ダークおとぎ話映画『イビルアイ』感想文

《推定睡眠時間:15分》

なんとかエステバンみたいな感じのこの映画の監督は変なホラーばかり撮る人だとツイッターで見ていてこれの公開に合わせて東京のメイン上映館ヒューマントラストシネマ渋谷では監督の過去作も特別上映していたからさぞや作家性の強い監督で『イビルアイ』も変な映画なのだろうと思っていたが変に期待しすぎたのか肩透かしを食らってしまった。

別につまらないという意味ではないが老婆の眉間がばっくり裂けた不吉なポスターのインパクトは超えてこなかったなっていうか、あれ結構素直な感じの民話ホラーじゃないこれ…みたいな。その語り口も素朴と言っていいほどで最近流行りの田舎ホラーは説明を全然しないことで観客に異様な印象を与える手口があまりにも多すぎるが、よくわからん不治の病に罹って余命数ヶ月というまだ小さな娘を救うために娘とその姉(こっちが主人公)が田舎の祖母邸に預けられることから一応田舎ホラーの片隅には属するだろうと思われるこの『イビルアイ』の方はといえば結構最初の方で劇中の不可思議現象の8割ぐらいを説明してしまい、腑に落ちないところは全然ない。

どちらかといえばこれはホラーというよりもいやまぁバケモノは出てくるからホラーはホラーなのだがあんまりコワい感じもないしダークおとぎ話といった方がいいんだろうな。ババァもね、なんかコワいババァじゃないのよ。コワいババァって何考えてんのかわかんないとか生きてるのか死んでるのかわかんないとかそういうやつじゃん。でもこの映画に出てくるイビルババァは背筋のシャキッとした厳格なババァで孫をまさしくイビるようなシーンはあるが不気味さはない。だからおとぎ話感が出るっていうかね。なんかそういうやつあるじゃん、意地悪な継母のもとで暮らすようになったいたいけな少女が…とか。

あと音楽演出とかもわりとガンガンとドラマティックなスコアを流すもんで悲劇感は出るけど怖さは薄いんだよな。だからギレルモ・デル・トロの映画なんかに近いのかもしれない。デル・トロの映画も『パンズ・ラビリンス』とかホラーっていうよりはダークおとぎ話感強いでしょ。バケモノっていうか妖怪みたいなの出てくるし、そっちの路線の映画だよね『イビルアイ』は。

面白いかつまらないかで言えば面白い映画だとは思うけれども、まぁなんというか、何を求めるかで評価が変わる映画かもしれないなこれは。ダークおとぎ話としても世界観やディテールの作り込みが浅くてそこまで魅力的ではないのだけれども。

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ということであんま関連性はないがデル・トロのスペイン時代のダークおとぎ話を。

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