ババァだってセックスしたい映画『X エックス』感想文

《推定睡眠時間:0分》

ポルノ映画のクルーが老夫婦の経営するテキサスの田舎農場を訪れたところこの老夫婦が狂人だったので大変なことにというお話の映画であるからしてカラミのシーンなどが接合部ボカシありで二度ほど出てくるわけですがその一方で全裸で登場の腐乱死体のイチモツはしっかりと画面に映っておりこれはあれでしょうか本物のチンマンはNGだけど作り物のチンマンならOKという判断なのでしょうか、腐って形崩れてますし。モザイクはいくら形骸化しているとしても公序良俗のため()の品行方正措置なのでしょうがこうなるとなんか逆に歪みを感じるぞ!

と日本のチンマンモザイクシステムにまずは物申したところで映画の感想でございますがこれはあれですよあれ、東京在住者でかつ面倒臭い映画オタクの人しかピンと来ないたとえで申し訳ないのですがカリコレとか未体験ゾーンで数回上映された後にレンタルビデオが出るやつ。この完成度とこの面白さならそのルートはほぼ確定に思えたもんだからよく一般劇場公開までこぎ着けたなしかもシネコンの、となんだか変なところで感心してしまいました。A24配給だからだろうか。『ミッドサマー』とか『ライトハウス』とかのA24配給ならそのブランド力で集客できるという判断なのかもしれませんこれ完全に想像。

お話。時は1979年、テキサス州ヒューストンにコカインで気分をアゲながらスタアを夢見るポルノ女優少女がおりました。彼女が中途半端に胡散臭いプロデューサーと監督兼脚本家兼カメラマン兼たぶん編集もという無駄に能力と熱意のあるディレクターとその助手兼恋人とカップルのポルノ女優&男優と共に向かったのは僻地の農場、そこには半ば廃墟化した離れの宿舎があるのだがプロデューサーはこれを一晩借りて農場を経営する老夫婦にナイショでポルノ映画を一本撮り上げようとしていたのでした。

途中近くの湖で泳いでいたらワニちゃんに襲われそうになるなどの微妙なトラブルもありつつ撮影は快調に進んでいく。ところがその夜、ポルノ一行が寝静まった後、宿舎に近寄る白い影がありました。それはこの農場の老夫婦の妻の方。実は遡ること数時間前、この老女は主人公ちゃんをおうちに招いてババァ謹製レモネードを飲ませつつ「あなたイイ顔をしてるわね…特別な顔よ…」とのたまったりカサカサの手で身体を撫でようとしたりのプチセクハラを働いていたのでした。更に、齢90を超えようかという夫に今日こそはと迫るものの「しかし心臓が…」と断られてもいて…ということは宿舎を訪れた目的はもうわかりますね、夜這いです。だが日本と違って夜這いカルチャーがないアメリカのことなので老女暴走! 血まみれの惨事となるのでした!

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たぶんA24史上もっとも血まみれと思われる映画なので照明やカット割りである程度誤魔化してしまうところは残念とはいえ指は手斧でパラパラと切り落とされ足と目玉にはクギがぎゃーっと刺さり頭はスイカ割りに壮絶に失敗した時みたいにぐちゃぐちゃに潰れるなかなかの残酷度。最近の流行に合わせたライトなホラーではなく本格的な田舎ホラーなので一つ一つの残酷描写をしっかり怖いものとして見せているあたり好感が持てます。俺好きじゃないんだよ最近の客を怖がらせる気のないパロディホラーみたいなやつ。

そこは良いのだが本格的な田舎ホラーを志向するあまりテンポがかなりまったりしているのは悪いところ。さすがに後半30分ぐらいはホラー展開が続くとはいえそれまでが長い…ポルノ撮影の映画なのだし中盤まではずっとエロシーンが続くとかならそれが面白いかどうかはともかく面白くしようとする工夫は伝わるが、エロシーンは存外少なく、代わりにダラダラと時間が割かれるのはポルノ一行の人間関係とリラックストークとかだったりする。もちろんそれがちゃーんと物語の中で生きてくるなら結構なことなのだが、生きてこないので単にダルいだけの前半戦になってしまった。

もっともこんな欠点はジャンル映画の場合大して問題にならない。要は見せ場が面白ければそれでいいのだが、その見せ場が連続する終盤30分、これもまぁ個々の残酷描写とかは良いのだがどうにもテンポが悪く緊張感も薄く…こちらはこちらでダルい。おじいちゃんおばあちゃんに俊敏に動けといっても無理な注文だろうが(『ヴィジット』という例外もあるが)動けないなら動けないで建物の作りを利用するとかすればもう少しサスペンスが演出できたんじゃないだろうか。そのへんうまくやった『ドント・ブリーズ』なんてお手本映画もあるわけだから。

性の抑圧のテーマや主人公の過去などいろいろ物語が語り切れてない気がするけどいやにあっさり終わったなぁと思ったらどうもこれ三部作の第一部だそうで(エンドロール後に前日譚の予告が付いてた)。設定と世界観を提示することに主眼を置いていたからこんな全体的にダルくて中途半端な作りになったのかと思えば合点は行くが、もうちょっと一本の映画として完成させてほしかった。キャラクターの勃ち…いや立ちは悪くないし(あのベトナム帰りのポルノ男優とか)残酷描写とか超高齢SEXとか面白いところは面白いんだから勿体ないとおもうのですよこれでは。

※あと、劇中の映画監督の「フランス映画のような前衛ポルノにしたい」っていう発言をなぞるかのような編集も散見されるんですが、とくに笑えることもなく驚かされることもなく、面白さに繋がっていない。そういう映画の面白さに貢献せずテーマやメッセージとも直接は結びつかない無意味な要素が多い映画だった。

【ママー!これ買ってー!】


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『X エックス』は『悪魔のいけにえ』(プラス『悪魔の沼』)オマージュの田舎ホラーだったわけですが『悪いけ』オマージュ系の中でもわりに良く出来ていたのがこの『ヒルズ・ラン・レッド』。映画を撮る映画というのも『X エックス』と共通するところです(撮るジャンルはかなり違いますが)

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