原作未読で『BLEACH』感想(ネタバレ微妙にあるかもしれない)

《推定睡眠時間:10分》

一番テンションが上がった場面は福士蒼汰の黒崎一護がそこに座って漫画を読む杉咲花の朽木ルキアごとタイヤを引きずる特訓場面で、そんな漫画な! 唖然とさせられるがその唖然に決して背を向けない愚直なまでの漫画映画っぷりに興奮&感動。
ジャンプを毎週読んでいた頃も『BLEACH』は宗教上の理由で飛ばしていたので果たして原作(最後に「死神代行編」と出るのでコミックスの最初の数巻あたりっぽい)がこんなテイストかどうかは知らないが、漫画いやひらがなでまんが、これぞまんが映画だと言いたくなる圧巻の中二、本気の子供騙し感に脳が痺れる実写映画版『BLEACH』だ。これは三池版『ジョジョの奇妙な冒険』に並んだな。じつにすばらしいとおもう。

ジャンプ本誌では基本的に飛ばしていたとはいえなんかの拍子に軽くを目を通すこともないではなかった。ないではなかったが基本的なプロットが頭に入っていないので急に読んでみたところでなにが描かれているのかまったくわからないからおもしろくない。
週刊連載と違って実写映画版はそのへん初見の人にもやさしい作りになっていたのでようやくなんの話か理解する。なるほど死神代行。世の中には良い幽霊と悪い幽霊〈ホロー〉がいて、杉咲ルキアとか朽木MIYAVIとかのビジュアル系死神が良い幽霊は霊界〈ソウル・ソサエティ〉に連れて行ってあげて、悪い幽霊は刀で斬って退治したりしている。
で、霊圧(?)とかいったと思うが強い霊感持ちの高校生・黒崎一護はなんやかんやあってルキアの代わりに死神を代行する羽目になって、ルキアが追っている大型ホローの〈グランドフィッシャー〉を狩ることになるのであった。完全に『幽遊白書』ホロアーじゃないか。

それにしても、外はものすごい暑さのはずなのにソウル・ソサエティとかグランドフィッシャーとか書いていると不思議と背筋がひんやりとしてくる。
書いているだけでも冷気を感じるのだから観ている時はその比ではなかったが、最初からそういうノリだったらたぶん逆にスーパー戦隊ものみたいな暖気になっていたんだろうと思えるのはタイトルバックとかなんかやたら垢抜けていて格好良いから。

堤幸彦風というかカイル・クーパー風というかなコラージュ系。刀に反射するモノクロの都市風景タイムラプス。 音楽は佐藤信介組のやまだ豊という人で、それこそ『セブン』的に冷たい無気味な…良いのですがこのオープニングがシリアス路線なものだからそのあと初期幽白的アクションギャグの方向に舵を切るが観ているこっちはオープニングを引きずってしまってあんま笑えない。
という一方でソウル・ソサエティとかグランドフィッシャーみたいなブリーチしたおもしろい台詞が出てくる場面は大真面目だったりするんだからその寒暖差に体温調節が追いつかない感じでしたよね。

いやでもそこがいいんだよみたいな話だからな。そこがいいんですよこれは。そのちぐはぐが。たぶんバトル系の週刊連載少年漫画をストレートに映像化するってこういうことですよ。
幽白だって1巻と6巻で既に全然トーン違うじゃん。最初タヌキのイイ話みたいのやってたのに6巻とか垂金だからね。戸愚呂弟が垂金の首ブシュって飛ばしたりするわけだから。オレンジジュースくださいとかになるわけでしょうがそれは7巻か8巻ぐらいかもしれないが。

そういう週刊連載のダイナミズムから原作のエッセンスを抽出して二時間の映画にしようとしたら綺麗にまとまるわけがないんですよ。そこで変にまとめたら映画としての整合性は取れるかもしれないが、でも確実に週刊連載漫画としての原作の持ち味は削がれると思うんですよ。いや俺『BLEACH』読んでないからそのへん知りませんけど。
とそのような意味でたいへん面白かったという話。確かにちぐはぐかもしれないが。設定周りのくどい説明が逆に展開の無理を感じさせる結果になっているような気もするが。その説明と前置きが長いのでバトルが始まるまでに眠くなってしまうが。要するにエピソードと世界観の取捨選択と再構築がシナリオのレベルでできていないのだと思われるが、それがかえって良い。

だってここには週刊連載的なものが全部あるわけですよ。福士蒼汰の笑えないノリツッコミ(これがしつこい)があってさ、杉咲花の恥ずかしい台詞回しがあってさ、わりと没個性的な怪物が出てきてさ、その怪物が市街地を破壊して回ってさ、FF7のクラウドみたいに大剣を構えた福士蒼汰がそいつと闘って、そしたらなんか蔵馬ポジションの霊界探偵みたいなやつも加勢して霊力ボウでブシュッブシュッてやってですね、おぉすげぇ超まんが超週刊連載のバトルまんがっぽいって思ってたらガッチガチのビジュアル系ビジュアルで固めたMIYAVIと早乙女太一が乱入してきて福士蒼汰と蹴り技を交えた喧嘩殺陣をおっぱじめるんですよ! うわぁ! 盛ったぁぁぁ! なんかもう全方位的に消化不良だけれども全部盛ったぁぁぁ! 超おもしろいとおもうよこんなの。

個人的みどころを挙げればというか観た人はたぶん全員そこをみどころに挙げると思うので全然個人的じゃないがアクション監督:下村勇二の喧嘩殺陣はあれ最高すよ最高、振り付けもいいしオブジェクトの使い方もいいしそれに、『曇天に笑う』や『無限の住人』で立ち回りを磨いてきた福士蒼汰の動きはうつくしい。
あと死神連中のキザったらしいバタ臭演技とか。押し入れで寝る杉咲花のドラえもんmeets幻海っぷりとか。そうだ、杉咲花といえばこれはこれだけは言っておかなければいけない気がしたが、杉咲花が劇中で使っていた超絶ダサい死神レーダー的なやつを見て俺は思ったのだ、この絵面は部分的に安達祐実の『青龍伝説』と通ずるのではないかと…あるいはこのオカルト趣味のクソダサ感覚は『木曜怪奇倶楽部』とか『銀狼怪奇ファイル』とかの90年代子供騙しドラマにも見られたものではないか?

泣いてないので泣いたなどと嘘は書きませんが止めどなく溢れる恥ずかしノスタルジーにこころは泣いた。

【ママー!これ買ってー!】


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これはもう何度も繰り返し述べているがジョジョの実写映画化とかいう無理難題をこれだけ手堅く可能な限り原作を生かしてまとめた三池崇史には頭が垂れてひっくリ返るのでジョジョ好きと言わず暇な人全員に見て欲しいしさすがに一章だけやって企画立ち消えはねぇだろとタカをくくっていたが本当に続編が無い可能性が出てきたのでむしろ暇がなくても見ろ、見て俺たちは続編を心待ちにしているとワーナーブラザース・ジャパンに示してくれ!(心待ちにしているのだろうか)

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