒られない国なんだと学びもありましたね。おっさんは下半身を露出したくなったらフィンランドに行こう。フィンランドなら脱いでも人生を棒に振らない。その学びはいるだろうか。いや、だからそういうふざけた映画じゃないんだよ!
ともかく、ロウリュを浴びれば身も心も浄化される。それがフィンランドサウナ。いいんだ、ここでは大のおっさんが泣いたっていいんだ。つらい過去は流してしまおう。そう、汗の中の涙のように…。

それ言いたいだけじゃんって俺も思ったよ。もっと真面目に観ろよとも思ったよ。ほかならぬ俺自身が思ったよ。でもなんか、なんか笑っちゃうんだってそのユーモアとペーソスの絶妙な塩梅に! まったく不思議な映画ですよ『サウナの在るところ』! おもしろかったです!

ちなみにいちばんクス笑いが出たシーンは熊の狼藉(大丈夫なのだろうかあの人)

【ママー!これ買ってー!】

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こちらはキッチンと男たちを仏頂面で観察し続けるスウェーデン映画。

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