ドラえもんだろ映画『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』感想文

《推定睡眠時間:60分》

たぶんシリーズで唯一スピルバーグが監督してない映画がこの『運命のダイヤル』だと思うんですけど違う人が監督してるなぁと感じたのが最初インディが登場する時にバンッ! って出てくる。「兵士に化けた変な奴を見つけました!」「なに!? そいつは何者だ! その頭巾を取れ!」でナチ兵が捕虜にしたそいつの頭巾を取ると顔が若いインディ。わかりますかねこれ言いたいこと。スピルバーグってキャラクターとか怪獣とかを初登場させる場面ですごい煽るじゃないですか。断片的なショットを重ねたりゆったりした移動撮影とかズーミングでじわじわと被写体に迫って来るぞ来るぞ来るぞ…来たぁぁぁぁぁ! って撮る。でもこの映画は最初に連合国とナチが戦闘中のどこかの街の様々な風景をインディとは関係なく並べておいてそこに突然インディが出てくる。煽りの演出じゃなくてサプライズの演出なんですよね。だからそれを見た時にあ、前のインディとは違うんだ、と思って、良くも悪くもなんかその冒頭でもう吹っ切れたよね。これはこれで別物として楽しめばいいんだなっていう。ごめん嘘たのしめたのは本当だけど吹っ切れたっていうのは嘘だわ。

や~やっぱ『インディ・ジョーンズ』シリーズの最新作にして(今のところ)最終作ですからねぇ~。いや~おもしろいんだがおもしろいんだがいや~ナチスとかその残党と戦ったりしすぎ! これはどこに『インディ・ジョーンズ』というシリーズの面白さを見出すかという話なのだが俺の場合は殺人トラップいっぱいの洞窟なんですよ! シリーズ通してインディが戦ってるナチスというのはこれはあくまでも俺史観によればなのだが殺人トラップいっぱいの洞窟にわざわざ先に入ってそこにどんなトラップがあってどんな風に死ぬかを見せてくれるデモ画面的な要因なのであって、何もナチスとインディの戦いがそこまで面白いわけでは…いや無いとまでは断言できないのだけれども!

でもこれはちょっとそのパートが長すぎだな。最初の一時間ぐらいずっと新たなる仲間を獲得したインディ一チームとマッツ・ミケルセン率いるナチス残党チームが追っかけっこしながら戦ってて全然殺人トラップ満載の洞窟に入らないじゃないか! しかもやっと入ったと思ったら殺人トラップが一つかそこらしかない! 『刻命館』だったら完全に負けてるぞとあまりに懐かしいたとえが出てきてしまったのは最近PSゲー発掘にハマってるからです。もう少しわかりやすいたとえを言えば『とられてたまるか!?』だったら明石家さんま演じるハイテク泥棒に武田鉄矢の家は攻略されてたねという感じだがそれもまた懐かしいなおいいつの映画なんだよ! かつて、おそらくは『インディー・ジョーンズ』や『ホーム・アローン』の影響で殺人トラップが映画業界を席巻した時代があったのだ…。

というわけで大玉が転がってきたり隠し刃物がギャンギャン飛んできたりトゲトゲのついた天井がゴゴゴゴと床まで下がってきたりという人間をいかにして面白い方法で殺すかという古代の叡智の詰まった無駄に楽しい殺人トラップ満載の洞窟を期待すると今回はちょっといやかなり肩透かし、ナチスの残党との戦いというのもまぁ前作『クリスタル・スカルの王国』で第二次世界大戦終結後まで時間を進めてしまったので仕方が無いことかもしれないが戦中じゃないからな~、しょせん残党だしな~。カーチェイスとか迫力はあるのだがさすがに他のシリーズ作と比べると緊張感は薄い。

その代わり俺は寝ていたのでよくわからないが今回はドラマ面を重視したようで、俺は寝ていたのでよくわからないがチーム・インディを構成し今や歳でろくに動けないオールド・インディに代わって数々のアクションをこなすヤングウーマンと手癖の悪いガキのコンビは、インディの私生活と関係のある人らしい。このへん『インディー・ジョーンズ』に求めるものはなによりもまず殺人トラップ満載の洞窟という俺には比較的どうでもよかったりするところではあるが、シリーズをちゃんと真面目に観てきた人にはちょっと泣ける展開なのかもしれない。俺はハリソン・フォードはそのうち死ぬから死んでもシリーズのブランド使って金稼ぎを続けるための襲名準備みたいなもんだろなとか思っていた。

と文句ばかりになっているが最終的にダイヤルだけになかなか針の振り切れた展開になったのでそれまで寝ていた分だけ驚きも大きく結果、満足。まぁ『クリスタル・スカルの王国』もだいぶトンデモ方向に舵を切っていたからそれを踏まえればおかしなことではないのだが、なんというかこれではまるで映画ドラえもんである。っていうかこういう展開とか伏線回収とか観たことあるぞ映画ドラえもんで。これまで『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のように主題と副題に接続詞を付けてこなかったシリーズ邦題がここへきて『インディー・ジョーンズと運命のダイヤル』と接続詞ありになったのは『映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城』といった映画ドラえもんの命名規則に倣ったのかもしれない。ちなみに海底鬼岩城はのび太のものではないのでこのタイトルはわりと嘘である。

そういえば『インディー・ジョーンズ』シリーズといえばグロテスクな残酷描写が見所の一つだったと思うのだが今回はそれもなし。お金を出しているところがディズニーだからご家族楽しく観られる映画にしてくださいねと釘を刺されていたのかもしれない。なんだか考えれば考えるほど大人の事情がその薄味っぷりに見え隠れして悲しくなってくるが、まぁね、今回はインディっていうかちょっと『ルパン三世』味の入った映画ドラえもんだから。俺は映画ドラえもんは世界で一番面白い映画シリーズだと思っているので楽しく観られたということです。

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100回以上観てる気がするがまだ面白い。

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2 Comments
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カモン
カモン
2023年7月3日 1:55 AM

そのうち死ぬ、はやめなさい。『そのうち』は笑