【ぼっち閲覧注意】SNSこわい映画『アンフレンデッド』一人で観た感想【ネタバレなし】

《推定睡眠時間:20分》

ちょっと『REC』(2007)っぽい感じのある全編PC画面だけで展開されるホラー映画なんですがそれ無理あるよなとか言うなようるせぇよ『トマ@トマ』(2000)っていうのだってあったぞほらヒキニートが家でネットやってるその画面だけ映る映画な。暇なヒキニートがエロゲやったり出会い系サイト見たりしながらオナニーばっかする映画な。おいなんだそれ『アンフレンデッド』よりリアルなホラー感あるじゃねぇかよやめろよ!

あれですよね『アンフレンデッド』はリア充的想像力の生み出す恐怖です。Facebookのアカウントは死んでるしスカイプでグループ通話する友達はいないしインスタグラムにアップするお洒落な日常もないっていう人にはなにが怖いのか分からないと思うのですが、なんだこれ怖くねぇよと言えば言うほど『トマ@トマ』の孤独インターネッツに追いやられる感あるので怖くないことが超怖い。ぼっちの踏み絵のような映画ですね!

こういうの一種のPOVなのかもしんないのですが設定が最重要のPOVなのでなんかこう芸が細かくておもしろかったです。主人公の女の人、ということはこのPC画面のポインタを動かしてる人(わかりにくい表現)なんですがスカイプでグループ通話しながらその中の一人とこっそりチャットしたりアプリ開いて音楽流したりしてですね、それでこの映画リアルタイム制度を導入しとるのでそういう操作が全部画面に映る。だいたい実際のサービスとかアプリとか出てくるのでリアリティ。

芸が細かいっていうのはあれですよ恐怖ネタ超細かいんですよ。Facebookで変な奴といつの間にか友達になってたので解除しようとしたところ…プルダウンの中に解除の項目がない! 恐怖! インスタグラムのアカウントが乗っ取られて勝手にマル秘写真をアップされた! 恐怖!
みたいなそんな感じのショックシーンの連続で…っていうかそれショックシーンじゃなくてネットあるあるじゃないか絶対いるよそういうフリップ芸やってるピン芸人の人とか。「解除ボタンがない!」「落ち着け! 落ち着いてリロードしろ!」ってなんだよその会話はそれ怪奇現象じゃないよ不具合だよ!

ネットお化けのお話。知らない人がいつのまにかスカイプグループにおるな誰こいつって思ってたらその人からメッセージが。ワタシハローラ、オマエラノセイデジサツシタ…ゼンインコロス。
一言だけかと思ったら結構チャットしてたしレスポンス早かったのでPCに張り付いてるオバケです。すぐ怒るしすごくしつこい煽り耐性のない粘着質です。たぶんネット切断するかバッテリーか電源ぶっこ抜きで除霊効きます。そんな除霊もあるんですね現代。工藤Dとか殴って除霊するもんな。

なんだこりゃ。

ネットあるあるとリア充スカイプ会話がひとしきり終わった後はお化けがスカイプグループを一人一人殺してくっぽかったのですがだいたい寝ていたのでそのあたりよく分かりませんしそもそもお化けかどうかも分からないよねあれ。
別になんでもいいんですけどやっぱりギーク的なお化けまたは殺人鬼らしいので血を好まず画面外でやんわり殺してくれる風。ネット世代のお化けとか殺人鬼はケレンというものを知らない。だいたいお化けのくせにチャットするなよ怖がらせる気あんのかお前。

ネットこわい映画って『回路』(2000)とか『殺しのセレナーデ』(2001)とか観た気がするんですがあれですよねこういうのゼロ年代初めの方な感じありますよね結構。ネットとPCにアングライメージとかまだあって、なんかPCのディスプレイが発光してるだけで既に怖いの絵面が成立するようなそういう。
だから『アンフレンデッド』ってこれ『スクリーム』(1996)みたいな映画なのかもしんないすね。そういうテクノロジーが日常に取り込まれちゃったのでネットこわいPCこわいが最早ストレートに成立しなくて、だったらあるあるネタ盛り込んだPOVアトラクション路線で行こうぜみたいな。

こういうの、きっとジャンルの成熟っていう。なぜなら『回路』を今観たところであの黒魔術の魔法陣と変わらないようなPCとネットの描写からオカルトと現実逃避以外の何を学ぶところがあるのだというのに対して『アンフレンデッド』は学びの宝庫。SNSイジメはいけない、プライベート動画はむやみにネットにアップしない、内容を知らない添付ファイルの類を開けてはいけない、そしてPCとかスマホばかり見ていてはいけない、などなど現実のネットライフに必要なことを教えてくれますからね。ゼロ年代初めにこんな冷静で教訓いっぱいなリバースエンジニアリング的映画を作ることはできなかったのだ。

現実的なものはいつも役に立つに決まっているのですが役に立つものが面白いわけはないとも決まっているので、つまり結局あんま面白くなかった『アンフレンデッド』だったのですが生きるのに必要な現実というのは大抵こんなものに違いありません。
なんだか現実ばかり見せつけられる映画だな面白くなさ含めてな。つまらないよ現実は!

(文・さわだきんたま)

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盟友のクトゥルフ系脚本家・高橋洋が『リング』においてお化けをテレビから出すの仰天アイディアを繰り出したので黒沢清も対抗してPCディスプレイと壁からお化け出します。そういえば前にシナリオ大賞で佳作とったやつ読んだら3Dプリンターからお化けが出てくる話でした。出せばいいってもんじゃないからな。

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