映画『オーヴァーロード』感想文(ネタバレと悪口あり)

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《推定睡眠時間:0分》

ナチスの妨害電波塔をぶっ潰すためにフランスの小村に送り込まれたメリケン部隊がナチ秘蔵のゾンビ・ソルジャーと大バトル!
っていうのがネタバレに当たるかどうかわからなかったのでネタバレ扱いにしておきますけどでも知らないでも雰囲気で分かるよな、なんとなく。

ツイッターとか見ててもジャンル映画に目がない映画好きな人たちがあの映画みたいとかこの映画みたいとかタイトルを挙げて褒めているから内容モロバレですよ。『ザ・キープ』みたいとか『武器人間』みたい、とかね。俺としてはそこに『ゾンビ・ソルジャー』とか『ゾンビ・コップ』とか『死霊のしたたり2』とか『怪奇!呪いの生体実験』とか『特攻大作戦』を加えたいがそこまで言ってしまったらもはや内容を語らずして映画の九割ぐらいを語ってしまっている感じである。

なんだったら小島監督が絶賛してそうな映画って言うだけでも大体の内容がわかってしまうからとにかくネタバレの敷居が異常に低い。果たして小島監督が推薦コメント的なものを寄せているかどうかは知らないが小島監督が絶賛しそうな映画という映画ジャンルであることは間違いない。そういえば『メタルギア2 ソリッド・スネーク』とか『メタルギア・ソリッド』を思わせる場面もあった(いやマジで)

つまりは界隈あるあるの嵐。枠で言えば大ケッ作『ドゥームズデイ』の枠。オリジナリティとか新味とかそんなものはミジンコほどもないがオタクの好きなあんな映画こんな映画から美味しいところだけつまみ食いしたジャンル映画の贅沢ビュッフェ。
そんなにオタク料理ばっかりプレートに乗せたら臭いんじゃないのという気もするが大丈夫です『オーヴァーロード』臭くないです。ちゃんとスイーツ女子男子の口なんかにも合うようマイルドに調整済み。しかもスプラッター描写やグロ描写は控えめでたいへんヘルシー(ゾンビ研究所のビジュアルはそれなりにおぞましいが)

安定感だな。ようするに安定感がすごい映画だ。全体的におもしろいが飛び抜けておもしろいところはない。全体的にえげつないが飛び抜けてえげつないところはない。全体的に…まぁとにかくウェルメイドということです。
ラストは主人公らの犠牲と頑張りで妨害電波塔を大爆破、そのおかげで航空支援ができるようになってノルマンディー作戦も無事成功しましたとさというわけでスカっと爽やか。後腐れのない大変いいきぶんで映画館を後に出来る。

あまりにいい気分すぎてすぐに観た内容を忘れてしまいそうだが、ナチの掘り起こした禁断の蘇生タールの恐怖を目の当たりにした主人公のジャスティス一等兵(※正式名称ではありません)がタールの存在を上に報告しなかったように、こんなものは忘れるが吉ということなんだろう。

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褒めるところは褒めたので後は悪口のコーナーです。こっから全部悪口になります。タールだ、タールの仕業だ。あのタールが俺の身体に染みこんで悪口を吐かせるのだ! 全部ナチが悪い。

いやぁ、ドイツ兵、弱かったなぁ。最初の10分ぐらいは空の『プライベート・ライアン』という感じでこれはと身を乗り出すわけですが不時着して例の電波塔の設置された小村に着くと劇的にトーンダウン。
なんですかあの無気力ドイツ兵は。ざっくり40人ぐらい電波塔兼極秘研究施設の置かれた古城教会を警備しているわけですがたった4人のアメリカ兵+民間人1人に全滅させられてやんの。

捕まえた兵隊をサイドカー付きのバイクに拘束して教会の正門に特攻させるとかそんな雑な作戦で大打撃を受けるゲノム兵なみの低スペックAIっぷりも酷いし大人でも屈めば通れる明らかな抜け道水路を塞ぎもしなけりゃ見張りもしないザル警備っぷりも酷い。怒った村の女にバンバン撃ち殺されたりしちゃってお前ら何のために武装してんだよって感じです。

だいたい妨害電波塔と極秘研究施設を同じ場所に置くとか無能にも程がありますよ。そんなことしたら絶対連合軍の標的になるじゃん。ゾンビソルジャー研究が成功したら戦争の趨勢は一気に逆転するかもしれないしいや仮にしなくてもですよ、ヒトラーは超よろこんで自分に不死薬注射すると思うんですよ。
そんな大事な研究をわざわざ目に付くところでやっちゃダメだよね。『武器人間』みたいに目立たないところでこっそりやらないと。

そういうところ甘いんだよ。そういう設定の部分も甘いし演出も甘いし。ピンチの時にはいつの間にか敵の後ろに味方が来ている的な工夫のないアクションシーンの連続にはこれはパロディなんだろうかと思わされる。
あとキャラクターも甘い。引っ捕らえたナチの小隊長みたいなやつの拷問シーンとかただ殴るだけなんですけどそれを見た主人公のジャスティス一等兵めちゃくちゃ怒りますからね、これじゃナチスと同じじゃないか! みたいなこと言って。

ナチをなんだと思っているんだお前は。ナチっていうか戦争をなんだと思っているんだ。電波塔を爆破しろっていう上官の命令を中にいる子供が犠牲になるかもしれないっつって拒否するとか人としては正しいが兵士として超ダメだろう。ノルマンディー上陸作戦の成否はお前にかかっているかもしれないんだぞ。兵士としての自覚を持てよ自覚を。出撃前にガンダムでも観ろよお前は!

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いや別にそういう葛藤はわかりますけど兵士か人かみたいな葛藤を描くんならそれ相応の極限状況が伴ってないとダメだろうって話であって。あるいは逆にノルマンディー上陸作戦みたいな大きな語を背景に置いちゃダメだろうって話であって。
なんていうかすげぇ現代的な価値観の上にこの主人公は置かれてるんですよね。だから敵とはいえ無抵抗の相手をめちゃくちゃ殴ってるっていうだけでもう倫理的にはダメってなる。

でもそれってさぁ、あまりに歴史とか戦争とかっていうのを軽視してないすかねぇ。しょせん明日には忘れるタイプの小島監督が絶賛するジャンルの映画だからと言われたら一言もないが(※言われないが)、でもこういうお話は戦争の狂気を現代とは別の価値観の中で正面から描くからホラーたり得るっていうところ、ないすかねぇ。

俺これ全然怖くなかったんですよ。ドイツ兵がクソ弱いし戦争状況の中に置かれた人間がどう狂っていくかっていうことがその暴力や死も含めてまともに描かれていなかったから。
それでゾンビソルジャー研究がどうのとかやられても出来の悪いスーパーヒーロー映画みたいにしか見えないよね。実際、ゾンビっていうか怪人みたいな感じでしたよ、ゾンビソルジャーの見た目。

あーあ、せめてゾンビソルジャーが暴れまくってくれたらよかったのにな。残念ながらそれもない。主人公一行を匿う村の女かその子供がゾンビ化してジャスティス一等兵に襲いかかるぐらいのことはしてくれても良かったのに…でもそんなささやかな(ゾンビ映画的)興趣すらこの映画にはない。
狂気に染まった件の悪い将校が自分で自分に蘇生薬を打ってバイオハザードで言うところのタイラントになるわけですが、こいつだけ主人公一行と戦わせてもそんなもん大して面白くないんですよ、どうせ元から悪いやつなんだし。

俺がシナリオを書いていたら理性を失ったこいつが研究施設内で一暴れしてゾンビ被験者を大解放っていう場面を絶対に入れるな。もう絶対入れますよ。その背景として軍人と研究者の対立構図を描きつつ…つまりナチが内部崩壊して漁夫の利を得た4人の米兵が圧倒的な戦力差から不可能と思われた電波塔爆破に成功するわけ。ほら、そしたらなんか見た目に派手な感じだし、ストーリーにもちょっとした捻りがあって面白くないですか?

でもこの映画はその程度の気の利いたことさえしてくれないので4人のアメリカ兵が撃ちまくってたら40人超のドイツ兵の防衛線をいつの間にか突破できましたみたいな感じになるのだった。

まとめると、ようするに、ヌルい。ヌルいから勧善懲悪単純明快痛快爆発米国万歳でおもしろいというところもあるので良し悪しかもしれませんが、でもヌルかった。かなり相当ヌルかった…。

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どうせ死体蘇生をやるんならウェスト博士ぐらい本気でやってほしい。指とか目玉とかくっつけてペット作るんだぞウェスト博士は! 生命の冒涜!

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