先生の次回作にご期待下さい映画『キングダム 運命の炎』感想文

《推定睡眠時間:15分》

佐藤信介の映画にストーリーの面白さとか気の利いた描写とかは別に求めていないとはいえこれはまたずいぶんな脚本だなー原作解釈どうなってるのと思ったら原作者の原泰久が一作目から脚本でも参加していた。ギャフン! それでこの程度の…と観ている間は思っていたがむしろ逆に原作者が脚本に入っているからこそこんな感じのシナリオになったのではないか説がのちに浮上、長期連載漫画の実写映画化というのはむずかしいものだなぁとか思ったりした。

これは一作目から続くある意味『キングダム』名物とも言えるがとにかく人間描写が浅く造形はステロタイプ、その台詞は陳腐で聴くに堪えない。「〇〇のヤロウ…やるじゃねぇか!」みたいなクサい独り言をみんな普通に言う狂った世界なのだが、これはおそらく漫画リアリティというもので、漫画の一コマならこれは別に気にならない。でも実写でやるとなると…いくら紀元前中国の半ばファンタジーな舞台設定とはいえ、いやそんなやつはいないだろとなる。こんな感じのその1。

こんな感じのその2は構成にあった。この映画、映画が始まって一時間経っても戦闘が出てこない。それまで何をダラダラやっているのかというと吉沢亮演じる秦王の過去のエピソードをやってる。上映時間の半分も使って過去編をやってるんだからこれは後半の合戦シーンに生きてくるんだろうなと思ったら秦王は王様だから前線出てくることもないし全然関係なくて本当に少しだけだが動揺してしまった。いやいや、これでは連続ドラマの繋ぎエピソードと見せ場エピソードを単にくっつけただけみたいじゃないか。しかし週刊連載漫画ならまぁそういう話の続け方はよくあるよな。よくあるし読んでる方もずっと同じ絵が続くよりは急に回想編とかに入ったりした方が緩急あって面白いんじゃないか。

つまりこの映画のシナリオというのは漫画だったら面白いもの、読者が好むものをそのまま実写映画に持ち込んでいるわけで、連載漫画かそれに近い連続ドラマ・連続アニメのシナリオとして考えたらまぁまぁ違和感はないが、2時間の長編映画のシナリオとして考えたらかなり違和感すごい。それでも大した不満もなく多くの観客に受け入れられているようなので今のシネコン映画の観客は映画を短い時間が代わりに音がでかい連続ドラマぐらいにしか思ってないということだろう。俺の感覚が古いのだろうか…とは思ってないので書かない。悪いのは映画を観るセンスがないお前らです。

とはいえそういう時代のシネコン映画とわかってもやはり最初の1時間くらいいささか退屈が過ぎやしないかと思う。佐藤信介という監督の映画はそれはもう昔からドラマ部分は下手で青臭くて気恥ずかしくて見ていられずアクションシーンだけすごいかったわけであるが今回はその下手なドラマが前半1時間というスペシャルサービスなわけですからそれは目のやり場に困ります。しかもそれが後半の合戦シーンにまったく関係ないとなると…! それにアクションシーンだけはすごいといっても基本的には殺陣を軸とした少人数の戦いがすごいということであって、アクション監督:下村勇二の手腕が発揮された殺陣は前作ほどではないにしても今回も面白いが、合戦の迫力は明らかにその規模に相応のものではない。

俺流の作劇理論によれば連続ドラマや連載漫画などは足し算の論理を基礎としていてエピソード毎にどんどん新しい展開や設定やキャラクターを追加していくことで尻上がり的に面白くなるものですが、映画の場合は足し算ではなくかけ算の論理が基礎になっており、ある人物とある人物、あるいはある展開とある展開などが掛け合わされることによって爆発的な面白さが生まれます。ところがこの映画はシナリオも演出も足し算の論理でくる。だから前半はそれ以上に面白くならないし後半もそれ以上面白くならない。結果、もしその両者がうまく掛け合わさっていれば生じたであろう爆発的な面白さがなく、前半のドラマも後半のアクションも本領を発揮できないまま終わってしまったのです。と俺には見えた。よくできた映画とは前半を見てから後半を見るとより面白く、後半を見てから前半を見直すと前半の面白味が一層増すようなものなのだ。

メジャー邦画に出てくる役者さんは全員出てるんじゃないかというほどのオールスターキャストはお正月映画のようなおめでたさがあって悪いものではないかもしれないけれど、せっかくこれだけ集めたのならもう少しいろんな人にちゃんと見せ場を作ってやったらよかったのにとかいうのもあり、やはりやはり前作前々作と比べるとスケールダウンの観は否めずあくまでも次だか次の次だか知らんが今後のシリーズ展開に向けての繋ぎ映画になってしまっているというのもあり、それにな・に・よ・り! 主人公であるはずの山﨑賢人くんがあんまり活躍、しない…!! そしてショックなことにこの数年で賢人くんもすっかり大人の男感が出てきて一作目の頃はまだあったガキンチョの魅力が薄まってしまった!!! 性のニオイが! 賢人くん性のニオイがするよ!

そんなところで感想を終えたくはないので最後に大沢たかお演じる王騎将軍のフリーザ様っぷりは過去一番で楽しかった、楽しかったがリアリティライン崩れすぎだろこのフリーザキャラ一人のせいで、とは思ったと記しておく。一作目から巨人が出てくる世界だったからリアリティもなにもないのだが(だったら権力闘争がどうのみたいな真面目ぶった展開は抜いちゃえばいいと思うのだ)

【ママー!これ買ってー!】


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まさかトリアーの『キングダム』が2023年になって突如完結してしまうとは。

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