ジャンクフード的SF映画『ザ・クリエイター 創造者』感想文

《推定睡眠時間:15分》

今日観たはずなのに既にして名前を忘れてしまっているが軌道上に浮いてる面積的には埼玉県ぐらいはありそうに見える米軍の超巨大衛星空母みたいなのが出てきてこいつは超精密なミサイル誘導ができるから米軍は軍事的な優位に立ってるんですけど、これ機能的には『AKIRA』に出てきた衛星レーザー兵器のSOLと似ててこの映画って色んなサイバーパンクとかポストヒューマン系SFのオマージュやらパクリやらが入ってるから『AKIRA』のSOLは絶対イメージソースにしてて、でも形状っていうか両腕をグワンと広げた蹉跌みたいな?フォルムはあれに似てた、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に出てくるジオン軍の巨大モビルアーマーのアプサラス。

『08』観てると思うんだよな『ザ・クリエイター』の監督ギャレス・エドワーズ。だってどっちも東南アジアが舞台だし、戦場で巨大兵器が運用される世界をミリタリー色の強いリアリズムのタッチで描くという点でも、主人公の男が敵対する側の女の人と恋に落ちてその人と再会するために戦地に赴くというのも同じじゃないですか。ギャレス・エドワーズといったら2014年版『GODZILLA ゴジラ』の監督でしょ。ゴジラの次はスターウォーズ(『ローグ・ワン』)挟んでガンダムですよ。なんだかものすごく素直というかオタクの欲望がだだ漏れの映画監督だな!

というわけでそんなオタク監督が作ったSF映画なので物語の核心を担っているのは外には出してもらえないがお菓子とオモチャとアニメだけは無限に補給される夢のような引きこもらされ部屋で育ったオタク少女ロボットであった。AIの反乱によりそう遠くない未来ロサンゼルスは核爆発で壊滅、メンタルがラッダイトにスパークしたアメリカ国民はAIの完全なるコントロール=服従を求めてAIとの共生を選んだAI野放し地帯ニューアジアに自衛と称して戦争を仕掛け、アプサラス的衛星兵器で「朝に嗅ぐナパームの香りは格別だ!」と言わんばかりに宇宙からニューアジア人を空爆しまくり。とはいえ都市部は渋谷のような進化を遂げ龍角散のど飴も進出しているニューアジアもやられっぱなしではない。ニューアジアがアプサラスを破壊するために秘密裏に開発した対抗兵器、それこそが一日中引きこもり部屋でアニメばかり観ている例のオタク英才教育ロボット少女だったのだ…。

すごい。すごいあらすじな気がする。この中にいったい何本のSFとオタクが詰まっているのだろうか。まずAIの反乱とロサンゼルス核爆発は『ターミネーター』と『AKIRA』である。人類救済の鍵は少女だったは日本オタクアニメ業界においては『メガゾーン23』とか『天空の城ラピュタ』等々を筆頭に腐るほどあるだろうし映画なら『トゥモローワールド』は間違いなくネタ元の一つだろう。ニューアジア戦争は先に挙げた『08』と共に『地獄の黙示録』の影響が色濃いがそれにしてもニューアジアという名称はそのまんまといえばそのまんまだがなんかかなりガンダムっぽいネーミングセンスな気がするぞ。

話が進むと死体の脳に首筋ジャックからアクセスしてまだ完全には止まっていない脳活動をシミュレートすることで死体と話すシーンなどが出てきてこれはウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』ほかとか『攻殻機動隊』からのアイデアであろうな。具体的にどことはちょっと言えないがアイザック・アシモフの『われはロボット』を映画化した『アイ,ロボット』を彷彿とさせるシーンもある。チベット仏教の転生者・ラマの設定を借用したものだろうが(主人公が追いかける恋人の名前はマヤ=ブッダの母)坊主頭のオタク少女ロボットの見た目はシャマランの『エアベンダー』オマージュの可能性もオッズ23倍ぐらいでなくはない。そうそう東京ドーム一個分ぐらいある巨大戦車も米軍のすごい兵器として出てくるが、大規模工事現場で用いられるモンスター工作車をアレンジしたものと思われるこの巨大戦車、『メタルギアソリッド3』に出てきたソ連の核搭載戦車シャゴホットにちょっと似てないか!?

いやはやネタの層がだいぶ厚い映画である。厚いので新奇性はない。もうこれに関しては一切無いと断言してしまいたい。ついでにいえば大した映画でもない。起こっていることは戦争なので大したことかもしれないがSF映画のアイデアとしてはかなり並っていうか陳腐である。オタク少女ロボットはラマなので両手を合わせて心の中で南無と念じるとアラ不思議周囲の電子機器が動きを止めたりするじゃありませんかなのだが両手を合わせて奇跡を起こすってあんたそんな捻りのない…なにも仏教や各種宗教における祈りの行為を否定するわけではありませんけれども。

けれども新奇性を捨てた代わりにこれはとてもたのしいSF映画である。よいSF映画の条件の話をすると戦争になるので平和主義者の俺はしませんが何は無くとも「絵」で見せる姿勢のSF映画というのはたとえそのほかの要素がショボくてもやはり楽しい。『ザ・クリエイター』はショボイということもないが様々な点で陳腐であったり練り込みが足りないと感じさせる映画ではあるのだが、背景美術やそれを切り取る構図や衣装デザインにメカデザインなどがおもしろいSF景を次々と作り出して見せてくれる。どのシーンを取っても一目見た瞬間に「アッ、これは未来世界の出来事なんだ」と感じさせてくれるのだ。

デザインの放つSF感に関しては説明不要だろうが、たとえば構図でいうとこれはギャレス・エドワーズが出世作『モンスターズ』の頃からやっていた手法だが、巨大なSF構築物もしくは生命体をローアングルで見上げるように撮ることに拘る。カメラを神の視点にしないであくまでも等身大の人々の目線とすることで、SFでなければあり得ない巨大なものの巨大さを強調したり、ときにそれが部分的にしか把握できないことで、巨大なもののリアリティをSF的に醸成するのである。巨大なものと普通サイズの人間が同じ画面の中で共存しそれぞれの営みに励んでいる奇妙な風景というのはSF!って感じがするよな。

本来であれば異なるレベルに属して同じ画面には収まらないようなものが一つの画面に収まることで生じるシュルレアリスティックな違和感と、その画面の構成要素に生活(設定)を与えて当たり前の日常風景として捉えることで生じる実在感の混成物、これがSF映画におけるSFっぽさの正体なのだと思うが、そういうSFっぽさが要するにこの映画にはたくさんある。それが「絵」で見せるSF映画ということであり、日本語を含む多彩な言語で彩られた都市的な環境音デザインであるとか、未来ベトナムの農民がサイバー農具を背負って農業ロボットと一緒に畑作業をやってる光景なんてのはたとえベタでもやっぱり観ると楽しくなっちゃうものなのだ(※個人差あります)

個人的なここ好きポイントはドラム缶に手足が生えたような特攻ロボットのくだり全部。こいつが米軍兵士に特攻命令を与えられて無言の抗議をするところ、レトロなデザインも相まってその間になんとも言えない哀愁が漂い可哀相だが笑ってしまった。でもこいつ強いんだよダッダッダッて敵陣にダッシュしてって何発撃たれても絶対に止まらず目標地点に達して自爆。その走り方がまた絶妙に野暮ったくてイイんだよな。そこにも哀愁漂ってたよ、しょせん自分自爆しかできませんから…みたいな。でも兵器的な重さもあってちょっと恐くもあるっていうさ。

あとちょっと面白い仕掛けがあって、この映画章立て構成になってるんですけど、章のタイトル場面でよく見ると左下に何らかのロゴマークと「創造者」を意味する劇中のなんとかっていう名称がそこに小さく入ってるんですよ。それについての説明はとくにないんですけど、これ映画のタイトルロゴ画面に見えません? 映画のタイトルロゴ画面って画面の端にたとえば日本だったら映倫のロゴと審査番号とそれから映画のタイトルが小さく刻まれてるじゃないですか。そういうのは各国あると思うから、この章タイトル画面って映画内映画のタイトル画面に見えるんですよ。これは未来のいつかに作られた映画で、過去にこのようなことがあったんですよっていう、あるいはこうしてあなたたちは救われるんですよっていう願望の込められた、フィクションの中のフィクションなのかもしれない。

章立て構成について言えば物語の流れをいちいち寸断してしまってるからストーリーテリングの面ではよくないと思うんですけど、そういうちょっとした遊び心もSF的といえばSF的で、まぁとにかく引用だのオマージュだので溢れてかえっていてオリジナリティが全然ないしSF的な論理も薄いので、なんというかなちゃんとしたSF映画を求める向きにはこんなチンケなB級映画と映るかも知れませんが、B級ジャンクフードは栄養はなくてもやっぱり美味い。そういう映画だったと思いますねぇ『ザ・クリエイター』。おいしかったです。

【ママー!これ買ってー!】


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ガンダムというコンテンツにはほとんど興味がないが、これと『ポケットの中の戦争』は面白かった。なんかこういう歴史の教科書には載らない的な地味なガンダムの話が好きみたいです。

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鮮度抜群
鮮度抜群
2023年10月23日 6:26 PM

「何本のSFとオタクが詰まってんだ」ってこの映画を評する上でめちゃくちゃ適切な表現ですね。
クールな感じのイケメンと強大な力をもつ小さな子供AI、の時点でオタクっぽいな〜!と思いましたが自分がオタクかつハリウッド映画のオタク要素大好き人間なので楽しかったです。

カモン
カモン
2023年10月23日 7:47 PM

ひょっとしてギャレス・エドワーズってとても無邪気な人(マイルド表現)なのかなあと思わされる作品だったかなあ
ただ、圧倒的な戦力に蹂躙される様は現代においてもそんな変わらないんじゃないかと思わせる生々しさがあった
使役する側に罪悪感を与えてくるみたいな特攻ロボは確かにすごくよかったね笑

カモン
カモン
Reply to  さわだ
2023年10月23日 11:50 PM

あいつそんなに動力保つかな笑
15分くらいのショートフィルムになりそう
まあそれはそれで観たいかな笑