すごく普通のキラキラ映画『山口くんはワルくない』感想文

《推定睡眠時間:0分》

毎度おなじみキラキラ映画の最新作でございますがこれはまたずいぶんと味のしないキラキラ映画でとくに思うことも書くこともなく困る。主人公は内心彼氏欲しいな~とか思っているが行動には移せない内気な女子(高橋ひかる)という定番設定だが内気といっても友達がいないわけでもないし他の人に話しかけられないわけでもなく彼氏欲しいな~に関してもなんとなくそう思っているだけで深刻な悩みというわけでもない、要するに普通の人である。

そんな主人公の前に現れたのが転校生の山口くん(高橋恭平)。この人はコワモテのルックスから道行く人たちが思わず道を空けたりオーバーに腰を抜かしてしまうほどの風貌ヤクザ、といっても『お嬢と番犬くん』のように本チャンのヤクザではなく単に見た目が怖いというだけで根は良い人、電車内で遭遇した痴漢を撃退してくれたことからクラスでただ一人そのことを知った主人公は山口くんと距離を縮めつつどうにかクラスメイトに山口くんはワルくないよとわかってもらおうとするがー、という筋立てなのだが、この山口くんもまた普通の人にしか見えない。

山口くんを演じるのはなにわ男子の高橋恭平ということで過剰な恐ルックスやヤンキー演技はさせられなかったのかもしれないし大多数が高橋恭平ファンと思われる観客も別にそれを望んではいないかもしれないのだが、じゃあ見た目が普通というのはいいとして、高橋くんとクラスメイトの確執(?)であるとか、高橋くんの抱える寂しさや悩みはある程度ドラマティックなものがあるのかと言えば、それも無い。クラスでバーベキューやるよーと言えば高橋くんは普通に来てしまうしクラスメイトも普通に受け入れてしまう。最初はクラスメイトと距離を取り「俺、仲良くする気ないねん」みたいなことを言う山口くんなので過去に何かあったのかな? と思いきやその理由は単に都会に慣れてないとかそんな感じである。

とくに大きな葛藤もなくとくに大きな衝突もなくとくに大きな恋愛感情もない……とにかく、普通である。きわめて普通。度々画面を彩るコミック調のテロップやエフェクトというのも概ね『センセイ君主』以降のキラキラ映画では珍しくないことなのでそれもまた普通だ。山口くんを影でヤクザヤクザと呼んでからかう男子の石崎くん(岩瀬洋志)は実は山口くんの大ファンなので見てもらいたくてあえてからかっているという屈折した人なのでそこで一悶着あるのかなと思ったらとくになくなんかいつの間にか普通に山口くんと石崎くん仲良くなってた。もちろん恋の三角関係とかもとくになく主人公と山口くんは普通に結ばれる。作っている側の狙ったことではないのかもしれないが平凡な日本の高校の平凡な日常を見せるという意味では成功しているかもしれない。

そこまで普通だらけだからこそ逆に目を惹くところもあって、中盤にある下校時の長回しのシーンはたぶん隅から隅まで普通だらけのこの映画の中でほとんど唯一監督が自分の個性を出そうとしたところだと思うが、そこであえて動線の複雑な長回しをやる意味の無さというか非効率性が、なんかグッと来てしまった。大抵の現代キラキラ映画がそうであるようにこの映画もまた主演の二人、高橋恭平と高橋ひかるを立てろというアイドル映画であって、それ以外の要素はすべて二人を立てるために存在する。そんな中にあって突然挿入される主演二人の引き立てに貢献しない長回しは、なにか「これは映画!」というささやかながらも強い主張が感じられるような気がするところなのである。

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