ジュラ紀の黙示録映画『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』感想文

《推定睡眠時間:50分》

時はベトナム戦争の真っ最中1968年、ジャングルの奥地で消息を絶ったグリーンベレー部隊を見つけ出すために派遣された米軍小隊はそこで恐竜の群れと遭遇する……という導入の映画でタイトルが『プリミティヴ・ウォー』、原語ではどう言っていたかわからないが『地獄の黙示録』でたしかキルゴア中佐の台詞として「ヤツらを原始時代に戻してやる」というのがあったから、おそらくこのタイトルはそれがネタ元ではあるまいか。もっとも、こっちの戦場は恐竜が闊歩しているのでプリミティブどころではなくジュラ紀白亜紀のレベルである。なんでもジャングルの奥深くに研究所を構えるソ連のマッドサイエンティストが粒子加速実験を行っていたところ時空の裂け目が生じてしまい(?)太古の地球から恐竜がコンニチハしたのだという……。

当然ながら例の米軍小隊は恐竜たちと戦いつつ今時ロシア訛りの英語(日本に置き換えたら中国人キャラが「それは困るアルよ~」って言うみたいな感じだろう)を話す悪のソ連科学者を倒すことになるわけで、その構図を考えるとヤレヤレ、アメリカさんも困ったものだ……だってこれ要するにアメリカはベトナム戦争への介入で世界を救ったのだというお話だからベトナム介入を美化・正当化してるわけですよね、と斜に構えていたらなんかアメリカは出資してなくてオーストラリア映画だったし、最終的に別に地球は救えてないっていうか『ジュラシック・ワールド』みたいになってたので、そんな政治的に構える必要はありませんでした。なんということだ。この監督・製作・製作総指揮・脚本・プロダクションデザイン・編集のルーク・スパークという人間は……ただ米軍と恐竜が戦えば超面白いよな! ということしか考えていない! あと肩書きが塚本晋也ぐらい多すぎるだろ! ほぼお前一人の映画じゃねぇか! すげぇななんか!

というわけでこれはもう米軍と恐竜が戦ってついでに悪のマッド博士もやっつけるだけのザ・B級アクション、今時の恐竜映画にしてはジュラワシリーズみたいに恐竜とのコミュニケーションがどうとか家族愛がどうとかそういうハンバーグ弁当の下に入ってる無のスパゲティぐらいどうでもいいやつはサッパリ省いて古風なほどのバトルアクションに仕上がってるところが潔くてヨシ! 恐竜出る! 戦う! 恐竜出る! 逃げる! 恐竜出る! デカい! バカなんじゃないかとつい思ってしまうこの単純さはしかし、恐竜はそこにいるだけでスゴイしコワイという恐竜賛歌でもあるわけで、いつの間にか恐竜への畏怖などすっかり忘れてしまった某ジュラワシリーズなどよりも恐竜愛とリスペクトが強い映画と言えるかもしれない。しかもそこに色んなミリタリーっぽいのが入ってくるものだからいつまでも大人になれない大きなお友達は大喜びである。

と良いことずくめのようだが俺にとってはかなり致命的な問題があった。フラッシュ演出があまりにもガチで多すぎるのである。恐竜は昼も朝も関係なく襲ってくるとはいえ映画的な見せ場となればやはり夜の襲撃である。このとき、なせかやたらと天候は雷雨なのだが、そのためにストロボライトの稲光が恐竜との戦闘中ずっとピカピカしまくり。このフラッシュ演出をどうもルーク・スパークは気に入ってしまっているようで稲光だけでなく銃器のマズルフラッシュもまったく激しく画面ビカビカだが、それでもまだ飽き足らずに室内の照明も点いたり消えたりの点滅を繰り返す徹底っぷりで、画面のどこかにポリゴンとピカチュウがいるのではないかともちろん嘘だが探してしまったほどだ。これ絶対目に悪いよこれ。眼精疲労半端ないって。自律神経失調症により眼精疲労が溜まると心臓がドキドキしてきたり頭がガンガン痛くなってくる俺としてはとくに終盤の米兵VSソ連兵VS恐竜の画面ビカビカ大乱戦などずっと目を開けて観ていることができなかった。

あと時間が長いよね。こんなロジャー・コーマンが作ってそうなB級恐竜アクションなら普通上映時間80分もありゃ充分でしょ。でもこれ133分もあるんだよな。おそらくそれはルーク・スパークが製作から編集から美術から何から何まで口を出すほとんど個人映画のような体制で制作されているからで、編集しているのもお金を出しているのもルーク・スパークなら「スパークさぁん、これちょっとバカ映画のくせに上映時間長すぎないすかねぇ……」なんて意見できる人は存在しなかっただろう。映画監督なら自分の撮った素材は全部使いたいもの。普通はそこで色んな人が口を出して渋々ここを削りましょうあそこを削りましょうということになるが(そうして作品はブラッシュアップされていくのだ)、そうしたプロセスがこの映画では働かなかった結果、バカ発想のB級映画なのに上映時間が133分という超大作になってしまったんだと思われる。

もしこれが上映時間80分の映画だったら100点満点午後ロー直行のB級傑作だったに違いないのだが、そんなわけで妙に間延びはするし、それにアクションシーンはフラッシュ演出で誤魔化しすぎているしで、残念ながら手放しで称賛できる映画ではなくなってしまった。それでも恐竜の群れがベトナムの大地を踏み荒らす光景には夢があるし(そんな夢を見るな!)、良かったねメデタシメデタシの予定調和を捨てた黙示録的なラストもナイス。B級恐竜ミリタリーアクション映画といえばB級筋肉映画の職人マーク・L・レスターが手掛けた『プテラノドン』がありますが、『プテラノドン』が大好きな人ならきっとこの映画も気に入ると思います! 若干ストライクゾーンが狭いような気もしますが……!

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