英国怪猫奇譚映画『キャッツ』感想文

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《推定睡眠時間:20分》

寝てもストーリーがわからなくなったりしないから安心して寝られるってすばらしいことだと思うんです。トイレもね。トイレも行っても大丈夫。最悪ストーリー追わなくても大丈夫。最悪じゃなくても大丈夫。これはお客にやさしい映画ですよ。バリアフリー。耳が聞こえない人はモノノケダンスを楽しめる、目の見えない人はモノノケソングを楽しめる、頭の明るくない人も絵と音を楽しめる。ほら、すばらしいことじゃないですか! キャッツ!

でも半分ぐらいは本気でそう思ってるからね。映画なんて金曜夜に観に行ったりすると疲れてだいたい寝るんですよ。寝るのがデフォになってるからそれで損したって思うことはないですけど寝ると残りの部分に作業感が出てくる映画ってありますからね。とくにシリアスな映画とか、小さなシーンや描写の積み重ねが終盤に生きてくるタイプのヒューマンドラマとか。そういうのは寝るとふーん感すごい。俺はそのふーん感は対象と距離を取るという意味で公平性の観点から大事だと思ってますけど一般的にはたぶんそうではないだろうと思うが…いやそれはいいとして、20分ぐらい寝てもふーん感がなかったのが『キャッツ』なんですよ。

これは、つまりどういうことかというと! かなりフルミュージカルに近い構成ってことですね。いや、思い切った作りだと思いましたよ。現代映画ってものすごいシナリオ優位じゃないですか。コメディであれホラーであれアクションであれ、B級の世界は必ずしもそうではないけれども、メジャー映画はものすごいシナリオが強いし、演出よりもそこ(と、CGIですよ)が集中的に研究されていて。今のディズニー映画は『ファンタジア』みたいなのは作らないし作れないですからね。『アナと雪の女王』の絵なんて情緒がなくて全然おもしろくないじゃないですか。でもあれが生き生きとおもしろく見えるのはシナリオが強いからですよ。

今のミュージカル映画は歌とか踊りそのものよりもシナリオを見るためにあるようなもの。結局、歌なんてSpotify開けば無尽蔵で、踊りだってYouTubeで好きなの観ればいいし、そんなんじゃねぇよ生で味わわないと意味ないんだよって人はライブとかステージに行けばいいわけじゃないですか。音源の飽和で逆にライブ体験が重みを増して、最近の大物アーティストはアルバム製作よりもツアーを重視するとかしないとかいう話もあるし。そんな状況でさぁ、ミュージカル映画が優位に立てるところってシナリオしかないんですよ。シナリオっていうか、編集も含めてストーリーをどう見せるか、ストーリーの中でどう歌と踊りを見せるか。

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というのが寝起き即の頭で一気に書いた昨今のミュージカル映画の現状。別にミュージカル映画ファンじゃないから実際どうか知りませんけどまぁ概ね外してないんじゃないですか。だって『キャッツ』みたいなフルミュージカルに近い構成の映画は本当さいきん全然観た記憶がないからね。詳しい人に言わせればあれもこれもあるだろうが適当なこと抜かしてんじゃねぇよって感じかもしれませんけれど。

もうね、歌と踊りですよ。歌と踊り。これに尽きると言ってもよい。歌と踊りを観る映画。あとまぁ舞台美術。それからオマケで付いてくるCG化け猫。あのな! マジでオマケですからねCG化け猫! 試写を観て猫ポルノだなんだと海外にもいるんだなぁと思わされたつまらないオタク(?)が騒いでせいで! 監督トム・フーパーが公開前に猫のおっぱいのサイズまたは揺れを修正することになったが! 逆に言えばですよ! それは反応悪かったら修正しても構わない程度の要素でしかないっていうことですよ!CG化け猫は! 映画『キャッツ』においては!

だから感覚としては映画っていうかライブビューイングでしたね。カメラワークも平板だし、ドラマティックな盛り上がりがあるわけでもない。ドラマは個々のパフォーマーの歌とか踊りの中にあって、その外に置かれた書き割り的なシナリオはあくまでミュージカル・シーンの繋ぎという位置づけ。昔のハリウッド・ミュージカルとかならともかく、今こういうミュージカルをやるのは英断だと思いますよ。そういう意味では意欲作で実験作だな。CG化け猫じゃなくて構成が。

楽曲はどれも良いし…舞台版を観てないので原曲との違いはわからないが、まぁ英国英国してて。ポップだけど英国的憂愁が濃い。最初の方のシンセサウンドはなんかELPみたいだったな。ストーリーっていうか世界観も英国っぽいですよね。クイーン(猫)がいて、劇場(猫)があって、老俳優(猫)と泥棒(猫)と手品師(猫)がいて。労働者階級の悲哀と反骨心とか、でも礼儀と敬意は忘れないとか、諦観と表裏一体の享楽とか、行き場のなさとか。パブロック的なミュージカル。猫の『ビギナーズ』みたいな映画だと思ったよ。内容的には全然違うけれども空気感が。

面白かったがでも、映画として舞台をどう見せるかっていうところの目に見える工夫が細かくカット割るみたいなそこなの!? っていうところだったので、そんな付け焼き刃の現代映画性なんか別にいらないからもっとしっかりパフォーマーを見せてくれよとは思いましたね。どうせライブビューイングみたいなものなんだからそこは徹底してライブビューイング的に撮ったらよかったですよ。

あとCG化け猫はやっぱりですね、猫ポルノと言われたバージョンで観たかった…これぐらいの微妙なCG感だったらもう衣装とメイクだけでいいだろ、物理で行けるだろって思っちゃうもの。満月だってペーパームーンでいいっしょみたいな。原色照明とか書き割り美術で見世物世界を作ってるところがあったので、それならそれで見世物に徹しちゃったらいいよねっていう感じはした。

レイトショーで観るには良い映画だとおもう。もう、なんなら酒飲みながら。疲れるだけのつまらない仕事とままならない人生にちくしょうって思いながら観ている間だけはちょっと違う世界に入って、違う自分になって、そうだ俺は気高い猫なんだ! 舐めるな! 俺は舐める! にゃあ! そういう映画でしたね『キャッツ』。ワンドリンク付きの観客参加型上映とかやってほしいな、こういうの。みんなで猫の仮装して。

【ママー!これ買ってー!】


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デヴィッド・ボウイの主題歌「アブソリュート・ビギナーズ」のPVに猫女っていうのが出てくるんですよ。『キャット・ピープル』の影響か。

2 Comments
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りゅぬぁってゃ
2020年1月26日 4:20 午後

元の舞台版をソフト化したモノがあるのですが、そっちの方がまだ見ていられるかもしれません♨️
猫をCGじゃなくて舞台版と同じく特殊メイクと全身タイツのほうが違和感少なかったかも?