こんなのバズじゃねぇ映画『バズ・ライトイヤー』感想文

《推定ながら見時間:25分》

俺が言うまでもなくこの映画に関心を持つ人なら全員が知っていることでしょうけれどもこれ『トイ・ストーリー』のスピンオフで映画の冒頭に「1995年、アンディはバズ・ライトイヤーの人形を買ってもらった。バズはアンディが大好きな映画の主人公。これはその映画である」とかいうテロップが出るんですよ。で、その設定いらなくね? っていう感想、結構見る。俺もめちゃくちゃそう思った。

だってこれ90年代の映画にはマジで全然見えないんだもん。3DCGアニメですけど90年代アニメっぽいルックには当然なっていなくて、頭の中で実写に変換して観るとしても、90年代アメリカ映画の作劇とかトーンではまったくない。あまりにも90年代感がないので冒頭のテロップは客寄せのための後付けではと疑ってしまうぐらいっだし、実際たぶんそうなんじゃないすかねぇ。だってこれは小学生だかの男の子が熱狂してフィギュア買ってもらうような映画じゃないよ!

というのもですね、スペースレンジャーのバズが変な星に立ち寄ったらそこは殺人植物と殺人昆虫がうごめく魔星であったという導入部は画の弱さはどうしようもないがストーリー的にはまぁまぁ期待を持たせなくもない程度のものだったが、それから殺人植物も殺人昆虫もほとんど出てこなくなっちゃうんだよ。えーじゃないですか。なにその面白そうな設定の完全なる無駄遣い。もっと戦えよ殺人植物とか殺人昆虫と。っていうかその星の生態系をもっと見せろよなんで植物と昆虫一種類ずつしか出てこないんだよ。数十年に渡る物語なのに星の生態系が全然描かれないとか普通にダメじゃないですか?

そこで俺の心はひんやり冷めてしまっているので後はもうなんかごちゃごちゃやっているがどうでもよくなってしまった。これはちょっとピクサー映画として考えられないレベルのシナリオの練度不足。こんな風に映画に組み込む諸要素を広く浅くで掘り下げないなんてことはピクサー絶対しなかったんですよ。殺人生物の蠢く星が舞台ならそこはどういう世界なのかっていうのはしっかり見せたし、宇宙人の襲撃展開があればそれはどんな宇宙人なのかっていうのは面白く見せた。殺人生物に時間旅行に宇宙人の襲来でしょ。面白そうじゃないですか。でも面白くないんだよ、どれもおざなりだから。

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シナリオも問題だが絵的なつまらなさも相当なもので殺人生物も宇宙人もロボットも、加えて言えばバズを含めて人間たちさえも全部個性が薄く魅力がない。バズの同僚にして親友の女の人がいるのだがこの人とバズの関係はいくつかの定型的なやりとりで示されるだけで、そのエモーショナルな繋がりは表情からも仕草からもまったく見えてこない、したがって二人の別れのシーンも驚くほど響かない。ここにはごく基本的なカメラの問題もあるように思える。具体的に言えば、引きの絵が非常に多い。ここではアップにしてここでは引いてというメリハリがなく、編集もまた一本調子で何を強調することもないので、盛り上がりそうなシーンやエピソードでもなんだかダイジェストのように右から左へ流れてしまうのだ。

どうしたもんかなこれは。あえて言えば、たとえばこれがピクサーじゃなくてドリームワークスあたりのオリジナルタイトルだとしたら、そんなには面白くないけどまぁまぁ観れるってレベルでそこまで不満を感じたりはしないと思うんですよね俺は。だけどピクサーでしょ? 腐ってもピクサーと言いたいところだけどこれは単に腐ってるだけだよ。本当にピクサー的なディティールの拘りとか巧みなシナリオとか奇抜だけど愛嬌のあるキャラクターとかイマジネーションとかユーモアとかセンスとか知性とかオール無いんだよ。

この監督・脚本コンビは『ファインディング・ドリー』の人たちらしいですけどちょっとそれが信じられないですよ。なんで『ドリー』作れた人がこんな気の抜けた炭酸水みたいな映画しか作れないんだよ。しかもピクサーの看板『トイ・ストーリー』のスピンオフで。てか『トイ・ストーリー』のバズらしさも別にねぇじゃん。あぁこれこれ、これがバズだよねぇ~ってならなきゃダメくないスピンオフとして?

これは完全に俺の想像ですけどたぶんねこのシナリオって最初からバズの映画として作られたんじゃないんですよ。元々はクレジットされてる脚本家かそうじゃない脚本家は知りませんけど誰かの持ってたオリジナルの企画で、バズのスピンオフ作りたいけどシナリオどうしようって時にこのオリジナル・シナリオを土台にするってのを誰か思いついたんじゃないですか。宇宙が舞台だしちょうどいいじゃんみたいな。

そうかどうかはともかくそれぐらい浅はかな映画に見える。いや浅はかでもなんでも面白ければいいんだけど、本当にさぁ、ギャグは笑えないしアクションは退屈だしスリルもなければ展開に大した捻りもない…とまで言えば言いすぎにはなるだろうが、劇場公開されるピクサー映画でこのレベルだったらそれぐらい言いたくなるって!

※それから俺これ吹き替えで観たんですけどバズのお供をする猫型ロボットのお笑い芸人吹き替えがつまらないを通り越して不快でした。

【ママー!これ買ってー!】


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バズの単独スピンオフは今回の映画以前にもこれがあるが、どうも不評だったようで(TVシリーズ化の予定だったが頓挫したらしい)、今回は仕切り直して正反対のタッチで…というつもりだったのだろう。仕切り直したら正反対の方向につまらなくなってしまった。

2022/7/24追記:
シリーズ化頓挫と書いてますがちゃんと製作されてディズニーチャンネルで放送されたとコメントで教えて貰いましたので追記しときます。

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パン毒
パン毒
2022年7月9日 4:21 AM

トイ・ストーリーのスピンオフということで、どうしてもハードルは高い訳ですが、うーんって感じです。
いや、つまらない訳ではなくて面白くはあるんですよ。要はバズの尻拭いの話じゃないですかコレ。そこにスペースオペラな設定にオフビートなギャグを詰め込んでるので一定の点は取り続けてるんすよ。
ただどうしても納得できないシーンがあって、そこで自分の中で冷めちゃって。それが”バズがザーグの中身を父さんと見間違える”シーンです。
説明すると2ではザーグがバズに「私はお前の父だ」と言うシーンがあるんですよ。(スターウォーズのパロディです)
今回、ザーグの正体を変えてしまったが為に前作への言い訳的にこのシーンを入れてるわけです。上手くやりようがあるのにファンサービス止まりなんですよ。

パン毒
パン毒
Reply to  パン毒
2022年7月9日 4:25 AM

(続き)2では劇中で、テレビ番組のバズライトイヤーが存在してて、どうやら劇場版の派生でテレビ版も作られてるらしいんですね。バズ本人の玩具も劇中に出てくるバズのゲームもテレビ版の方の設定らしくて。
ただそれって上記のシーンでやっと予測できるんですよ。現に序盤は2で登場したテレビ版と同じ設定だと思って見てましたし。つまり2を見てるとかえって分かりにくくて。
これをディズニープラス独占でレッサパンダを劇場公開でよかったのに。

りゅぬぁってゃ
りゅぬぁってゃ
2022年7月14日 7:29 AM

『バズ・ライトイヤー 帝王ザーグを倒せ!』のほうは、リトルグリーンメンの大ファンならオススメします。

裏主人公としてバズより活躍してる時あるし、メインストーリーも「ザーグがグリーンメンの星の国宝を盗み、それを元に『全人類洗脳装置』を作って宇宙を支配しようとする」ってスケールの大きい話です。

トイストーリーとの関連性は、冒頭バズとウッディ達が アンディの留守を見計らってビデオ鑑賞をするってスタートでした。

りゅぬぁってゃ
りゅぬぁってゃ
Reply to  さわだ
2022年7月14日 5:55 PM

テレビ特番として作られたために、アスペクト比が4:3で作画枚数がディズニーにしては少ないのと(それでも日本のアニメより動きますが)

ノルマめいたギャグシーンあるのが 好き嫌い分かれるところかも?
それでも「ディズニー初のSFアニメ」って点では重要な作品らしいです。

グリーンメンがバズと同一コンテンツのキャラクターだった って後付け設定も、全然違和感がなかったので。

シダー
シダー
2022年7月22日 7:36 AM

バズのアニメは1シーズン65話だけですがちゃんと放送されていますよ。
ディズニー・チャンネルで見てました。
稲葉実さんのちょっといやみったらしい声が所さんよりも頑固な正義感という感じにあっていると思いました。