エクスプロイ定食おかず大盛り映画『マッドハイジ』感想文

《推定睡眠時間:0分》

映画館で日本版予告編を(何度も)見ての印象はいや面白いわけないだろっていうものでニコ動的な寒いノリの吹き替えもさることながらエクスプロイテーション映画(要は金を稼ぐことだけを目的とした扇情的なB級C級映画のこと)の語にスイスをくっつけた造語スイスプロイテーション映画を謳ういわゆるグラインドハウス感がもうまったく、まったく面白くない。ハイジが狂戦士化したら面白いでしょう? →面白くない。ハイジなのにゴアとか出てきちゃったら面白いでしょ? →面白くない。スイスだから悪い奴がチーズを武器にしちゃったりして面白いでしょ? →いい加減にしろ。だいたいスイスプロイテーションとかいう造語からしてつまらなすぎる。スイスプロイテーションを面白いと考えるセンスの持ち主が作った映画に期待などできるわけがないだろ。

ところがどっこい観たら面白かった。こんなにセンスの無い道具立てをしておいて面白いなんてすごい。点数でいえば40点満点中の75点ぐらいの面白さ。いや、これは結構すごいことですよあなた! 微妙すぎて伝わりにくいかもしれないが…。ともかくこれは面白い映画でストーリーとかは非常にどうでもいいものだが(悪いやつをハイジが倒すとだけ頭に入れとけばいい)様々なエクスプロイテーション映画のジャンルをテンポ良く横断して飽きさせない、厳密にはこの映画の敵はナチスではないがナチスをイメージさせる悪徳企業が敵なのでナチスプロイテーション映画の要素がまずあり、ハイセンスな黒人ピンプのようなチーズ売りが出てくるところはブラックスプロイテーション的、これはナチスプロイテーションの一部とも言えるが女囚スプロイテーションの展開を見せたかと思えば尼僧の元でハイジが修行を積むナンスプロイテーションの要素まである。

エクスプロイテーション映画の核になるのはショックとかアクションとかどんなバカでも見りゃわかるジャンル映画的見せ場であるからして様々なエクスプロイテーション映画のジャンルを横断するということはバカでもわかるコンテクストの低い見せ場の連続ということである。銃撃に次ぐ銃撃(安いが)、おっぱいに次ぐおっぱい(おっぱい丸出し秘書の人はおっぱいも筋肉もキレイでかなり好き)、サスペンスに次ぐサスペンスにアクションに次ぐアクション、そしてゴアに次ぐゴア。いずれも単体では貧弱なものばかりだがそれでも質より量を地で行くこの牛丼屋的サービス精神、これには逆張りの鬼こと俺でもキャッキャと無邪気に喜んでしまう。その上わずか三体だけではあるが毒々チーズを食ったチーズゾンビまでしっかり出てくるんですからネ!

悪役の死に様がやけにアッサリしているあたりはもうちょっと派手に殺してもいいのにとは思うし今回は尺の都合でクララがまだ立ってないので(次回作はハイジ&クララだそうです)ハイジとおじいさん以外の元ネタ側のキャラがあまり物語に絡んでこなくて残念といえば残念、しかしまぁしょせんというのもなんだがクラファンで集めた金だけで作ったインディーズ映画なのだしそんな重箱の隅をつつくようなことを言っても仕方がない。闘技場でのハイジVSはなかなか燃えたしバッドテイストだけれども過剰なところはなく案外真面目な(?)勧善懲悪ものがたりになっているので後味スッキリ、キャラも立っていてとくに悪の総統の右腕の軍人めっちゃ良かったな。これ以上こんな映画に何か望むのはちょっと欲張りというものです。680円の牛丼屋の定食にキャビアが入ってなかったからといって店の人にクレームを入れる人がいますかあなた。いやいるかもしれないけどいたらその人はどうかしてます! こんなどう見ても40点満点の映画で75点も出されたらこちら貧乏庶民としてはありがてーありがてーうめーうめーと謙虚にいただくしかない。

ちなみに観たのは字幕版で吹き替え版は観てません。たぶんそっちは観ないと思います(いや、配給さんの熱意とか努力はわかるんですけれどもさ)

【ママー!これ買ってー!】


ハイジ (福音館古典童話シリーズ) 単行本

よく考えたらハイジの原作って読んだことないしアニメもちゃんと見たことなかった。

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